成田からデリーに向かうエアインディアの機内で観た2本目の映画は「Queen」。2015年のフィルムフェア・アワードを受賞した作品で、機会があればぜひ観なくてはと思っていた。
菓子店の箱入り娘のラーニーは、結婚式を直前に控えたある日、婚約者のヴィジャイから急に破談を言い渡される。突然の申し入れに呆然とする家族。ショックに打ちひしがれたラーニーは閉じこもって泣き暮れていたが、ヴィジャイと計画していたハネムーンのヨーロッパ旅行に、なぜかたった一人で行くと言い出す。あらゆることに慣れない海外一人旅で右往左往しながら途方に暮れるラーニーを、パリ、そしてアムステルダムで待ち受けていた出会いとは‥‥。
インドの伝統的な社会構造の中では、女性はともすると抑圧された立場に置かれてしまいがちだが、最近では、そうした女性が抑圧を跳ね返して自らを軽やかに解き放つ作品もインドで観られるようになってきた。日本でも公開されてスマッシュヒットを記録した「English Vinglish」(邦題:マダム・イン・ニューヨーク)はその典型的な例で、この「Queen」もそうした作品の系譜に連なるものだ。
主演のカングナー・ラーナウトは今のインド映画界きっての若手演技派女優で、コロコロ変わる豊かな表情と台詞、迫真のヨッパライ演技まで(笑)、観ていて本当に楽しい。個人的には、海外一人旅初心者あるあるネタが随所にちりばめられているのもツボだった。新鮮な旅の経験にもまれながら、ラーニーが一人の女性として、でも変にヨーロッパ文化にかぶれたりすることもなく、少しずつ自分自身を見つめ直しながら新たな一歩を踏み出す勇気を手に入れていくプロセスは、心に響くものがあった。意外なことに、日本に関するエピソードも織り込まれていたりする。
この作品、日本で公開したら必ずヒットすると思うんだけど‥‥またシネスイッチ銀座あたりで‥‥どうですかね?