アラスカを発つ前日、南東アラスカの小さな町、ケチカンを訪れた。ハイダ族やトリンギット族など、トーテムポールの文化を持つ先住民族が周辺に数多く暮らしている町だ。ツアー一行とともに訪れたトーテムポール博物館では、各地から蒐集された古いトーテムポールが展示されていた。本当なら、野ざらしのまま朽ちていくべきなのが、トーテムポールなのだけれど。
町の郊外にあるハイダ族の村、サックスマン・ビレッジを訪れた。ここは今や観光客向けのトーテムポール公園のようになっている趣もあるが、先住民族以外は居住を許されていない地域でもあるという。
サックスマン・ビレッジにあったクマのクランハウス。彼ら先住民族は、ワタリガラスやクマ、オオカミ、ワシ、サケなど、クランと呼ばれる氏族に分かれている。彼らが建てるトーテムポールのモチーフにも、このクランが大きく関係してくる。
村の中にある工房では、ワタリガラスのトーテムポールが作られていた。一本のトーテムポールが仕上がるまでには、膨大な手間と長い時間がかかるのだという。
村をとりまく森は、まさに南東アラスカ特有のレインフォレスト。木々の枝を、樹上性蘚類がびっしりと覆う。一年の大半が雨というこの土地ならではの光景だ。こういう森の中を、もっと時間をかけて歩いてみたかった‥‥。
夏の間、ケチカンには南東アラスカのフィヨルドをめぐる巨大なクルーズ客船が数多く寄港する。ケチカンの町の人口は一万五千人くらいらしいが、クルーズ客船には一隻につき五千人もの乗客が乗っていて、それが日に五、六隻も寄港すると、町の人口の倍以上の観光客が上陸することになるそうだ。別にクルーズ客船に興味はないが、この小さな町には、もう少しゆっくりと滞在してみたかった。
アラスカの旅のレポートは、これで終わり。彼の地をまた訪れる機会は来るのかな。