父とカメラ

富士フイルムが、X-Pro1という魅惑的なカメラを発表したというニュースをネットで知る。父が生きていたら、交換レンズも含めてごそっと買ってしまいそうなカメラだ(笑)。

ゴルフもパチンコも競馬もやらず、趣味らしいものもほとんどなかった父が、唯一と言っていいほど凝っていたのが、カメラだった。フイルム時代はキヤノンやミノルタを使い、デジタルに移行すると、(効率が悪いにもかかわらず)キヤノンとニコンの両方を担いで海外旅行に行くようになった。パソコンに写真をバックアップする環境作りについて、根掘り葉掘り聞かれたこともあったっけ。

可愛い孫たちを除けば、父が撮るのは、風景ばかりだった。高校の教師として働き続けた父。「人には疲れた。撮るのは風景でいいよ」と、前に僕にもらしたこともあった。安曇野にもう一つの家を構えて、山と自然を撮り歩いていたのは、そういう理由もあったのかもしれない。生まれつきの色覚異常で、色を見分けるのにも苦労していたはずなのに、そんなことは気に病むそぶりもなかった。

僕がしばらく前から写真も仕事にするようになったことを、父がどう思っていたのかは知らない。友人の方から、父が「いや、写真は息子には敵わないですよ‥‥」と笑って話していた、とは聞いたのだけれど。意外と負けん気の強い人だったから、そのうち自分もどこかのギャラリーで個展をやるぞ、というくらいには思っていたのかもしれない。

空の向こうで、父はどんなカメラで、何を撮っているのだろうか。

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