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「失礼」についての考察

仕事の打ち合わせや取材の現場などでは、いろんな人と一緒になる。その中には時々、本人は自覚してないんだろうけど、相手にはうっすら「失礼だなあ」と感じさせている人もいる。

たとえば、ある事柄について説明する時、相手の反応にはおかまいなしに、型にはまった話し方で一方的に話し続ける人。そういう人は往々にして、話しっぷりが無駄に芝居がかってたり、その調子で相手を無駄に奉ることで、相手に「こいつ、本心では全然そんなこと思ってないんだろうな」という印象を与えてしまったりする。

「親しげ」なのと「なれなれしい」のを勘違いしている人もいる。ざっくばらんな調子で話すのが悪いわけではないけれど、本心でのリスペクトが欠落してると、細かい言葉の端々にそれがにじんで、相手に伝わってしまうから。

あと、割とよくあるのが、こんなやりとり。相手が本を書いたりテレビに出たりしている人なのに、事前にそれをリサーチしてなくて、「どんな番組に出てるんですか? へー、今度、見てみます」とか言っちゃう人。リサーチしてない段階で失礼だし、知らなかったとしても「それは失礼しました」と言い添えるべきなのに。

まとめると、相手のことを本心からちゃんと尊重していない人、あるいはそのことを相手に真っ当な形で伝えられない人は、実はものすご〜く損してますよ、ということかな。

思い出横丁

昼に東小金井、夕方に白金台で取材。今日は朝から不穏な空気で、雨混じりの強い風に傘があおられ、裏返って壊れないかとヒヤヒヤしながら歩く。

取材を終えた後、打ち合わせのため、新宿へ。てっきり喫茶店とかで会うのかと思っていたら、指定された場所は思い出横丁の脇にある居酒屋(笑)。もちろん、最初の1時間で打ち合わせはばっちりやったのだけれど、その後はそのまま楽しい飲み会になってしまった。

思い出横丁、ひさしぶりに通りがかったのだが、海外から来た人たちがすごく多かった。しばらく前からそうなのかな? あの横丁の佇まい、確かにフォトジェニックだし、観光で来た人にはたまらないと思う。街並って、ただすっきりきれいで歩きやすければいいってものでもなくて、猥雑な空気が時に人を惹きつけ、和ませることも確かだから。東京に海外からの観光客をもっと呼び寄せたいなら、あんまりどこもかしこも同じようにきれいにしすぎると、かえってダメだと思う。

さて、酒量は控えめにしておいたし、明日も明後日も取材だ。いろいろがんばろ。

ストレスとのつきあい方

これも、仕事で書いていた原稿に出てきた話題なのだけれど。

人間という生き物は、生きているかぎり、常に誰かと関わりながら生きていく。原野の中に小屋を建ててたった一人で暮らしていても、自分自身という人間と向き合わなければならない。誰かと関わっていれば、何かしらのストレスは生じる。どんな世界に生きていても、何らかの理由で多かれ少なかれストレスは感じるものだし、それはけっしてゼロになることはないのだという。そしてストレスは、避けようとすればするほど、逆に溜まっていくものでもあるという。

ラダックのようにのどかな場所でも、それは同じだ。確かに日本のように複雑でややこしい仕組みの社会ではないけれど、周り中の誰もが知り合いという狭いコミュニティの中で、変わらない日々を生きていくことにストレスを感じている人は少なからずいると思う。あと、ジャンムーなどラダックの外にある大学に進学したラダック人の若者には、学業に悩んで自殺する人が結構多いのだという。そういう種類のストレスに対する免疫があまりないからかもしれない。

ストレスは、ゼロにするのでも、避けるのでもなく、うまくつきあって、乗り越えていくべきものなのだそうだ。何か原因がありそうなら、それに関わる人たちと話をすれば、意見が一致しないまでも、互いの考え方の違いを知るだけでずいぶん気がラクになったりするという。いきなり大きなハードルを乗り越えようとすると往々にしてしんどいので、まずはほんの小さなハードルでいいから、トライして、乗り越えてみる経験を少しずつ積み重ねていく。そうするとだんだん、自分自身の力でストレスを乗り越えていくことができるようになるのだという。

まあ、世の中、そんなにすんなり乗り越えられることばかりじゃないし、むしろ僕の場合は断崖絶壁ばかりのような気がしないでもないけど(苦笑)、自分なりによじ登る術を身につけねばと思う。

無粋な人

やたらに強い風が吹き荒れる日。取材のため、朝から電車に乗って、金町へ。

取材が終わった後、午後の別の場所での取材まで少し時間があったので、駅の近くでおひるを食べることにした。この界隈は餃子屋さんが多いらしく、その中でも一番老舗っぽい店へ。水餃子定食が460円。安いし、うまい。

僕がほふほふと水餃子を堪能していると、突然、店内に罵声が。

「入口のドアが開いてるから、埃がどんどん入ってきて、餃子も、ラーメンも、まずくなるんだよ!」

ふりかえると、カウンターで初老のおっさんが、腰の曲がった店のおばあさんをどやしつけている。同じことを、二度、三度、四度。おばあさんはさらに身を屈めて、入口の方に歩いていってドアを閉じた。なんというか‥‥ほんの2メートル、自分で入口まで歩いていって、黙ってドアを閉めればいいだけの話なのに。

おっさんがどうでもいいことをデカイ声でどなるから、みんなの餃子やラーメンがまずくなるんだよ。

彼女ととんかつの行く末

夕方、駅前の定食屋へ。味噌かつ定食を注文。

僕が座った席から通路を挟んで隣にある四人掛けの席に、若い女の子が一人で座っていた。その子はテーブルに上半身を預けてスマホをいじっていたようなのだが、女性の店員さんが、その子の注文したとんかつ定食のお盆を持ってきても、何の反応もない。どうやら、テーブルに突っ伏したまま寝てしまったようだ。

「‥‥お客さん、お客さん」と、女性の店員さんが二、三度肩を揺すったのだが、その女の子はまったく起きようとしない。よほど眠かったのか、それとも花見帰りで酒が入っていたのか。で、店員さんは定食のお盆をテーブルに置き、そのまま厨房に戻ってしまった。それにもちょっとびっくり。

どっちもどっちだなあ、と思いつつ、僕は自分のごはんをもぐもぐ食べていたのだが、やっぱりこういう場合、お店の人は、ちょっときつめに揺さぶって大きな声をかけてでも、女の子を起こすべきだったのでは、と思う。だって本人にしてみれば、うら若き乙女なのに、とんかつ定食が冷めるがままになってる状態でテーブルに突っ伏して爆睡してるなんて、とんでもない赤っ恥の晒しもん状態だし。

彼女ととんかつの行く末がどうなるのか、ちょびっと気になりつつも、僕は店を後にした。