二カ月前、成田からインドに向かうエアインディアの機内で最初に観たのが、「Dear Zindagi」。主演はアーリヤー・バットで、シャールクががっちりと脇を固め、監督は「English Vinglish」のガウリ・シンデー。面白くないわけがない、と期待していたのだが、はたして、予想以上の出来だった。
シネマトグラファーのカイラは、いつの日か自分らしいオリジナルの作品を撮りたいと願いつつも、今は目の前の仕事に追われる日々。ボーイフレンドは入れ替わり立ち替わり何人かいるのだが、長続きしないというか、自分でも彼らを本当に好きなのかどうかわからない。自分自身の心の奥に潜む不安定な何かを理解できないでいたカイラは、ひょんなことから実家のあるゴアに一時的に戻り、そこで出会った精神科医のジャグからカウンセリングを受けることになる……。
ネタバレになるのであまり事細かには書けないのだけれど、とにかくまず、アーリヤーの演技が素晴らしい。超絶美人女優が居並ぶボリウッドの世界で彼女はけっして図抜けた美女というタイプではないと思うが、表情の豊かさと役に応じてめいっぱい振り切ることのできる演技力で、今や唯一無二の存在になりつつある。そのアーリヤーの熱演をほどよく力の抜けた穏やかさで受け止めるシャールクの役割も絶妙だった。けっして恋人同士ではない、でもやがて、かけがえのない絆を感じさせるようになる、カイラとジャグの関係。今、インドでこういう人間関係を描かせたら、ガウリ・シンデー監督の右に出る者はいない。
日本での劇場公開が待ち遠しいこの作品、とりあえず今はNetflixで観ることができるようだ。とても良い作品なので、ぜひ。