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幸せな本

ラダックの風息 空の果てで暮らした日々」が発売されてから、今日で丸二年になる。売り上げ的には、まあ、そこそこという感じなのだけれど(笑)、今もたくさんの人に読んでいただいていることを、本当にうれしく思っている。

あの本は、間違いなく、僕の人生を変えた。生まれて初めて、自分が心の底から書きたいと思えるテーマに挑むことができた。現地取材に取り組んでいく過程で、ラダックでも、日本でも、本当にたくさんの人々が自分を支えてくれていると実感した。そして、本というものは、読者の方々の手に渡り、その心の中にそっと入り込んで、初めて生命を持つのだと知った。書き手にとって、幸せな一冊になったと思う。

自分にとって大切なことを、本に託して、届けていく。ささやかなことかもしれないけれど、これからも、そういう仕事を積み重ねていきたい。

積ん読

朝から氷雨が降り続く。やれやれ、冬に逆戻りだ。

去年の暮れから、ちょこちょこと本を何冊か買って、コーヒーテーブルに置いてあるのだが、まだどれもちゃんと読めていない。今は本の執筆に取りかかっているので、とりあえず、草稿が書き上がるまでは我慢した方がいいのかも。僕の場合、途中でうっかり他の本を読むと、それが強い文体だった時に、そっち方向に文体が引っ張られてしまうことがあるからだ。

と、ここで机の左横にある本棚を見てみると‥‥他にもまだ読んでない本が、そこにも、あそこにも‥‥。少なくとも十冊以上ある。うーむ。これが積ん読というやつか。自分は、あんまりそういうことをしないタイプの人間だと思っていたのだが。

草稿を書き終わったら、朝から晩まで本しか読まなかった、みたいな日をどこかに入れてみたいな。

僕にとっての幸せ

最近、またブータンのGNH(Gross National Happiness、国民総幸福量)が注目を集めているらしい。では、自分が幸せを感じる瞬間というのはどんな時だろう? とちょっと考えてみた。

刹那的な幸せを感じたのは‥‥たとえば、長い間取り組んでいた仕事が終わって、打ち上げに李朝園で特上リブロースや上ミノをほおばりながら、ビールをごきゅっ、とやってる時とか(笑)。別の意味で「生きててよかった」的な幸せを感じたのは、冬のチャダルで雪と氷の中を歩き続け、身体が冷え切ってフラフラな状態で辿り着いた洞窟で、焚き火にあたりながら熱いチャイをすすり込んだ時、とかだろうか。

でも、一番幸せを感じるのは、自分が書いた本を読んでくださった方々から、手紙やメールやブログへのコメントで、あるいは直接お会いした時に、読後の感想をいただいた時だと思う。

僕の書いた本の部数は正直そんなにたいした数ではないし、本を手に取ってくださった方々全員が、書かれた内容に共感してくれるとはかぎらない。それでも、わざわざ時間と手間をかけて感想を送ってくださる方が今でも大勢いるというのは、本当にありがたいことだと思う。自分が伝えたかったことがその人に届いて、ほんの幾許かでも心を軽くしてあげられたのかもしれないと考えると、じんわりと嬉しさがこみ上げる。お金では換算できない、気持のやりとりがそこにある。

それが、僕にとっての幸せ。そして、物書きという割に合わない仕事を続けている理由でもある。

続・抜け目ない古書店

今日も部屋で仕事。添削仕事の作業と、昨夜修正依頼のあった原稿の手直しを進める。晩飯を自炊する余裕がなくて、近所のマクドナルドでアイダホバーガーを食べてみたが、胃にもたれる‥‥。

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昨日のエントリーで、アマゾンのマーケットプレイスに出没する抜け目ない古書店について書いたところ、オンラインショップを経営している知人の方から「あれは、在庫状況や他の出品者の価格に応じて自動で価格を調整するソフトが出回ってるんですよ」という指摘を受けた。在庫切れになった本には定価の何倍もの価格をつけたり、他の出品者がいる場合は最安値にしたりするといった設定が、いくらでもできてしまうらしい。もしかしたらと思っていたが、そういうソフトが広範囲に出回ってしまっているとは‥‥。

まあ、僕自身は痛くも痒くもないので別にいいのだが、そんなソフトに頼って何がしかのお金を稼いだとして、はたして楽しいのだろうか‥‥?

抜け目ない古書店

終日、部屋で仕事。文章添削の作業を進め、一段落したところで、これから書く本のプロットを検討する。頭の切り替えが難しい‥‥。

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これまでに何冊かの本に関わってきたこともあって、仕事の合間に、一日に一、二回ほど、アマゾンで自分が関係した本の在庫状況やランキングをチェックする習慣がついている。新刊の発売直後は、もっと頻繁に見るけど(笑)。たまにレビューのコメントがつけられていたりすると、素直に嬉しい。

そうしてアマゾンのページをチェックしていて気がついたのは、時々マーケットプレイスに出没する、ある古書店の奇妙な行動だ。新刊の在庫が少なくなったり、一時的になくなったりすると、その古書店はスッと現れて、古本に定価の二、三倍の値段をつけて出品する。誰かが焦って買うかもしれないのを狙っているのだろうか? しばらくして新刊の在庫が復活すると、件の古書店はスッと出品を引っ込める。

抜け目ないといえばそれまでだけど、考えてみれば、自分の手元に在庫がある本のページを巡回して、在庫切れの兆候がありそうなところをマメにチェックしているのだから、相当な労力を費やしているに違いない。そのエネルギーを、もうちょっと生産的な方面に使ってくれたらいいのに‥‥と、思わないでもない。