文章の良し悪しとは何によって決まるのか、ということについて考えてみる。
身も蓋もない言い方をすれば、それは結局、読者次第だ。どんなに有名な作家が書いた文章でも、どうにも性に合わないという人はいるだろうし、多くの人が駄文としかみなさないものでも、ある人にとっては心を動かされる文章かもしれない。文章の良し悪しは、人それぞれ。百人中百人がいいと思う文章は、たぶん、ほとんど存在しない。
僕自身、何がいい文章で、何が悪い文章なのか、はっきりした基準を持ってはいないし、それが他の人に通じるとも思わない。物書きとしては、それじゃダメなのかもしれないが‥‥(苦笑)。ただ、自分はこういう文章は好きで、こういう文章は嫌いだ、という個人的な好みを挙げることはできる。
僕が好きな文章は、書き手の人となりが、素直に表れている文章。たとえ、ところどころが拙い印象でも、「これを伝えたい」という気持が一行々々に籠っていれば、僕はそれを「いいなあ」と感じることが多いような気がする。
で、嫌いな文章は‥‥うまく言えないが、「カッコつけてる文章」かなあ。「カッコイイ文章」ではなく、「カッコつけてる文章」。
「カッコイイ文章」というのは、本当に何か素晴らしいテーマについてきっちり書かれていれば、自然とそういう文章になるものだと思う(僕はそんな風に書く自信はないが‥‥)。でも、時々、実際よりも物事を大仰に、感動的に盛り上げて書こうとしたり、気の利いた(と往々にして思い込んでいる)レトリックで文章を飾り立てたり、書き手自身をよりよく見せようという作為が透けて見えたりすると、ぱたん、と本を閉じてしまうことが多い。
まあ、僕には「カッコつけてるなあ」と感じられる文章も、もしかするとその書き手は、裏表のない素直な気持で書いたのかもしれないし、そういう文章が好きな読者もいるかもしれないから、やっぱり、いいとか悪いとかは言えない。あくまでも、個人的な好き嫌いの話ということで。