Category: Diary

一冊去って、また一冊

去年から作り続けていた『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』が、今週、無事に校了。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』と同じ制作チームだったこともあって、編集作業自体はかつてないほどスムーズだったが、想定外のミスを見落としてしまいそうになった場面もあるにはあったので、うまく切り抜けられて、ほっとした。また一冊、愉しい本づくりの時間が終わってしまったのは、少し寂しくもあるけれど。

そんな余韻に浸る間もなく、秋頃に出す次の本の編集作業が、すでに始まっている。時間の猶予は、あまりない。来週明けには、ある程度の素材を揃えて提出せねば……。一冊去って、また一冊。

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ニコラス・シェイクスピア『ブルース・チャトウィン』読了。今年に入って、『4321』の次に就寝前の読書時間に少しずつ読んでいた、888ページの鈍器本。早逝によって半ば伝説と化している紀行作家チャトウィンの生涯が、膨大な量の証言と資料を基に克明に綴られている。美化もせず、貶めもせず、徹底して客観的な視点でチャトウィンの実像を詳らかにしていく、その一切の妥協のなさは、チャトウィン本人が少々気の毒に思えるほどだ。僕が死んだ後、伝記だけは勘弁してほしいと思った(苦笑)。とはいえ、この伝記を読んだ後に、あらためて『パタゴニア』『ソングライン』を読むと、また違った発見や面白さを感じられそうな気がする。

通信途絶

月曜の午後、突然、自宅のインターネット回線がつながらなくなった。ひかり電話回線も。原因不明。機器のつなぎ換えなどもしていないのに。

とりあえず、通信業者(ソフトバンク)にスマホで問い合わせる。最近のサポート窓口はチャットでの対応が中心なのだが、そこでも原因はわからず、自宅内での機器の不調ではないかと指摘される。自宅の外での通信障害は、特に起こっていないという。マンションの管理会社にも問い合わせてみたが、同じマンションのほかの部屋からの問い合わせは来ていないという。となると、うちにある機器のトラブルなのだろうか。

ソフトバンク側でチャット窓口を二つたらい回しにされ、回線を所持しているNTTのサポート窓口に回される。すると。

NTT東日本故障受付(0120-×××-×××)です。確認したところ、通信ビル又はケーブルの故障が発生中です。復旧次第、連絡させて頂きます。

まじか……完全に、家の外での通信障害じゃないか……ソフトバンクとマンション管理会社の言ってたことと、全然違う……。

丸一日以上かかって、ようやく復旧したのだが、何というか……ほとほと疲れた。

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齋藤陽道写真展「神話 7年目」鑑賞。凄かった。何というか、生半可な言葉では表現できない……。身体が震えた。大いなるものへの畏れと、生まれゆく者たちに託された祈り。齋藤さんが長い歳月をかけて積み重ねてきた思いが、あの空間に凝縮されていた。3月27日から30日まで、4日間限りの写真展なので、未見の方は何をおいてもぜひ。

パスポートのオンライン更新

手持ちのパスポートの有効期間が残り一年を切った。今日から、新仕様のパスポートの受付が始まったので、さっそく申請してみた。

今回は、マイナンバーカードとマイナポータルを使うオンライン申請に挑戦。極端にわかりにくい場面はなかったが、洗練されているともあまり言い難く、いったい何度マイナカードを読み取らせるんだ、という感じのまどろこっしさはあった。あと、古いパスポートのICチップからiPhoneでデータを読み取る時、何度もエラーが出た。正直、半分あきらめかけたのだが、パソコンの近くや金属製の机の上とかだとエラーが出やすいらしい。木製の机の上に移動して再トライしたら、何度目かにどうにか成功した。顔写真のデータと署名の画像データは、あらかじめ所定の仕様で準備してスマホに入れておくと断然スムーズだと思う。

ともあれ、これでまた十年、新たにパスポートを使い続けることになった。僕はあと何度、パスポートを更新することになるだろうか。二回? いや、一回かも。何かの大病を患えば、このパスポートが最後になる可能性もある。自分には、そういう感じのカウントダウンが始まってるのだな、とあらためて自覚した。

「趣味」について

「趣味」という言葉を辞書で調べると、「仕事・職業としてでなく、個人が楽しみとしてしている事柄」とある。英語の「hobby」という言葉はこの意味には必ずしも当てはまらないようで、専門的な知識や技術を駆使したり、手間暇や時間をかけたりして、熱心に取り組むものを指すのだという。

僕の趣味は……何だろう? 映画鑑賞や音楽鑑賞は、趣味と言えるほど数をこなしていない。読書は……かろうじて趣味と言えるか、という程度。低い標高の日帰り山歩きも……最近はどうにか。自転車は……また復活させたいと考え中。自炊は……趣味というより、日々の家事か。いずれにしても、仕事の合間の気晴らしに近い。それはそれで必要なものだし、大切にしている時間でもあるけれど。

旅はどうだろう? 写真は? 文章を書くことは? 本を作ることは? 今の自分にとっては、どれも仕事だ。でも同時に、専門的な知識や技術を駆使し、手間暇と時間をかけ、情熱を傾けて取り組んでいる行為でもある。

好きで、楽しんで、知識や技術を駆使して熱中できることが、そのまま仕事になり、生き甲斐にもなっている。たぶん僕は、ものすごく恵まれた立場にいるのだと思う。

冬の高水三山


日々せわしないながらも、半ば無理やりに時間を作り、日帰り山歩きに行ってきた。今回の目的地は、奥多摩方面にある高水三山。軍畑駅を出発し、高水山、岩茸石山、惣岳山の三つの山を縦走し、御嶽駅に下りるルートを歩いた。西荻からは中央線と青梅線ですんなり往復できるので、アクセスは意外といい。


高水三山を歩くのは、実は二度目。最初に歩いたのは……2012年の6月(このブログで検索して調べた)。あの時は、曇っていて蒸し暑くて、登山道の左右に鬱蒼と草が茂っていた記憶がある。冬に来たのは初めてだったが、そこまで寒くもなかったし、トレイルには残雪やぬかるみもなく、歩きやすかった。


高水山の山頂の手前にある、常福院不動堂。軍畑駅からここまで、約1時間15分。主な登り行程はここまででほぼ終わり、あとは尾根と下りになる。


高水三山は、いずれの頂上も眺望はそこまで開けていなくて、登山道も大半は針葉樹林の中にある。絶景を求める人には向いていないかもしれないが、個人的には、こういうひなびた低山に何となく惹かれる。高くて眺めのいい場所に登るだけが、山歩きの楽しみというわけではないのだし。

今回のコース全体での所要時間は、ちょうど4時間。13年前に歩いた時も、ちょうど4時間だった(とブログで書いていた)。僕もそれなりの年齢のおっさんだが、13年前と同じタイムで普通に歩けているのには、正直、ちょっとほっとした。