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一人と、誰かと

「ヤマタカさんは、旅先とかでずーっと一人でも、全然平気なタイプですよね?」

今までに何人かの人から、こういう指摘をされたことがある。そうかもしれない。ホームシックとか単に人恋しいとかいった気分になったことはついぞ記憶にないし、特に旅先では、異国で一人ぼっちでいる状況にこそ、ぞくぞくするような喜びを感じるタイプだ。日本にいる時でも、友達付き合いはたぶんかなり悪い方で、自分から積極的に「飲みに行こうよ!」なんてことはまず言い出さない。

じゃあ、一人でいられればそれで十分なのか、満足なのかと聞かれると、それはちょっと違う、とも思う。普段何も問題がない時は一人でも平気だけど、何か困ったことが持ち上がった時、自分一人ではどうにもならない苦しみに陥った時、へこたれそうな自分を支えてくれるのは、間違いなく周囲にいてくれる大切な人たちだ。今までだって、何度もそうして支えてもらってきた。

「ラダックの風息」の最終章に書いた言葉は、そうした経験から出てきたものだったと思う。

時には、大切にしていた絆が、どうにもならない強い風に引きちぎられてしまうこともある。でもそんな時は、きっとほかの絆が支えてくれる。つなぎ止めてくれる。そして人はまた立ち上がって、前を向くことができる。そう、できるはずなのだ、僕たちにも。

三年前の震災の時も、僕たちはともするとぽきっと折れてしまいそうな心を、一緒に集まってごはんを食べたり、メールやツイートをやりとりしたりして、支え合っていたんじゃないかと思う。自分の周囲にいてくれる大切な人たちのことを忘れないこと。そして、苦しんでいる誰かを支えてあげられる力を少しでも身につけること。あれから三年という節目の日を迎えて、あらためてそう思う。

十数年ぶりの大雪

昨日は午後半ばから綱島のポイントウェザーで、旅音の林さんとお会いしての打ち合わせ。その後は飲み会モードに切り替わり、結局11時頃まで居続けてしまった。ここ最近、いろんな人と打ち合わせという名目で旅の話ばかりしてるのだが、何だか楽しい。まるで仕事じゃないみたいだ(笑)。

で、今朝。天気予報でさんざん脅されてたから驚かないつもりだったけど、降ったなあ、雪‥‥。東京では十数年ぶりの規模の大雪らしい。今日の午後、宅急便で荷物が届くはずだったのだが、ヤマト運輸から「この大雪で予定通りの配送が難しそうなので、お届けを明日に変更させていただけませんでしょうか?」というまさかのギブアップ宣言。まあそれも無理ないな、と思わせるほどの大雪だ。

しんしんと冷え込んでいく、音のない一日。部屋の中で、僕の指がMacのキーボードをカタカタと叩く音だけが響く。

ごはんの記憶

夜、リトスタで今年最後の食べ納め。ブリと白菜のサラダ、カキフライ、菜の花とベーコンの塩炒めなど、たらふくいただく。

同じ時間帯に、小さな女の子たちのいる家族連れのお客さんが来ていたのだが、女の子のうちの一人が、ごはんを前にきゃいきゃいはしゃいだり、ちょっと何かあってむずがって泣いたりしていた。でも、なんだかそれもほのぼのなごむというか、リトスタらしい情景だよなあ、とあらためて思う。

きっとあの子の記憶の片隅には、今夜のことが、この先もちょこっと残り続けるのだ。古い雑居ビルの階上にあるお店で、みんなと一緒に「おいしいね〜」と言いながらごはんを食べたり、どうでもいいことで泣いたりした記憶が。そのちょこっとしたごはんの記憶は、ささやかだけど、かけがえのないものでもあると思う。

そういうごはんの記憶が宿る場所を、誰も見てないところで毎日一生懸命に準備しながら作り続けている、リトスタのスタッフのみなさん。今年もごちそうさまでした。来年もまたよろしくお願いします。

「横道世之介」

yonosuke

この間、Apple TVで「横道世之介」という映画を借りて観た。いろんなところでいい評判は聞いていたけれど、それでも予想以上にいい映画だったので、びっくりした。今でも思い出すと、胸のあたりがほわほわしてくる。

1987年の春、故郷の長崎から上京して、大学に通いはじめた主人公、横道世之介。素直なんだけど、どこか人とズレていて。ズレてはいるんだけど、でも、彼なりにまっすぐに歩いてて。のんきでお人好しで、普通すぎて笑っちゃうくらい普通の人。大学とバイトと、恋と憧れと友達と、貸してもらった一台のカメラ。そんな世之介の穏やかな日々。そして、その16年後に起こった出来事‥‥。

「おれが死んでもさあ、みんな泣くとやろか?」
「世之介のこと思い出したら、きっと、みんな笑うとじゃなかと?」

もう遅いかもしれないけど、できれば僕も、みんなに笑って思い出されるような人でありたい。

好かれる人

昨日は夕方から銀座へ。ジュレーラダックの元スタッフ、荒川さんの結婚パーティーの二次会に出席。

荒川さんは数年前にカナダの農場で働いていた時期があって、ご主人のグラントさんとはその頃に知り合ったそう。会場は銀座のど真ん中だけあってすごく華やいだ雰囲気で、そんな中に、普通に黒のタートルネックセーターにピーコートという格好で乗り込んでしまった(苦笑)。会場にはびっくりするくらい大勢の人が集まっていたのだけれど、とても和やかな雰囲気で、素朴で飾らない、誰からも好かれる荒川さんらしい、いいパーティーだったと思う。

終わった後は数人の知人と、近くのルノアールでお茶。みんなそれぞれ、いろんな人生があるのだな。