子供の頃、自分の行手には、無限に思えるほど長い人生の時間が横たわっていると感じていた。いつかはそれが途切れることなど、想像もつかなかったし、考えもしなかった。
一般的な人間の寿命の半分ほどの時間を生きてきた今、自分の行手に横たわる時間はそれほど長くはなく、だいたい想像できる範囲だ。今は、ずっしり重いカメラバッグを担いで標高5000メートルの山の中を歩き回ったりしているが、それができる時間も、あと30年もないだろう。
もしかすると、まともな人の感覚で考えれば、行手に横たわる時間の終盤に備えて、今からあれこれ準備しておくべきなのかもしれない。でも、僕は‥‥今、できることを、めいっぱいやるにはどうすべきか、それをまず考えたい。後になって、あの時、あれをやっておけば、ああいう本が作れたのに‥‥という後悔だけはしたくない。先のことを憂うより、今の自分が出せる力を出し切りたい。
それで、どこまでやれるのか。でも、やるしかないな。