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あえて、待ってみる

昼のうちに近所で散髪をすませて家に戻ると、今作っている本の初校PDFが届いていた。さっそくざざっとチェックして、関係者のみなさんに一通ずつメールをしたため、PDFを添付して送信する。明日の午前中には、赤字集約用の紙の初校ゲラも届くし、来週明けには残り20ページほどの初校もすべて出る。表紙の最初のデザイン案も届いた。編集作業が一気に動き出す。

そんなわけでここ数日の、ひたすら惰眠を貪る怠惰な日々は終わった(笑)。

でも、つかの間でも少し息を抜ける時間があったのは、よかったと思う。あれこれと、ゆっくり考えごともできたし。

少し前までは、今作っている本が完成したら、その後は通常の自分の仕事とは少し違う、個人的な取り組みを始めようと考えていた。ただ、今はもう少し動かずに、待ってみようと思っている。その取り組み自体が間違っているとは思わないし、いつか実現させたい計画なのは確かだ。でも今は、いろんなことのタイミングが、あまりよくない。今作っている本がどんな結果を出せるのかまだわからないし、それ以外の仕事の見通しもつきにくい状態だ。本筋ではない仕事関係だと、タイでクーデターが起こったりもしてるし。

あえて、待ってみる。時が来るのを待つ。今はそういう時なのかもしれない。いつかチャンスが目の前を通りがかったら、すかさず跳ね起きて、つかみ取れるように。

オニオンスープ

今週はひさしぶりに、一週間を通じて取材の仕事の予定がない。いつ以来だろうとスケジュールを見返してみたら、一月下旬以来。今週後半には、今作っている本の初校が出てくる手筈になっているが、それまでは骨休めできそうだ。山歩きに行くには、天気予報がちと微妙だけど。

そんなわけで今日の午後は、コーヒーと一緒にクッキーをつまんだりしつつ、優雅に過ごす。夕飯には一昨日のリベンジで、再びタマネギと対峙。今回はオニオンスープを作ってみた。必要なのは、タマネギと、コンソメの素と、水と、塩こしょう、あとは少々の根気。最初に刻んだタマネギをバターで飴色っぽくなるまで焦がさないように炒め続けさえすれば、あとは水とコンソメを入れて10分ほど煮るだけで、とろっとろに甘いスープができあがる。これなら大量のタマネギも無理なく消費できそうだ。

と、僕がうれうれとタマネギを炒めているうちに、クライアントからはメールで、来週の取材依頼がどっさりと届いていたのであった。

出来、不出来

午前中から、板橋方面で取材。毎度のことながら、女子大のキャンパスに入っていくのはいろいろ気後れする(苦笑)。取材自体はつつがなく終わり、担当さんと別れて電車で帰路につく。

家に戻る前に、おひるにラーメンでも食べて帰ろうかと思ったのだが、某店の前まで行ってみたら、「スープ不出来につき今日はお休みします。申し訳ありません」との貼り紙が。ひさしぶりに見たなあ、こういうの‥‥。逆に言えば、そこまでシビアに突き詰めて作ってる店が減ってるということなのかもしれないけど。

帰宅後はコーヒーを飲んでばっちり頭を冴えさせて、原稿に取り組む。個人的には、今日はまずまずの出来だった(笑)。

場を盛り上げる

昨日の午後は、狭山方面で取材。三鷹からは電車を三回くらい乗り継いでいくので、地味に時間がかかった。

現場で合流した依頼元の担当営業さんは、取材があるたびに編集部に僕を指名して使ってくれている方だ(ありがたい)。先月僕が担当した取材で、相手の方が後で「ライターさんのノリがよくて、取材がすごく盛り上がったので楽しかったです」と話していたと教えてくれて、何だかうれしかった。

取材で場を盛り上げるのがライターの役目ではないし、そもそも盛り上げようと狙って質問を選んでいるわけでもない。それでも、自然な流れで場が盛り上がって、相手とうまく打ち解けられれば、結果的にいい原稿を書きやすくなるのは確かだ。

僕自身は、取材の際に特殊なテクは何も使ってない。相手の話をしっかり聞いて、いいなあ、すごいなあ、と思ったことに素直に反応しているだけだ。逆に、場の流れがぎこちないからといって、心にもないヨイショは絶対にしない。そういう嘘は相手にも必ずバレてしまうものだし、そもそもそんなことはしようと思ってもできないたちだし。

場が盛り上がる「うまい」取材をしようとするのではなく、やるべき準備をきっちりして、手抜かりのない「いい」取材を心がけるのが先決だと思う。

街灯

昼、取材のため出かける。今日の現場は湘南台。取材自体はいつものように粛々と遂行したが、とにかく、行きと帰りに時間がかかる。CDアルバムを悠々二回し以上聴けてしまうほどで、下北沢で乗り換えた井の頭線で吉祥寺に着く頃には、iPhoneのバッテリーも半分以下になってしまっていた。

駅前でラーメンを食べ、中道通りを歩いて、家に向かう。取材先はずっといい天気だったが、都心は午後にかなり激しいにわか雨が降ったらしい。そのせいか、空気はひんやりとして、雨と風に洗い流された西の空は、綺麗に澄み渡っていた。

空に見とれながら歩いていると、ぽつぽつと立ち並んでいる街灯が目に入った。電球の上にちょっと洒落た形の釣鐘型のシェードがかぶさっていて、白い光がうるんだように透けて見えている。この道は数え切れないくらい往復してきたのに、昼間はもちろん、夜道でも、ここの街灯がこんな形をしていたなんて気付かなかった。その街灯の明かりは、暮色の空にとてもよく似合っていた。

日々の中で、こんな風に気付かないまま行き過ぎてしまっているものって、きっとたくさんあるんだろうな。