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虹の向こうへ

朝から、みぞれ混じりの雪が降り続く。部屋でラーメンを作り、コーヒーを淹れ、今書いている本の次章のレイアウトラフを描く。夕方、雪が止んだ頃に身支度を整え(ヒートテック上下着用)、出かける。青山のスパイラルで開催される、畠山美由紀のトークイベント&ミニライブへ。

店舗内に椅子を並べた小さな会場に、たぶん100人以上の人が集まって、立見の人も大勢いた。トークイベントでは、畠山さんと、先日出たアルバムのアートワークを描かれた奥原しんこさんと、「SWITCH」編集部の川口さんが登場。畠山さんと奥原さんはともに気仙沼の出身。震災の頃のそれぞれの様子と、その後の被災地での取り組みの話を聞く。状況は未だに難しいことを忘れず、少しずつでもできることをしていかなければな、とあらためて思う。

その後のミニライブでは、笹子重治さんのギターにのせて、畠山さんがのびやかに歌う、歌う。特に、「わが美しき故郷よ」の詩の朗読から歌へとつながる流れでは、泣けて仕方なかった。演奏が終わった後も、なかなか鳴り止まない拍手。最後はボサノヴァ調の軽やかなアレンジで「Over the Rainbow」。短いけれど、素晴らしい時間だった。

越えていこう、虹の向こうへ。

「CUT」

イランの映画監督アミール・ナデリが日本で撮った作品が公開されると聞いて、これはスクリーンで観なければ、と前々から思っていた。2012年、僕が最初に観た映画が、この「CUT」だ。

西島秀俊演じる主人公の秀二は、映画監督。兄から金を借りて三本の映画を撮ったが、どれも世に認められているとは言い難い。自分が暮らす古いビルの屋上で名作映画の自主上映をしたり、街でトラメガを手に映画業界の堕落を糾弾する演説をぶったりと、映画に取り憑かれたような日々を送っている。

ある日、秀二は兄が死んだという知らせを受ける。ヤクザに関わって借金の取り立てを生業としていた兄は、ヤクザの事務所から多額の借金をしたことが原因でトラブルに巻き込まれ、命を落としてしまったのだ。自らを責める秀二に突きつけられたのは、兄が遺した1254万円の借金の借用書。残り二週間で借金を返済するために、秀二は、ヤクザを相手にした「殴られ屋」になることで、金を稼ごうと試みる——。

秀二の端正な顔が、ボコボコに殴られて赤黒く腫れ上がっていくのが、気高く見えてくるのは何故だろう。一発、一発、殴られるたび、彼は呪文のように、敬愛する映画監督の作品名を呟く。彼は、借金を返すために殴られているのではない。映画を守るために殴られているのだ。狂気にも似た映画への愛と、それを理解せず金儲けしか考えない今の映画業界への怒り。ナデリ監督にとって、秀二はきっと「映画」そのものなのだと思う。どれほど打ちのめされても、映画は死なず、立ち上がる。クライマックスシーンに挿入されるテロップに、監督の思いが凝縮されている気がした。

主人公はひたすら殴られっぱなしだというのに、不思議なくらい爽快な作品だった。映画って、いいなあ。

畠山美由紀「わが美しき故郷よ」

畠山美由紀の曲は、昔から好きでよく聴いていた。気がつけばソロアルバムはほぼ全部持っているし、Port of Notesのベスト盤もある。特にお気に入りの「わたしのうた」は、iPodに入れてラダックに持って行ったりもした。豊かな低音から伸びやかな高音まで、素晴らしい安定感で歌い上げる彼女の歌声は本当に魅力的で、機会があればライブにも足を運んでみたいと思っているのだが、未だ叶わないでいる。

その畠山美由紀の5枚目のアルバム「わが美しき故郷よ」は、過去の彼女の作品とは、根本的に違う。彼女の故郷は、宮城県気仙沼市。3月11日の東日本大震災の後、これまでに感じたことのない痛みと喪失感に苛まれながら、彼女は歌い手として必死の思いでこの作品に取り組んだのだという。

いつも心の奥底にある、大切な故郷の記憶。そこではずっと、美しい海と山と川と、懐かしい町と、心穏やかな人々が暮らしているはずだった。そのかけがえのない故郷で、たくさんの命と、たくさんの大切なものが失われてしまった。書かずにはいられなかった言葉。歌わずにはいられなかった曲。その抜き差しならない彼女の思いが、この作品の中にぎゅっと込められている。特に、表題曲となっている「わが美しき故郷よ」の詩の朗読と楽曲は、じっと耳を傾けていると、目に涙が滲んできて仕方なかった。

どれほどの哀しみに襲われようと、それでも、地球は回り、夜が明け、明日が来て、人生は続いていく。みんな、胸の奥に痛みを抱えながら、互いに手を差し伸べ、優しい言葉をかけあって生きていくのだ。彼女は未だ癒えない哀しみとともに、これから続いていく世界を全力で肯定しているように感じた。

忘れてはいけないものがある。たとえそれが、哀しい記憶であっても。

日帰りで大阪へ

朝四時起床。昨日買っておいたコンビニおにぎりを頬張り、身支度をして、出発。今日は大阪での日帰り取材だ。外に出たとたん、真っ暗闇を吹き荒ぶ木枯らしに早くもトホホな気分になる。

東京駅六時過ぎ発の新幹線は、品川と横浜でどやどやと客が乗り込んで、かなり込み合っていた。ビジネスマンは大変だなあ。窓の外には、青空に屹立する富士山。iPhoneで音楽を聴きながら、しばらくの間、うとうとする。

九時ちょっと前、大阪に到着。大阪駅がものすごく豪華になっているのにびっくり。エスカレーターに乗る時の並び方が左右逆だ。そして女の子たちの関西弁がかわいい(笑)。

十時から始まった取材は、先方のご協力のおかげで、スムーズに終了。帰る前に、梅田界隈を少しぶらつく。小さな飲食店がたくさん並んでいるあたりで、小さなお好み焼き屋にふらっと入り、モダン焼とビールを注文。うまい‥‥。取材が終わった後は、五割増しでうまい(笑)。

その後、再び新幹線で東京に向かい、夕方頃に三鷹に戻ってきた。明日も午前中から新宿で取材だけど、とりあえず、今日はもうポンコツ(苦笑)。

茶番劇

最近、仕事中はラジオを聴いていることが多いのだが、今日の午後は、テレビの国会中継を横目で見ていた。内閣不信任案の採決の行方を。

今朝の段階では、民主党内から大量の造反者が出て、不信任案が可決されるのではないかという見通しだった。ところが、菅首相が代議士会で「震災の復興に一定のメドがついたら退陣する」と言明したことで、事態は急変。結局、民主党内からはほとんど造反者は出ず、不信任案は否決された。

妙な話だ‥‥。「辞めろ辞めろ」とさんざん責めておきながら、「そのうち辞める」と言ったら、その人を信任するなんて。僕のような青二才が、日本の政治を支える錚々たる先生方にこんなことを言うのも何だが‥‥。

バカじゃねえの? とんだ茶番劇だ。

この人たちには、被災地の人々の苦しみなんて、本当には、これっぽっちも伝わっていない。そう確信した。