極北の風

今回のアラスカ取材では、いつも行き当たりばったりな僕にしては珍しく、かなり周到に装備を吟味しながら準備した。撮影機材はもちろんだけど、それと同じくらい慎重に検討したのが、防寒具やテントだった。

二年前に母の付き添いの団体旅行でデナリ国立公園を訪れて、短いハイキングに参加した時、特に強く印象に残ったのは、風の冷たさだった。朝晩はともかく日中はそれほど気温は低くないはずなのだが、とにかく風が、氷のように冷たい。原野で吹き晒されると、体温をごっそり奪い去られてしまう。中途半端な装備で臨むとつらい思いをすることになるのは目に見えていた。

服はもこもこのダウンジャケットではなく(薄い布地だと灌木の枝にひっかかって破れやすい)、ゴアテックスのハードシェルの下に薄手のインナーダウンとソフトシェル、足はトレッキングパンツの下にタイツ。ニットキャップや手袋など、身体の末端を保温するものも重要だ。テントも風に強いしっかりしたタイプをと、アライテントのエアライズを選んだ。寝袋はひさしぶりに、冬のラダックやチャダル・トレックで使った厳寒期用のものを持ち出したが、十二分に役立ってくれた。

それにしても、ワンダーレイクを吹きすさぶ風は、どうしてあんなに冷たいのだろうか。国立公園の入口あたりとは、同じような天気の日でも、風の冷たさがまったく違っていた。あの大きな大きな山‥‥デナリに近づけば近づくほど、風も冷たくなるのかもしれない。わからないけど。

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