四月下旬の『雪豹の大地 スピティ、冬に生きる』の発売に合わせて、連休前から今日までの間、都内を中心にいくつかの書店にご挨拶回りをしていた。
書店員の方々と話をしていて感じたのは、『雪豹の大地』の現物を目にして、おお、これは、とただならぬ気配を察してくださっていた方が多かったということ。やっぱり、完成度をとことん突き詰めて作り上げた一冊の本が醸し出す存在感は、書店員や読者の方々にも伝わるものなのだな、と。チームで作り上げた本をそんな風に受け止めてもらえていて、個人的にも嬉しかった。
それにしても、行く先々、素敵な書店が多かった。自分の好みドンピシャな品揃えだったりすると、ついつい見惚れて、気がつくと一冊手に取っていたりする。そうして買った本が日を追うごとに増えていき……また本棚のスペースがなくなってきた……。
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J.D.サリンジャー『彼女の思い出/逆さまの森』読了。グラース家の物語でもコールフィールド家の物語でもない、サリンジャーの初期の短編集。明らかに軽めに書かれた作品もあるが、彼ならではの先見性と繊細な感性、そして語り口の巧みさを堪能できる一冊になっている。特に、彼自身の実体験が反映されているとも言われている表題作には、心を打たれた。