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インド映画三昧

土曜日は午前中から渋谷へ。ユーロライブで開催されるインド映画祭「IFFJ Best」を観に行った。

今回観たのは、「ハッピーただいま逃走中」と「キ&カ 彼女と彼」。「ハッピーただいま逃走中」は、意に添わぬ結婚式から逃げ出した主人公ハッピーが、間違ってアムリトサルから国境を越えてパキスタンに行ってしまうというドタバタラブコメディ。個人的には、ダーヤナー・ペーンティー演じるハッピーの存在感が、中盤以降やや希薄になってしまったのがちょっと残念で、もう少しハッピーという女性の人間的な魅力を分厚く描いてほしかった。もう一人のヒロイン、ゾヤは思いのほか魅力的に描かれていただけに、惜しいなあと。

「キ&カ 彼女と彼」は、面白かった! 巨大企業の御曹司ながら仕事や名声にまるで興味を持たず、尊敬していた亡き母親のように家庭を守る主夫になりたいと願うカビールと、女手一つで自分を育ててくれた母親のように、仕事でステップアップすることを人生の目標にするキャリアウーマンのキア。利害の一致した二人は結婚するのだが……という物語。1カ所だけ「ん?」とひっかかる場面があったけど、アルジュン・カプールとカリーナ・カプールの軽妙な掛け合いは観ていて楽しいし、今の社会における男と女の価値観について考えさせられる部分も多かった。

この2本の上映の合間はかなり時間が空いていたので、渋谷から綱島まで移動して、ポイントウェザーでゴアフィッシュカレーを食べてきた。何から何まで、インド三昧。楽しい休日だった。

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ソローの「森の生活」読了。19世紀という時代にこういう生き方を選んで、それを本に書くような人だからある意味当然なのかもしれないが、ソローは根本的にちょっと性格が悪いというか、偏屈な人だったんだなあという印象。もし、今の時代に彼が生きていて、出会ったとしても、絶対気が合わなさそう。僕自身も偏屈なだけに(苦笑)。

「バーフバリ 伝説誕生/王の凱旋」

2017年、少ないながらもそれなりにいろんな映画を観てきたが、最終的には「バーフバリ」の前後編2作が、なんかもう、ぜ〜んぶ持っていってしまったような気がする。

インドの架空の古代王国、マヒシュマティ王国をめぐる、愛と憎しみと戦いの物語。春に前編が公開された時は、確か新宿ピカデリーで、1日1回、1週間限定上映という形で始まったはずだ。僕はたまたまそれを観に行ったのだが、予想をはるかに上回る衝撃で……。超どでかいビッグウェーブにさらわれて、うっわあ〜と圧倒されっぱなしだった。評判が評判を呼び、前編は各地で拡大上映。満を持しての後編は、段違いに大きな規模での上映となった。僕自身、後編は公開初日の席をネット予約して劇場に向かったのだが、そうまでするほど観るのが待ち遠しいと思えた映画は、ずいぶんひさしぶりな気がする。

とにかく、すべての場面、あらゆる要素が、過剰すぎるくらい過剰。カッコよすぎるくらいカッコよく、美しすぎるくらい美しく、激しすぎるくらい激しい。でも、そうして盛りに盛られた(でも緻密に作り込まれている)場面描写のビッグウェーブにどっぷり浸っているのが、この上なく心地いい。現実離れしてるとか荒唐無稽だとか、そんな指摘にはまったく何の意味もない。まずは何も考えずに、観て、圧倒されて、茫然とする(笑)。それが「バーフバリ」の楽しみ方だと思う。ジャイ、マヒシュマティ!

ちっぽけな思いから

最初に、自分一人だけで一冊の本を書こう、と思い立った時、心に決めていたのは、自分という人間の存在ができるだけ表に出ないようにしよう、ということだった。

自分の目の前で起こる出来事の一つひとつを丹念に見定めて、文章と写真で、それらをできるだけ忠実に描写する。個人的な感傷や思い入れで邪魔しないように気を配りながら、言葉を選ぶ。自分という人間が何者なのか、読者にはまったく気にされなくて構わない。そう思いながら、本を書き上げた。

そうして完成した本を読んだ僕の知り合いの何人かは、異口同音にこう言った。この本は、まぎれもなく、あなたの本だ。この本には、あなたの思い入れが、これ以上ないほどあふれている、と。そんな感想が返ってくるとは想像もしていなかったので、僕はすっかり面食らってしまった。

世界のとある場所とそこで暮らす人々のことを、徹底的に追いかけて、ただひたすらにそれを伝えようとしていたら、そこに立ち現れたのは、僕という一人のちっぽけな人間の姿だったのだ。

だったら、その逆は、あるのだろうか。

僕という一人の人間の、本当に個人的な、ちっぽけな思いから、遥か彼方への旅を始めたら、その先は、どこにつながっていくのだろうか。この世界の、底の見えない深淵につながっていくのだろうか。何かの理が、目の前に現れたりするのだろうか。

その旅は、もう始まっている。

世界を変える美しい本

この間の日曜は、吉祥寺からバスに乗って成増まで行き、終点からしばらく歩いて、板橋区立美術館へ。「世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦」展を見に行った。

インド各地の民俗画家たちの描いた絵を、手漉きの紙にシルクスクリーンで印刷し、手作業で綴じた本。チェンナイにある小さな出版社、タラブックスは、今の時代の流れとは真逆に位置する本たちを、世に送り出している。彼らの作る本の美しさは、それ自体に作り手たちの考え方や働き方、生き方が色濃く投影されているからこそだと感じた。同じ本づくりを生業にする者として、うらやましく思えるほどに。

本づくりという仕事を、あきらめるにはまだ早い。そんな勇気をもらえたような気がした。

「地上」2018年1月号 「極奥物語 第七話」


12月1日(金)発売のJA(農協)グループ刊行の雑誌「地上」2018年1月号のカラーグラフに隔月で掲載されているシリーズ「極奥物語」に、ザンスカールについての写真紀行「苛烈の谷の安息」を寄稿しました。

この雑誌は一般の書店では販売されていませんが、下記のページから申し込めば、単月号を1部から購入できます。必要事項をフォームに記入して申し込むと、雑誌と請求書兼払込用紙が送られてくるとのことです。

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写真は1枚を除いてすべて今年の夏に撮影したもので、文章も書き下ろしです。よかったらぜひご一読ください。