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旅と写真とビールの夜

昨日の夜は、下北沢の書店B&Bで、「撮り・旅!」でもお世話になったブータン写真家の関健作さんとのトークイベントに出演させてもらった。諸事情で募集期間が実質2週間ほどしかなかったにもかかわらず、とんとんと順調に予約が入り、当日は完全に大入満員。お店が特別に仕入れたネパールのムスタンビールも完売し、関さんと僕の本もたくさん売れたらしい。ありがたいことだ。

僕にとっては、今年2月に一度やったことのある会場だし、お相手はトークの達人の関さんだし、客席の雰囲気や反応も最初からよかったしで、大丈夫大丈夫と自分で自分に言い聞かせていたのだけれど‥‥やっぱり緊張した(苦笑)。日曜の夜にわざわざお金を払って足を運んでくれた人たちを、自分の話と写真で楽しませなければならないのだから、簡単なわけがない。でも、イベントの後、うっすら上気した頰で会場を出ていくお客さんたちを見送っていると、やってよかったな、としみじみ思った。

昨日来てくれた方の一人が、イベントの感想をツイートしてくださっているのをたまたま拝見したのだが、「二人の写真は、撮影のために訪れた写真家の視点というより、ものすごく写真のうまい現地の人が撮っているようだ」と書かれていたのが、僕には何だかとてもうれしかったし、自分でも腑に落ちた。たぶん、僕や関さんの写真は、彼の地での被写体との距離が、とても近いのだと思う。物理的な距離というより、気持ちの距離が。

こてんぱんに疲れたけど、ほっとしたし、またがんばろう、と思えた一夜だった。

再起動

急な打ち合わせが入り、夕方、赤坂へ。3時間近くみっちり話し合いをして、目下最大の懸案事項が、ようやく動き出した。

思い返せば、3月中旬からGW前半まで、平日はほぼすべて取材で埋まり、休みの日もひたすら原稿書きに追われるというきつい日々だったのだが、GWが明けてからは、嘘のようにぱったりと無風状態になった。前々から仕込まれている仕事はいくつもあったのだが、そのどれもが揃って一時停止に陥って、いきなりヒマになってしまったのだ。こういう激しい波があるから、フリーランスはつらい。

まあでも、そんな無風状態も終わり。今日打ち合わせた案件以外にも、いろいろ動き出しそうだし。ようやく再起動がかかった今、夏から秋に向けて、がんばらねば。

空の向こうの悲しみに

暗い空の下、強い風が吹き荒れる不穏な天気。まだ5月だというのに、台風が近づいているらしい。

幸い、今日は特に外に出かける用事もなかったので、丸一日部屋に閉じこもって、地味に過ごす。昼にかまたまうどんを作り、コーヒーをいれ、夕方は実家から送られてきたそばを茹で、青梗菜のおひたしを作った。冷蔵庫にはまだ一本ビールがあるし、このまま引きこもって嵐をやり過ごせそうだ。

台風から温帯低気圧に崩れた嵐は、ぬるい感触の雨を窓に叩きつけている。ネパールでは今日、大きな余震が発生して、またたくさんの死傷者が出てしまったという。雨音を聞きながら、遠い空の向こうの悲しみに、思いを巡らす。何か、できることはあるだろうか。

ラダックツアーとトークイベントのお知らせ

いきなりですが、お知らせを2つほど。

今年の夏、8月17日(月)から23日(日)頃にかけて、ラダックで催される現地発着ツアーのガイドを務めさせていただくことになりました。日本の旅行会社GNHトラベル&サービスと、サチさんが経営するラダックの現地旅行会社Hidden Himalayaとの共同企画ツアーです。詳細はこちらのサイトにて。

もう1つ、そのツアーの紹介もうっすら兼ねた形で、5月24日(日)の夜に下北沢の書店B&Bにて、ブータン写真家の関健作さんとのトークイベントを開催することになりました。関さんと僕がなぜ異国の地に向かったのか、そこで何に出会い、何を感じ、何が変わったのか、その根っこの部分から掘り起こすようなトークができればと思っています。イベントの申し込みはこちらのサイトにて。

どちらも、もしご都合の合う方がいれば、よろしくお願いします。

「Joni Mitchell the Studio Albums 1968-1979」

Joni Mitchellジョニ・ミッチェルの名前は、ずいぶん昔から知っていた。彼女の曲は今もラジオでよく耳にするし、日本のミュージシャンでも彼女の曲をカバーする人は多い(ものすごく難しいらしいけど)。だからCDを手に入れてまとめてじっくり聴きたいと思っていたのだが、何しろ作品数が多いので、どこから手をつければいいのか迷っていた。

で、去年の暮れだったか、何気なくネットで検索したら、この「Joni Mitchell the Studio Albums 1968-1979」という、全盛期のアルバム10枚組ボックスセットが存在することを知った。しかも、その時のアマゾンでの値段が3254円。この名盤の数々が、1枚あたり325円で手に入るのだ。何だかジョニに対して申し訳ないような気分になったのだが、これを見つけたのも何かの縁だと思い、購入することにした。

ボックスに収められた10枚のアルバムはいずれも紙ジャケ仕様で、CDを頻繁に出し入れしていると傷がつきやすそうだ。僕はiTunesにリッピングして全曲まとめたプレイリストを作り、もっぱらAirPlayでステレオに飛ばして聴いている(iTunes Storeでダウンロード販売もしているが、値段はCDの倍近くする)。静かな夜に、小さな音量でひっそりと彼女の歌を聴くのはとても心地良い。

ジョニ・ミッチェルの音楽について、僕みたいな門外漢が知った風なことを書くのはおこがましいけれど、今の時代に彼女の曲を聴いていても、まったく古さを感じないというか、流行や時代感覚を超越してしまった孤高の音楽性のようなものを感じる。頬を撫でる風のような軽やかさと、暗い水の底に潜っていくような深みと。これからもずっと、多くの人々に聴き継がれていく音楽なのだと思う。

3月末に自宅で倒れているのが発見されて以来、今も入院して治療を受けているというジョニ・ミッチェル。彼女が再び元気な姿を見せてくれることを願って止まない。