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本づくりとお金

さえない天気の土曜日、部屋で過ごす。来年作る(はずの)本の構成案や台割をもう一度見直してみる。

本の企画を考える時、予算はとても重要な要素だ。もし、使いたいだけお金を使えるなら、もちろんいい本を作れる確率は上がる。でも、ほとんどの場合はそんなことはないわけで、限られた予算の中、いろんな人と交渉したり、仕様で工夫をしたりして、その制限の中でできるだけいい本を作ることを目指す。

今度の本は、僕一人で中身を作るのではなく、かなり大勢の人に協力してもらわなければならないので、その人たちにお支払いする額をどう設定するのかもよく考えなければならない。少なすぎると失礼で申し訳ないし、逆に限度を超えると、僕の取り分がまったくなくなる(苦笑)。なかなか難しいところだ。

まあ、スパーンと景気よく重版でもかかれば、何の問題もないのだが。たぶんそれが一番の解決策だな。がんばろ。

夏葉社「本屋図鑑」

夏葉社「本屋図鑑」ここ最近、スタイリッシュで個性的な書店を特集した雑誌や書籍がいくつか出ていたけれど、夏葉社の「本屋図鑑」はそれらとは明らかに違う毛色の一冊だ。この本で紹介されているのは、全国津々浦々、すべての都道府県から選ばれた、普通の街の「本屋さん」。二十坪ほどの小さな店もあれば、郊外の大型店もあり、日本最北端と最南端の店や、三百年も前に創業した店もある。でも、すべての店に共通しているのは、地元の人々の日々の生活に溶け込み、親しまれている「本屋さん」だという点だ。

この本の取材を手がけたのは、夏葉社の島田さんと、編集者の空犬太郎さん。それぞれの本屋さんの成り立ちや、棚作りのこだわり、書店員さんのコメントなどが、淡々と穏やかに、温かみのある文章で紹介されている。得地直美さんが描いたそれぞれの本屋さんのイラストも、その本屋さんの醸し出す雰囲気をじんわりと伝えてくれる。本と本屋さんをこよなく愛する、島田さんらしい一冊だなと思う。

僕自身、小さい頃から本屋さんに行くのは大好きだったし、本好き雑誌好きがこじれて今の仕事を選んだわけだが(苦笑)、本当の意味で街の本屋さんの仕事にリスペクトを抱くようになったのは、単著で自分名義の本を出すようになってからだと思う。雑誌の編集者やライターだった頃は、発売日の頃に店頭で自分が関わった雑誌を見かけても、正直、それほどあれこれ考えたりはしなかった。でも、自分名義の本となると、取り扱ってくれない店ももちろんあるし、入荷していても棚での扱われ方はさまざまだったりする。そうして本屋さんの棚の様子を前よりじっくり観察するようになり、それぞれの本屋さんがどんな意図で棚作りをしているのかを、いろいろ考えるようになった。

洗練された内装や什器を備えた立派な店でなくても、きちんと手入れが行き届いた棚作りをしている本屋さんは、すぐにそれとわかる。そうした本屋さんでは、店内をぶらつきながら背表紙を眺めているだけで、すごく楽しい。そんな書店員さんの日々の仕事の積み重ねがあるからこそ、自分たちが作った本は読者の元にまで届けてもらえるのだということを、忘れてはならないと思っている。

2000年の時点で日本全国に2万店以上あった本屋さんは、今では1万4000店程度にまで減少しているという。本が売れない時代と言われ続けて久しいけれど、僕らはもう一度、家の近所に本屋さんがあることのありがたさを見直してみるべきじゃないかと思う。

本を読まねば

終日、部屋で仕事。昨日取材した分の原稿に取り組む。

執筆や編集の仕事をしていると、日頃の読書量もさぞ多かろうと思われがちなのだが、僕はたぶん、ほかの同業者よりも読書量は少ない。ここ数年は、仕事にかまけてさらに減ってるかもしれない。本棚には、読むのを楽しみに買ったのに、まだ読んでいないハードカバーの本が何冊も並んでいる。我ながら由々しき事態だ。

仕事で原稿を書いてる間は、あまりほかの人の文章を読むのに脳のパワーを使いたくないというのもあるのだが、結局休みの日もズルズル、ダラダラ過ごしてしまってるので、それも言い訳にしかならない。ちゃんと読んであげなきゃ、本も可哀想だ。

明日、雑誌記事のゲラチェックが終わったら、まずは一冊、読破しよう。

本屋をぶらつく時間

午後、こまごました用事や買い物を片付けるため、出かける。気張らしがてら、新宿や青山、代官山の本屋めぐり。

本屋の店内をぶらつく時間というのは、僕にとってかなり大切な時間だ。というのも、僕が新しい本の企画をふっと思いついたりするのは、結構本屋をぶらついてる時という場合が多いのだ。店頭に並んでいる売れてそうな本のアイデアをパクるわけではない。その時々の売れ筋をチェックしつつも、「‥‥だったら、こういう本はまだ存在しないけど、あったらいいんじゃね?」という感じで、この世にまだ存在しない本のアイデアを、あーでもない、こーでもないと考えていく。

ただ、このアイデアの練り方、どんな本屋でも通用するわけではない。棚がきちんと手入れされていない、入荷したのをただ雑多に並べてるだけの本屋だと、それが気になって仕方がない。猫も杓子も凝った文脈棚を作れというわけではないけれど、本が可哀想になるような扱い方はやめてあげてほしいな、と思う。

個人で本を作る

早くても来年以降の、おぼろげな目標なのだが、僕個人で本を作って世に出すような活動をやってみようかな、と考えている。一人で出版社を立ち上げるところまでは考えてないのだが、僕個人の屋号というか、レーベルのような形で。

もちろん本業の部分では、出版社と協力しながら本を企画して作る仕事を続けていく。ただ、最近の自分が考える企画のアイデアの中には、一般的な出版社からは出しにくい類のものも少なからずある。いい企画だし、作って世に残しておくべき本だけれど、売りにくい、みたいな。そういうアイデアをあきらめずにすくい上げて、出版社に頼らずに自分で作ってしまえないだろうか、と思っているのだ。

企画から執筆・編集まで、主な作業は自分でできる。制作時に外部の力が必要なのは、デザインと印刷・製本くらい。一般的な自費出版と比べて、かかる費用は格段に少ない。専用のサイトを立ち上げて前もって受注を行って、適正な刷り部数を見極め、販売はオンラインと一部の書店、イベント会場などで行う。

個人宅でたくさんの在庫を管理するのは大変だし、このやり方で作る本でがっぽり儲けるつもりもないから、本当に欲しい人に確実に届けられるだけの部数にとどめて作るつもりだ。本業ではないし、かといって趣味でもないが、読者の方に喜んでもらえるものを作って届けることは、自分にとってもお金以上に価値のある活動になると思っている。

まだ、どうなることやら、というくらい柔らかい状態のアイデアだけど、うまくいくといいな。