東京と山梨の間に位置し、奥多摩三山の一つにも数えられる三頭山。ほとんどの登山者は、登頂が容易な南側の檜原都民の森から登るそうだが、僕は今回、奥多摩湖の側から、ヌカザス尾根と呼ばれるルートを辿って登ってみることにした。標高差は、だいたい1000メートルくらいだろうか。
天気は快晴。奥多摩湖畔では、至るところで藤の花が咲いていた。
小河内神社のあたりでバスを降り、湖にかかる浮き橋を辿って登山口に向かおうとしたところ、なんと、渇水の影響で浮き橋は通行止め。西にある三頭橋の方から迂回して、湖の南側にあるこの登山口に辿り着くまで、一時間もかかってしまった。やれやれ。
奥多摩にある登山道の中でも、ヌカザス尾根はかなりきついルートだという噂をネットで目にしていたのだが、実際に登ってみると、そこまできついという印象でもなかった。ヌカザス山の手前と、入小沢ノ峰の手前のツネ泣き坂と呼ばれる場所が急登といえば急登だが、慎重に行けば別に問題ないレベルだと思う。
途中、ヤマツツジの花々がつぼみからほころびはじめていた。しばし足を止めて、その鮮やかな色に見とれる。
今回、ヌカザス尾根を辿って三頭山を目指す途中、ただの一人も他の登山者に出会わなかった。平日だし、マイナーなルートということもあるのだろうが、あたりは本当に静かで、自分の好きなペースで歩いたり立ち止まったりできるので、思いがけないほど快適な山歩きになった。
頭上から照りつける日射しを、新緑の木々が優しく遮ってくれる。標高1500メートルを吹き渡る風は、ひんやりと乾いている。休憩時間を含めてちょうど三時間ほどで三頭山の山頂に到着。山頂からは、うっすらと富士山が見えた。
三頭山の山頂からは、他の登山者が登ってくる南側の檜原都民の森の方へ下る。こちら側の森も確かに美しくて、道もよく整備されていて歩きやすいのだが、ヌカザス尾根で自然を独り占めしてきた後だと、ちょっと物足りない感じがしないでもなかった(笑)。
橋の上から眺めた、落差35メートルの三頭大滝。この後、都民の森から数馬経由でバスを乗り継ぎ、武蔵五日市駅から電車で帰路につく。気の向くままに思うぞんぶん山を歩き回って、心地よい疲労感。夜、風呂上がりに飲んだビールが素晴らしくうまかった(笑)。