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最初の読者

昨日は都心で打ち合わせ。出版社の編集者さんと、今年の夏に出す予定の本について。

本は、人によっていろいろな書き進め方があると思うが、僕の場合、書き上げた草稿に最初に目を通してもらうのは、担当の編集者さんになる。もちろん、草稿を読んでもらった後に修正が必要な部分をあれこれ相談して、推敲とリライトで文章を仕上げていくのだが、僕以外の人間で新しい本に目を通す最初の読者であることには変わりない。

だからいつも、草稿を書き上げた後の打ち合わせでは、どんな感想や意見を言われるのか、実はめちゃくちゃ緊張する。これまでそれなりの数の本を書いてきているのに、だ。自信がないというか、小心者というか、何というか……。自分なりの信念を込めて、全力を傾けて書いてきたからこそ、かえって怖くなるのかもしれない。

今回の本の草稿を読んだ担当編集さんの感想は……ここでは書くのを止めておこう。これから丁寧に、手を抜かずに編集して、きちんと本に仕上げてから、読者の方々一人ひとりに、委ねたいと思う。

推すか敲くか

今年出す予定の新しい本。草稿は三週間ほど前に書き終わり、今は推敲とリライトの作業に入っている。

スケジュールが許すなら、原稿の手直しには時間を使えるだけ使いたいのだが、もちろんそういうわけにはいかない。今回の本の場合、二月末までには原稿を仕上げて、編集者さんとデザイナーさんの手に委ねなければならない。あと一カ月。ほかの仕事もこまごまと入ってきているし、時間の猶予はもうあまりない。

そもそも今回の原稿、はたして面白いのかどうか、それすら確信が持てなくてぐらぐらしてるのだが、どうなんだろう。この自信の持てなさかげんは、最初の単著の本を書いた時から、まったく進歩していない(苦笑)。まあ、一生こんな感じなのだろうな。

というわけで、もうしばらく、推すか敲くかで悩む日々が続きそうである。

年の瀬突貫工事

先週の月曜、鎌倉方面に出かけて、インタビュー取材の仕事をした。かれこれ2時間半くらいICレコーダーを回したのだが、対面の形でこんなに長時間インタビューしたのは、たぶん数カ月ぶりだったと思う。ひさしぶりにライターっぽい気分になった(笑)。

で、翌日から音声起こし作業に取りかかって、4日がかりくらいでどうにかすべてテキストにして、一昨日、昨日、今日と、日に3500字のペースで書き続け、前中後編3本からなるロングインタビュー記事に仕上げた。この年の瀬にこんな突貫工事になったのは、単純に〆切が年明けすぐだったから。まあ、それはそれで、さらにライターっぽい気分になったが(苦笑)。

とりあえず、ライターとしての肩の荷は下りたものの、自分の本の原稿は、まだだいぶ残っている。たぶん、あと1万5000字かそれ以上……。普段のライターの仕事とは全然違う筋力を使うので、なかなかしんどい。とはいえ、本の原稿も年明けの早いうちに最後まで書き切る約束になっているので、や、やらねば……。

そんなわけで、突貫工事は、年を跨いで、まだまだ続く。

書き続ける日々

毎日、本の原稿を書いている。

めちゃめちゃ捗っているわけではないが、悩んで書き澱んでいるわけでもない。日に1、2千字ずつくらいのペースで、淡々と書き続けている。急ぎすぎず、怠けすぎず、慎重に確かめながら、一語一句を積み重ね続けている感じだ。

頭の中の七割くらいは、自分の本の原稿のことでずっと埋まっているので、このブログを書いたりする余裕もあまりなく、他の人が書いた本を読む余裕もなく、いつもぼんやりと考えごとをしているか、モニタとにらめっこしてキーボードを叩いているか、といった日々が続いている。

進捗は、折り返し点を少し過ぎたところだ。この先、一つ二つ、難しそうなポイントが待ち構えている。そこをうまく書き抜けられたら、終わりが見えてきそうな気もする。ただ、本が完成するまで、まだまだ先は長い。草稿が完成したら、次は推敲とリライトだし、校正と編集作業もあるし、春頃までは、まったく気が抜けない。というか、春頃までにそうした作業が完了できるような状態に持っていかなければ、そもそもお話にならない。

がんばるしかないか……。淡々と、少しずつでも。

ありのままを掬い取る

僕は昔から、自分の文章や写真、本などを「作品」とはあまり言わないようにしている。そう呼んでしまうと、自分の中で何かしっくり来ない気がしてしまうからだ。

たぶんそれは、僕が編集者やライターとして、取材相手やデータと四六時中向き合う、リアリスティックな仕事からキャリアを開始しているからだと思う。作家やアーティストの方々のように、ゼロから何かを生み出して、それを作品という形にする、という意識がない(というかそういう創作が自分にはできない)。文章や写真によって何らかの表現を生み出そうとか、主義主張を込めようとか、そういう動機を僕が持ったことは、今までのキャリアをふりかえっても、全然ない。

書いたり撮ったりする時に自分の中で考えているのは、「ありのままを掬い取る」ということ。

目の前で起きたこと、自分で見聞きしたこと、五感で感じたこと、調べて裏を取ったこと、それらを一つひとつ掬い上げて、できるだけ色をつけずに、そのまま差し出す。それらをどう受け止めるかは、読者の方々に委ねる。そのプロセスでの自分の技術やアイデアや努力は、特に評価してもらわなくても構わない。伝えたいことをどれだけありのままに伝えられるかがすべて。自分の本づくりの動機は、それに尽きる。

昔、サントリーのウイスキーの広告に「なにも足さない。なにも引かない。」というコピーがあったが、僕にとっての本づくりも、それに近いのかもしれない。何も足さず、何も引かず、ありのままを掬い取り、本という形に託して伝える。ある意味、それが僕の本づくりの主義主張なのだと思う。