奥華子がデビュー10周年の節目にリリースした8枚目のアルバム「プリズム」。無色に見える太陽の光も、プリズムを通せば、七色に分かれて見えることに気づく。日々の暮らしの中で、あるいは自分自身の心の中で、さまざまなことに「気づく」のがこのアルバムのテーマかもしれない、と彼女は以前ラジオで語っていた。
確かにこのアルバムの中では、いろんな「気づき」が歌われている。思い出の中にいる人への気持ち。いつも支えてくれていた家族のぬくもり。身近すぎて気づかずにいた大切な人の存在。何気ないけれど自分にとってかけがえのないもの。気づくことで大切にしていけるものもあれば、気づいてしまったがために傷つくことや、取り返しのつかない後悔に苛まれることもある。そういったさまざまな場面での「気づき」を選び取り、シンプルな言葉で詞に置き換えていく彼女のまなざしの確かさには、毎度のことながら唸らされる。
曲の方も、いい意味ですっぱり開き直ったというか、自分自身にとても素直に向き合って、作りたい曲を作ったんだろうなという印象。彼女の代名詞の一つでもある弾き語りの曲は、意外なことに今回は一曲しかないのだが、アレンジのトーンは全体的にとても安定していて、特にストリングスの加わった曲の繊細なアレンジは、彼女の新しい一面を感じさせる。
12月23日には、昭和女子大の人見記念講堂で開催されるライブに、ひさしぶりに足を運ぶ。このアルバムに収められたさまざまな「気づき」の曲たちがどんな風に歌われるのか、楽しみだ。