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いってらっしゃい

昨日の夕方、三鷹南口にある理髪店へ。1カ月ぶりの散髪。

この理髪店には結構昔から、1、2カ月に一度くらいお世話になっているのだが、数年前から「仕事でしょっちゅう海外に、しかも結構エクストリームなところに行ってる人」という認識をされるようになった。そりゃそうだ。しばらく顔を見せないと思ったら、日焼けして頰のこけた顔とぼっさぼさの頭で現れるのだから。

「この間はどこに行ってたんでしたっけ? アフリカ?」
「そうです。ライオンとお近づきになってきました」
「ははは。今日はどうします? 涼しくなってきたから長めに残しときます?」
「いえ、来週から1カ月ほどタイに行くので‥‥夏仕様で短くしてください」
「また行くんですか。ずっと日本にいないですねえ」

お会計を終えて店を出る時、「いってらっしゃい!」と後ろから声をかけてもらった。いってきます、そろそろ。

歌舞伎揚とぼんち揚

僕には、主に晩酌の時間を軸に、時折何の脈絡もないマイブームが訪れる。今のマイブームは、歌舞伎揚である。

僕がよく食べているのは、天乃屋(というか歌舞伎揚という商品を作っているのがこの会社)のぷち歌舞伎揚、食べきりサイズ。スーパーやコンビニなど、割とどこでも手に入る。味はまあ、何というか、歌舞伎揚なのだが(笑)、最近これをつまみにビールを飲むのが、妙にしっくりくる。カロリー的にやばいであろうことは承知の上で。

でも、岡山に住んでいた子供の頃は、歌舞伎揚は見たこともなく、代わりに食べていたのはぼんち揚だった。調べてみると、関東は歌舞伎揚、関西はぼんち揚が、それぞれ圧倒的なシェアを占めているそうだ。どちらも形はかなり似ているけれど、食べ比べてみると、微妙な味の違いはあるらしい。

そんなわけで、今宵も高カロリーなつまみでビールを飲んでしまった。さすがにやばいなこれは。

近所徘徊

7年間ほど使い続けてきたデスクライトが壊れてしまい、修理代も異様に高くついてしまうとわかったので、名残惜しいが廃棄することにした。捨てるにはかなり大きめの有料ゴミ袋が必要だ。ひと袋ずつバラ売りしてる店で調達しようと、夕刻、晩ごはんついでに出かける。

ネットで調べると、大きめの有料ゴミ袋をバラ売りしている店は、近所に3軒。どれもスーパーなどではなく、小さな個人経営の店のようだ。1軒目に訪ねた薬局は、日曜だからかお休み。そこからiPhoneの地図を見ながらてくてく歩き、今まで通ったこともないような細い路地を抜け、2軒目の酒屋へ。しかしそこもお休み。3軒目はさらにぐるっと回ったところにある文具店らしい。

再びiPhoneの地図を見ながらてくてく歩いてると、頭上の電線に、何百羽というムクドリが。この辺にあるNTTの電波塔周辺が、彼らの溜まり場となっているようだ。電磁波に惹かれてるのか、それとも他に理由があるのか。「こわいねー、こわいねー」と、おばちゃんが飼い犬のポメラニアンに語りかけながら空を見上げている。

ようやく辿り着いた3軒目は、文具店なのかタバコ屋さんなのか判然としない物件で、ものすごく狭い店内に老夫婦がひっそり座っていた。ゴミ袋を所望すると、机の引き出しから無造作に一枚引き出して、ほいと渡してくれた。

ほんの小さな旅のような、近所徘徊だった。

カビとの戦い

海外取材で家をしばらく留守にする時、一番神経を使うのが、カビ対策。

今住んでいるのはマンションの一階なので、普通に暮らしていても革製品などをやられることがあるのだが、海外に出かけると、場合によっては数カ月も部屋を閉め切ったままにするので、何の対策もしないでいると、本当に恐ろしいことになる(汗)。なので、出発前にはベッドシーツなどをすべて洗濯し、除湿剤を各所にセットし、クローゼットは閉め切らず、靴や革製品はなるべく湿気の少なそうな広めの場所に置く。そうしたカビ防止策の準備にも、それなりに慣れてきたと思っていた。

しかし、今年の夏は手強かった。猛烈に暑い日々が続いた後、僕が帰国する頃から毎日のように雨。部屋に戻ってみるとむわっとした湿気がたまりにたまっていて、革ベルトが2本、枕カバーが1枚、それから今年初めまで使っていた古いカメラバッグの外側がカビにやられていた。ベルトはカビを落とした後にエタノールで除菌し、枕カバーもしっかり洗濯したが、カメラやレンズにはカビが大敵なので、カメラバッグはどうにもならない。廃棄するしかなさそうだ。

嗚呼、湿気の少ない部屋に引っ越したい(苦笑)。

足跡のない荒野

一昨日、昨日と、僕が仕事でいかにほかの人と競い合わないようにしてるかということについて書いたが、じゃあそれで毎日ラクに過ごせてるのかというと、まったくそんなことはない。むしろ、足跡のない荒野を突っ切ろうとしてる時点で、人よりしんどい思いをしてるのではないかと思う。

一冊の本に自分の思いの丈を込めて作り上げるという作業は、本当に、ものすごい量のエネルギーを消費する。そもそも本を出せるような状況に持っていくには、それだけで何カ月も、場合によっては一年以上もかけて、時に理不尽なことにも耐えながら粘り強く交渉し続けなければならない。いろんなものごととの戦いで、ほんと、ヨレヨレのボロボロになる。今も割とそういう状態に近い(苦笑)。

こんなにつらいなら、やめてしまえばいいじゃないか、と思う時もある。もっとラクな立ち位置に逃げてしまえばいいじゃないかと。でも、やっぱり、ここから逃げるのは、自分の心に背くことなのだ。心の底から作りたいと思える本を作ることのできる可能性があるのなら、それがゼロにならないかぎり、みっともなくてももがき続けるのが、自分の選んだ道なのだと思う。

だからこれからも、誰もいない、足跡のない荒野を歩く。