Tag: Life

結局、ベタ踏み

昨日と今日、そして明日は、家に籠って、急ぎの原稿書き。来週はまた別案件の急ぎの原稿書き。週末は横浜で展示中の写真展に在廊しに行かねばだし、少なくとも今月末までは、ぱっつんぱっつんの日々が続く。

たしか1カ月ほど前に、これからはちょっと仕事が落ち着くはずだから、年末からベタ踏み状態だったアクセルをゆるめて、ちゃんと休もう、という意味のエントリーをここに書いていた気がする。それは結局、儚い希望的観測のままで終わってしまった。5月には終息すると思っていた大学案件が想定外のボリュームで追加されてしまったり、ブータン取材に京都でのイベント、横浜での写真展など、いろいろありすぎて、結局アクセルはベタ踏みのまま。オーバーヒートして焼き切れそうな勢いで、梅雨空の下を突っ走ってる状態だ。

何かもう、ここまで来たら、行けるところまで行ってやれ、という気にもなっている。どうせ7月半ばからは約1カ月のインド暮らしだし。今、やるべき時に、やれるだけのことをやる。ひと息つくのは、ラダックに着いてからでいい。

バトン(reprise)

僕らはみな、誰かから受け取ったバトンを手に、何処かに向かって走り続けている最中なのだと思う。

何かを諦めるしかなかった人。この世界から立ち去っていく人。いろんな人から手渡されたバトン。受け取った、と勝手に思い込んでいるだけのバトンもあるかもしれない。それでもそれは、人が走り続けようとする理由にはなる。

そうして、しゃにむに走り続けていた人にも、いつかは、別の誰かにバトンを手渡さなければならなくなる時が、必ず来る。

だから僕は、いつか自分にその時が訪れるまで、走れるだけ走り続けようと思う。どんなにのろくて、ずっこけたりして、みっともなかったとしても。次の誰かに、バトンを手渡すまで。

我に返る

ゆっくり寝て起きて、朝昼兼用につけめんを寸胴で茹で、一念発起して、部屋中に掃除機をかけた。ものすごくひさしぶりに掃除をした気がする。

午後の写真展会場での在廊を終えた後、スーパーに寄って食材を買い、夜はこれまたものすごくひさしぶりに米を炊き、おかずに里芋と豚バラの煮っころがしを作った。パスタやラーメン以外でまともに自炊をしたのは、いったいいつ以来だろう。

考えてみればここしばらく、というか2016年になるかならないかのうちから、本当にありえないくらい、仕事でしっちゃかめっちゃかな状態が続いていた。こういう日常の当たり前なことで、ようやく少し我に返れたようだ。

……とはいえ、6月頭からは1週間ほどブータン、7月中旬からは1カ月ほどラダック、8月下旬から南東アラスカに2週間、10月は恒例のタイ取材4週間。2016年の後半は、日本にあまりいない日々が続く。まあ、それはそれで、僕らしいといえばそれまでか。

羊毛とおはな「LIVE IN CHURCH」

LRTCD-107_OLCDをトレイにセットし、再生ボタンを押す。イントロのピアノの音が聴こえた瞬間、何もかもすっかり思い出した。あの日のことを。

2014年2月11日、品川教会グローリア・チャペルで行われた、羊毛とおはなのライブ。僕もあの日、あの場所にいた。全身の肌が粟立つほどに圧倒された「Hyperballad」。ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画の主題歌「The Rose」。本当に、奇跡のような時間だった。そしてそれが、彼らのライブに接した最後の機会になった。ほどなく、はなさんは療養生活に入り、約一年後の2015年4月に、永眠した。

それからしばらくの間、僕は、羊毛とおはなの曲を聴くことを避けてしまっていた。何というか、自分の中にあるもやもやしたやるせない思いを、うまく整理できないでいたのだ。いくらなんでもそれはないだろう、という、神様に対するささやかな反抗心だったのかもしれない。

でも、今こうして、あの日、あの場所で奏でられた音をこのライブ盤「LIVE IN CHURCH」で聴くことができて、胸の奥につっかえていたものが、ようやく融けていったように感じた。このライブ盤にも収録されている、彼らのレパートリーの中で僕が一番好きな曲「ただいま、おかえり」を聴いた時、目尻に涙が滲んだ。うまく言えないけど、はなさんにやっと「さよなら、またね」と言えるようになった気がした。

このライブ盤は、別れに手渡された、花束のようなものなのだと思う。

振り回される側

今日も昼は暖かくて、強くてぬるい風が吹いていた。今は風は止んだようだが、ぴしゃぴしゃと雨の音がする。

ここしばらく、本当にありえないくらい忙しい日々が続いていたのだが、ようやくここ2、3日、ほんの少し落ち着いてきたような気がする。まあ、多い時で7、8種類くらいの仕事という名の心配事を抱えていたのが、4種類くらいにまで減ったというだけのことだが。とりあえず、ほっとしてはいる。

編集者として仕切る側の方が、ライターやカメラマンとして仕切られるより大変だと思われがちだが、僕としては自分でいろんなことを把握して調整できる方が振り回されなくて済むのでありがたいと思っている。まあ、編集者の立場だったとしても、依頼元に振り回されまくって疲れ果てるというケースもあったけど(苦笑)。

好きなように旅をして、撮って、書いて、本を作る。もしそれだけで生きていけるなら、他に何もいらないとさえ思う。