
一昨年と昨年に引き続き、撮影とデータ取材の一部を担当させていただいた「地球の歩き方 タイ 2016〜2017
」が2月8日(月)頃から発売になります。今回の改訂版では、巻頭のカラーグラビアで、タイ北部の街めぐり(チェンマイ、ラムパーン、プレー)で6ページ、タイ国内の世界遺産の紹介(主な内容は昨年と同じですが、写真の大半は撮り下ろしを含めた別カットを使用)で5ページの写真を提供しています。その他には、本全体の巻頭トビラとタイ中部の章トビラの写真、カンチャナブリーの項にある泰緬鉄道の見開き写真なども。書店で見かけたらお手に取ってご覧になっていただけるとうれしいです。
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人生の終え方
東京は今日、初雪が降ったらしい。終日、部屋で仕事。
デヴィッド・ボウイが昨日亡くなったということで、J-WAVEもInterFMも追悼特集を組んで彼の曲を流し続けている。ヒーローズ、ジギー・スターダスト、チャイナ・ガール、ライフ・オン・マーズ、ファイブ・イヤーズ……。今日だけで、世界中でどれほど多くの人々が彼の曲に耳を傾けたのだろう。
ラジオで、彼が死の二日前にニューアルバム「ブラックスター」をリリースしたばかりだったと知る。一年半に及ぶ癌との闘病を続けながら、文字通り最後の最後まで、一人のミュージシャンとして音楽を作り続けていたのだと。そして今、世界中の人々が彼の人生を思いながら、彼の曲を聴いている。何という人生の終え方だろう。こんな時にカッコイイという安易な言葉は使いたくないが、それでもカッコよすぎる。
僕も自分の人生を終える時は、最後の最後、ギリギリまで、文章を書くこと、写真を撮ること、本を作ることにこだわり続けていたい。デヴィッド・ボウイのようにカッコよすぎる終え方は絶対できなくて、僕はきっと、みっともなくじたばたあがいてるうちに終えてしまうと思うけど。
次の本が最後の一冊になっても後悔しないように、精一杯、心を込めて本を作ろうと思う。
本棚の整理
ほんのちょっとだけ、一念発起。スライド書棚の整理に取りかかる。
仕事机の左隣にあるこの書棚、いろいろ詰め込みすぎて長らくカオスな状態となっていて、本棚なのか物置なのかもよくわからなくなっていた。とりあえず容量に比して本と雑誌が多すぎるので、もう読むことはないだろう古雑誌をごっそり取り出し、小分けにして紐で縛り、古紙回収に出す。あふれかえっていた本を空いたスペースに並べ直し、書類や細かいガラクタを整理すると、どうにか真っ当な本棚の見た目を取り戻すことができた。まあ、奥の方にはまだカオスな部分が多少残っているのだが(苦笑)。
去年からこのかた、日本と海外と行ったり来たりの日々がずっと続いて、年末も相当忙しかったので、いつのまにか、東京の家での日々の暮らしが結構おざなりというかテキトーになっていた気がする。掃除とか整理整頓とか、地味だけど毎日の生活をちょっとずつメンテナンスすることも忘れちゃいけないな、と思う。
本棚の整理一つで、思いのほか、すっきりといい気分になれた。
「書く」ということ
部屋で仕事。来年出す予定の本に収録するための原稿を書く。
しばらく前から準備していたこの原稿は、今年取り組んだ中でも、自分にとって一番大切な文章だ。今年だけじゃなく、ここ数年の間でも一番大切かもしれない。どんな文章にするかというイメージは、ずっと前から自分の中で思い描いていて、かなり具体的な形になっていた。でも、なかなか書きはじめられないでいた。少し怖かったのかもしれない。慎重に言葉を選び、自分の気持ちに重ね合わせ、これか、いや違う、と逡巡をくりかえしていた。
でも今日、その文章……たった3000文字ちょっとの長さだけれど、それを最後まで書き終えることができた。書いている間、自分でもびっくりするほどの集中力で、ありったけの気持ちを注ぎ込み、一文字ごとにもがきながら、必死になってキーボードを叩いていた。自分の中に魂みたいなものがあるとしたら、今日一日で、ごっそり削れてしまっただろうと思う。
そうしたら、本当に最後の数行の部分で、自分でも思っていなかったような言葉……たった六文字の言葉が、すっと浮かんできたのだ。その六文字が入ることで、すべてがぴったりと重なり合う。これで書ける、とようやく確信することができた。最後の一行まで書き終え、最初から読み直した時、バカみたいだけれど、ちょっと涙が出そうになった。
「書く」というのは、たぶん、こういうことなのだ。だから僕は、この仕事を続けているのだと思う。
あぶく
窓の外は、冷たい風が吹き荒れている。
終日、部屋で仕事。制作中の本のゲラチェック。土日は電話やメールで邪魔が入らないので作業に集中できる……と考えてる段階で、何か間違ってるような気がしないでもない(苦笑)。
コーヒーとショートブレッドで休憩し、再び作業に没頭。晩飯はパスタを茹でてさっさとすませる。パスタパンを洗っている時、洗剤をつけたスポンジから、ぽぽっ、と泡が立ち、いくつかの小さなあぶくが宙に浮いた。すぐに消えるかと思ったあぶくたちは、意外としぶとく、ぷわぷわと流し台の上を漂い続けた。
僕も、このあぶくみたいなものだな。どのみちすぐ消えてしまうのだろうが、なるべくしぶとく、あがいてみよう。