二週間半ほど前から、新しい本の原稿の執筆に、本格的に突入した。
自宅では相方がリモートワークをしなければならないので、僕は隣駅の吉祥寺にあるコワーキングスペースのブース席で、十時半から五時頃まで、原稿を書いたり、推敲をしたり、といった作業をしている。自宅ではない場所での執筆にも、だいぶ慣れてきて、割とちゃんと集中できるようになった。マスクをしなければならないのが、だいぶ鬱陶しいけれど。
とはいえ、まだ二万字くらいしか書けてないので、この先の苦難を想像すると、ちょっと茫然としてしまう。自分の書く原稿が、本当にこれで大丈夫なのか、ベストの形なのか、最終的に判断できるのは自分しかいない。絶対に手は抜きたくないのだが、逆に、どのレベルに到達すれば自分で自分にOKが出せるのか、自信も確信も正直言って全然ない。どうすればいいのかなあ……毎度のことではあるのだが。
とはいえ、逃げることもできないし、やれるだけ、やるしかないか。よし、やろう。
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川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』読了。白鳥建二さんという全盲の美術鑑賞者の方と全国各地の美術館を巡るという本なのだが、読み始めからは想像できないくらい、僕たちが常識と思い込んでいるところとは違う領域に踏み込んでいく。僕たちはこの世界のありようも、互いのことも、本当には何一つわかっていないのだけれど、そのわからなさを抱えたまま、互いが互いを少しずつ思いながら、同じ列車で何処かに向かっているのかもしれない。読み終えた後に、そんなぬくもりがふわっと残った。