メギとワイワイ

日曜だけど、急いで書かなければならない原稿があるので、出かけられない。食事を作る暇も惜しいので、昼はサッポロ一番みそラーメンに、ざく切りにした便利菜と、玉子とラー油を入れたものをささっと食べる。

ラダックでは、インスタントラーメンのことを「メギ」と呼ぶ。これはラダック語ではなくて、一番たくさん出回っているラーメンが、ネスレのマギーブランドのものだから。「マギー」が「メギ」と微妙に変化して、そのまま呼び名となっているわけだ。

本来はいろんな味のバリエーションがあるらしいけど、ラダックで出回っているのは、マサラ味の粉末スープが入っているものばかり。一度食べると正直飽きてしまう味なのだが、トレッキングに持っていくと、寒い時にはメギのマサラスープが身体をあたためてくれるので、割と重宝する。それに、どんなに山奥の村でも、一軒でも店があれば、まず間違いなくメギが売られている。旅のスタイルによっては、ラダックで一番口にする機会の多い食べ物かもしれない。

ラダックの子供たちは、このメギが大好き。お湯で調理して食べるのはもちろん、袋を開けて粉末スープをふりかけ、ベビースターラーメンよろしくぽりぽり食べるのも好きだ。まあ、あんまり子供の身体にはよろしくない食べ物だが、どこの国でも、子供たちはそういう身体に悪そうな食べ物が大好きだからなあ。

最近のラダックではメギのほかに、ワイワイという他のメーカーのラーメンも見かけるようになった。こっちはマサラ味ではなく、何か微妙な感じの味付けで、ラダック人にはあんまり人気がない。食料品店でも売れ残りがちだから、僕のような外国人がトレッキングの食料を調達しに行くと、メギの代わりにワイワイを売りつけられそうになる(笑)。メギファンの人はご用心を。

昔の同僚たち

午後、町田駅で待ち合わせ。友人の一人が目の手術で入院していたので、何人かでお見舞いに行くことにしたのだ。といっても、その友人は予定より早めに退院した後だったので、町田のマーカーズカフェという店でお茶を飲みながら、互いの近況報告をするという感じになったのだが。

彼らは、十年ほど前に働いていた某出版社の元同僚たち。その出版社では、何をやらせたいんだかさっぱりわからない人事にさんざん振り回されたから、正直、あまりいい思い出は残っていない。でも当時、同じフロアで働いていた人たちとは、意外と言っては何だが、未だに緩いつながりが続いている。お互いいろいろあったから(笑)、妙な連帯感が生まれているのだろう。

当時の同僚たちの中には、いろんな事情で、出版の世界から足を洗ってしまった人も少なくない。僕がフリーランスの立場で本作りに携わり続けて、どうにかこうにか生活していけているのは、たぶん、相当にラッキーなのだと思う。

ちなみに、お見舞いで訪ねた友人からは、こんなものをもらった(笑)。

本当の尖閣

昨日の夕方は、葛飾で取材の仕事だった。今日も取材の予定が入っていたのだが、先方の都合で再来週に順延に。ここのところ、トークイベントを含めてきついスケジュールだったから、ようやく一息つけた感じ。

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昨夜から巷を賑わせている、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で、海上保安庁が撮影した映像が流出した事件。僕も見たが、どこからどう見ても、中国漁船が意図的に船首をぶつけている。巡視船の方が船体が大きいとはいえ、当たりどころが悪ければ沈没してしまいかねない、悪質で危険な行為だ。

これだけわかりやすい証拠があるのだから、起訴すれば確実に有罪に持ち込むことができたはず。だが、腰抜けの民主党政権のせいで、何もなかったことにされてしまった。命をかけて働いている現場関係者の落胆ぶりは、察するに余りある。機密情報の管理体制がどうとかいう以前に、個人的には、内部告発者の勇気に拍手を送りたい。

僕たちには、こうしたことを知る、当たり前の権利がある。

旅とは何か?

昨日のトークイベントは、「旅を撮る。旅を書く。旅を生きる。」というテーマを掲げることにしたのだが、その中で「自分にとって、旅とは何か?」という問いかけについて考えていた時、思ったことをつらつらと。

僕にとっての旅は、自分が一番自分らしくいられる時間。そして、自分のちっぽけさを思い知らされる時間。どこかに旅に出るたびに、自分がいかに何も知らないか、何もできないかということを、嫌というほど突きつけられる。

世間には、「放浪しようぜ!」とか「旅に出ちゃえば?」とか、旅をすることがまるで何か特別な人間になれる行為であるかのように吹聴している人もいる。でも、旅をすること自体は、別にすごくもかっこよくもない。時間と予算と健康な身体とパスポートがあれば、誰にでもできることだ。アジア横断しようが、世界一周しようが、インドの山奥に何年も住み着こうが、それで何かを成し遂げたわけではないし、誰かのために尽くしたわけでもない。

旅の時間の中では、いいこともあれば、悪いこともある。そこで何を感じ、受け取るか。そこから自分が何をするか。漠然と旅をするだけでなく、そこまで考えていって初めて、その旅がかけがえのない時間になる。たぶん、すぐには答えは見つからない。僕自身も未だに消化しきれていない。でも、これからもずっと、考え続けていこうと思う。写真を撮ったり、文章を書いたりするのは、そうして考えたことを人に伝えていくための手段だ。

たぶん、それが僕にとっての旅。

トークイベント

今日はいよいよ、写真展の会場に旅音の林澄里さんをお招きしてのトークイベント。途中で頭が真っ白に飛ばないように、午前中のうちに家でトークのイメトレをしてから、支度をして、十二時に会場入り。ちょこっとトラブルがあったものの、事なきを得て、どうにか準備完了。

開場時間になると同時に、お客さんがどっと入ってくる。自分で呼びかけておいて何だが、すごい人数だ‥‥。大丈夫か俺。写真をスライドで見せながらのトークイベントは去年二回ほどやらせてもらった経験があるが、ゲストを迎えてのトークは初めてだし。こうなったら、当たって砕けろの覚悟でいくしかない。

一時過ぎから、トーク開始。どんな感じのトークになったのかは‥‥あんまりよく憶えていない(苦笑)。自分がしゃべることと、林さんが話しやすいように話題を振ることにとにかく必死で、記憶が断片的にしか残っていない‥‥。はたしてうまくいったのだろうか。でも、ミヤザキ店長が用意してくれたリトスタ特製お弁当は期待を裏切らないおいしさだったようで、お客さんたちがおいしそうに食べていたのは憶えている。お弁当に助けられた(笑)。

二時半にトークを終え、本を購入してくださった方々にサインを進呈したり、質問に答えたりしているうちに、閉場の時間に。長かったような、あっという間だったような。撤収作業を終え、林さんやイベントを手伝ってくれた人たちと一緒にお弁当をいただく。肩の荷が一気に下りて、腑抜けたような気分。

夜は吉祥寺でジュレーラダックの関係者さんたちと合流して、アムリタ食堂で打ち上げ。長居したのにいろいろサービスしてもらってしまった。林さんやみんなと別れ、ほろ酔いで帰宅。しかし、明日の取材の準備をしなければ‥‥。

ともあれ、イベントにお越しいただいたみなさん、本当にありがとうございました。