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「素材」への敬意と感謝

時に編集者の立場になる自分自身への戒めも込めて、の話なんだけど。

編集の仕事では、文章や写真、イラストなど、いろんな素材を組み合わせながら、本や雑誌の形に仕上げていく。だが、ともすると編集者は、こうしたものを本当に単なる「素材」としてしか見なさなくなってしまいがちになる。その結果、それらをぞんざいに扱って、ライターや写真家、イラストレーターをすっかり失望させてしまうことも少なくない。

「素材」に問題があるから手を加えたんだ、それが編集者の仕事だ、という人がいるのもわかる。でも、ライターや写真家が憤慨するような扱い方をせざるを得なくなったのなら、ライターや写真家側に手抜かりがあったならともかく、でなければ最初の仕事の発注時点で問題があったからだ、と僕は思う。その場合、編集者はちゃんと謝罪しなければならない。

編集者は、ライター、写真家、イラストレーター、デザイナー、その他のスタッフが提供してくれる成果に対して、常に敬意と感謝を持たなければならない。ライターは一文字一文字に、写真家やイラストレーターは1ピクセルごとに、それぞれの思いを込めている。最終的なゴールを目指していく時、編集者は途中でさまざまな決断を下す必要に迫られるけれど、その中でもけっして、関係するスタッフの気持をうかつに踏みにじるようなことはしてはならないと思う。

常に敬意と感謝を忘れずに。改めて、自分自身への戒めも込めて。

あえて、待ってみる

昼のうちに近所で散髪をすませて家に戻ると、今作っている本の初校PDFが届いていた。さっそくざざっとチェックして、関係者のみなさんに一通ずつメールをしたため、PDFを添付して送信する。明日の午前中には、赤字集約用の紙の初校ゲラも届くし、来週明けには残り20ページほどの初校もすべて出る。表紙の最初のデザイン案も届いた。編集作業が一気に動き出す。

そんなわけでここ数日の、ひたすら惰眠を貪る怠惰な日々は終わった(笑)。

でも、つかの間でも少し息を抜ける時間があったのは、よかったと思う。あれこれと、ゆっくり考えごともできたし。

少し前までは、今作っている本が完成したら、その後は通常の自分の仕事とは少し違う、個人的な取り組みを始めようと考えていた。ただ、今はもう少し動かずに、待ってみようと思っている。その取り組み自体が間違っているとは思わないし、いつか実現させたい計画なのは確かだ。でも今は、いろんなことのタイミングが、あまりよくない。今作っている本がどんな結果を出せるのかまだわからないし、それ以外の仕事の見通しもつきにくい状態だ。本筋ではない仕事関係だと、タイでクーデターが起こったりもしてるし。

あえて、待ってみる。時が来るのを待つ。今はそういう時なのかもしれない。いつかチャンスが目の前を通りがかったら、すかさず跳ね起きて、つかみ取れるように。

五里霧中

昼、千駄ヶ谷で、今作っている本のデザインの打ち合わせ。大半のデータを託すことができたので、気分的にかなり楽になった。

考えてみると、これくらいガチで編集の仕事に取り組んでいるのは、ずいぶんひさしぶりだ。で、今のように本づくりにどっぷりハマってると、この本が面白いのかどうか、自分でもだんだんよくわからなくなる(苦笑)。これって、本当に面白いんだろうか? 客観的に判断することができなくて、自信がなくなってくる。

そうなってる時点でもう、編集者にあるまじき状態なのかもしれないが、それでも「たぶん‥‥こっちで大丈夫なはず!」と、霧の中を先頭を切って突き進んでいくしかないのだと思う。その道が正しいかどうか、行ってみなければ誰にもわからないわけだし。

五里霧中の道をイチかバチかで突き進む、本づくりはもうしばらく続く。

見えてきたゴール

ちょっと蒸し暑いくらいの天気。終日、部屋で仕事。届いた原稿を整理し、デザイナーさんに渡せる状態にデータを整える。

今回の本には20人近くの外部の方々に協力をお願いしているのだが、みなさんお忙しいのに、ちゃんと〆切を守って下さって、おかげで必要な素材はほぼ揃ってきた。たぶん連休が明けたら、ほとんどのデータをデザイナーさんに託すことができるだろう。

ついに、うっすらと見えてきた、ゴールの影。ちらりとでも見えると、俄然気力がよみがえるものだ。まあでも、調子に乗って、すっ転んだりしないようにせねば‥‥。あのゴールだって、蜃気楼かもしれないし。

今回の本は今まであまりにも苦難続きだったので、すっかり疑心暗鬼になってる(苦笑)。何も起きませんように。

地味な一日

朝からずっと雨。気圧が低いからか、寝床から起き上がっても手足までむくんで動かないような感じで、身体がしゃんとするまでしばらく時間がかかった。

晩飯に作るつもりのカレーの材料も昨日のうちに揃えておいたし、どうせ雨に降りこめられるならと、日がな一日、仕事にいそしむ。預かっている原稿を精読しつつ、デザイナーさんに渡すためのデータをコツコツと揃えていく。地味。果てしもなく地味。でもこれが、本づくりの仕事の本質。

果てしもなく地味な作業は、夜の11時を過ぎた頃、ようやく一段落。明日はまた、朝から大学案件の取材。ところで、連休って何?