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ラダックの夏から、日本の夏へ

夏のラダックでの約一カ月の滞在を終え、昨日の昼過ぎ、西荻の自宅に戻ってきた。

帰りの飛行機は、レーからデリーまでは問題なかったものの、デリーから成田までは、出発は二時間遅れるわ、機内の全座席のモニタが故障で動作しないわ、ドリンクなどの冷蔵庫も壊れてたのか缶ビールが常温だわ、トイレも一室閉鎖されてるわで、いろいろ大丈夫なのかと心配なフライトでの帰還となった。地味にストレスの溜まる旅程だったが、とりあえず生きて戻れて、ほっとしている。

エアコンいらずで過ごせたラダックの夏から、デリーよりも灼熱の日本の夏にいきなり放り込まれたので、身体がまだびっくりして、なかなか順応できないでいる。これは、洒落にならない暑さだなあ……デチェンたちには「インドと違って、日本にはデング熱はないんだろ? だったらよっぽどましだよ」と慰められはしたが。

ラダック滞在での疲労は正直全然大丈夫なのだが、灼熱の日本の夏にアジャストすべく、しばらくはゆっくり身体を慣らしていこいうと思う。しかし、順応できるかな……はたして……。

「ブラフマーストラ」

最近のインド映画界では、「RRR」や「KGF」などヒンドゥー語圏以外で作られた作品が大ヒットして注目を集めているが、そんな中で去年、満を持して公開されて手堅くヒットを記録したボリウッド映画「ブラフマーストラ」。日本でも先月公開されたので、仕事の合間を縫って観に行ってきた。

古代から密かに継承されてきた、神々の武器「アストラ」。その中でも最強とされる「ブラフマーストラ」の争奪を巡って、善と悪の運命が交錯してゆく物語。宿命を背負って生まれた主人公シヴァに、ランビール・カプール。彼と運命的な出会いを果たすヒロインのイーシャは、今やランビールの妻でもあるアーリヤー・バット。ほかにも、アミターブ・バッチャンやシャー・ルク・カーンなどの豪華キャストが、それぞれ重要な役割を務めている。特に、序盤に登場するシャー・ルクの見せ場はすごくて、「えっ……主人公?」と思ってしまった(笑)。全編にわたってVFXが多用されているのだが、思いの外クオリティが高くて、違和感がない。

物語自体は、現代社会を舞台に神話的要素を組み込んだ、王道のヒロイック・ファンタジーという趣き。主人公が自身の宿命に目覚め、少しずつ能力をステップアップさせながら敵に立ち向かっていくという構図も、王道。逆に言えば、ある程度先が読めてしまう展開でもあるのだけれど、過去に遡るらしい続編(ディーピカー・パードゥコーンが本格的に登場するらしい。もう一人は……?)の展開は読めない部分もあるので、そのあたりは期待して待ちたい。

土曜と日曜

先週の土曜と日曜は、ひさしぶりに二日続けての完全な休日。最近、よみうりカルチャーでの講師の仕事があったりして、なかなか休めなかったのだ。

土曜は昼に代々木上原のhako galleryに出かけて、鮫島亜希子さんと谷口百代さんのインドのおべんとうイベントへ。ダッバーワーラーの仕事ぶりを追った写真展もよかったし、現地のレシピで作ったというターリーもおいしかった。夜はコノコネコノコでこれまたおいしいごはんをいただいて、すっかりはらぱんの一日。

日曜は、食材の買い出しに近所に出かけた以外は、ずっと家にいた。ラジオを聴いたり、本を読んだり、コーヒーをいれてフルーツケーキを食べたり、夕飯にベンガル風の魚と野菜のジョルを作ったり。ただそれだけだったのだけれど、何だかとても豊かな時間を過ごせたような気もする。

人生には、余裕が、休みが、必要だ。しかしまあ、今日からはまた働かねばである。

「ムンナ兄貴とガンディー」

東京外国語大学で昨日行われたTUFS Cinema南アジア映画特集で、「ムンナ兄貴とガンディー」を観た。ラージクマール・ヒラニ監督による2006年制作の作品で、同監督の出世作「ムンナー・バーイ」シリーズの2作目。主演のムンナ兄貴にサンジャイ・ダッド、ヒロインはヴィディヤ・バーラン。子分のサーキットのアルシャド・ワルシや、憎めないラッキー・シンのボーマン・イラニなどの脇役も芸達者揃い。

ムンバイの筋金入りのヤクザ、ムンナ兄貴は、ラジオDJのジャンヴィ(の声)に夢中。彼女に一目会いたいと、番組が企画したガンディーにまつわるクイズに応募し、ズルい方法(笑)を使って全問正解。念願叶ってジャンヴィと知り合えたものの、ひょんな成り行きでガンディーの知識を身につけなければならなくなったムンナ兄貴は、図書館にこもって彼にまつわる本を読みあさる。すると、目の前に現れたのは……。

この作品、スラップスティックなコメディ映画として実によくできていて、物語の展開も、お約束通りと思わせておいて常にその斜め上をいくので、最後までまったく飽きない。ヤクザ者が主人公なのに、バイオレンスなアクションがほとんどない。にもかかわらず痛快。そしてしんみり考えさせられたり、ほろりと泣かされたり。あまりネタバレしてしまうのもよくないのでこのあたりにしておくが、何なんだろう。すごい物語を観させてもらった気がする。藤井美佳さんによる日本語字幕も素晴らしかった……。

映画を観終えて、建物の外に出た時、何ともいえない爽快さと満たされた気分に浸れるのは、ヒラニ監督の作品に共通する後味だと僕は思っている。

「デチェン・ラモの言葉」

金子書房のnoteに、「デチェン・ラモの言葉」というエッセイを新しく寄稿しました。同社のnoteで展開されている「心機一転・こころの整理」という特集のテーマで依頼を受けて、執筆したものです。旅先で一文なしになった時の話(苦笑)とかをまくらにしつつ、本当にどうしようもなくきつい時期に支えられた言葉について書いています。

よかったら、読んでみていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。