「カッティ 刃物と水道管」

タミル映画界のトップスターであるヴィジャイとA.R.ムルガダース監督による作品は、選挙をテーマにした「サルカール 1票の革命」を以前観て、楽しむと同時にいたく感銘を受けた。それ以前にこのコンビによって作られた映画「カッティ 刃物と水道管」が、日本語字幕付きで劇場公開された。

コルカタの刑務所から脱獄してチェンナイに逃げた詐欺師カヴィルは、偶然目撃した銃撃事件の被害者ジーヴァが自分と瓜二つなのを利用し、ジーヴァを自分に見せかけて警察に捕まえさせ、自分自身はジーヴァになりすまして逃げおおせようと画策する。しかし、ジーヴァの故郷の村で起きている事件のあらましを知るにつれ、カヴィルは巨悪と対峙することになる……。

面白かったし、いろいろ考えさせられた。A.R.ムルガダース監督は、娯楽映画であっても社会問題を巧みにテーマに織り込むことに長けている。「カッティ」は「サルカール」よりも少しスケールが小さいのだが(それでも、チェンナイ全域の水供給を止めてしまうあたり、十分すぎるくらいでかい話だが)、その分、大企業によるインドの農村での乱開発と、話題作りしか考えていないマスメディアの弱者に対する冷淡さというテーマに、物語をシンプルに絞り込めていた。カヴィル自身も、誰と戦っても無傷のスーパーヒーローではなく、あるトリックを利用することで無類の強さを発揮するという仕掛けも(それ自体が伏線でもある)、うまいなあと感心させられた。

最近は、ヴィジャイの出演作品を日本語字幕付きで観られる機会が増えてきていて、個人的にもとても嬉しい。彼自身は、今後政界に進出する計画があるそうで、俳優業から引退するという話も聞いているが……どうなるのかな。

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