「Newton」

タイ取材のために羽田を飛び立って、台風24号の暴風の余波に揺れる機内で観たのは、インド映画「Newton」。「クイーン」などで独特のトボけた味の演技を見せている個性派俳優、ラージクマール・ラーオの主演作。海外の映画祭などでも話題になっていた作品だったので、観てみることにした。

舞台はインド中部チャッティースガル州のジャングル地帯。毛沢東派の武装勢力が支配するこの一帯には、わずかながら先住民が暮らす村々がある。公務員で生真面目な性格のニュートンは、このジャングル地帯で実施される選挙管理員に自ら志願する。何かにつけて非協力的なインド軍の護衛を受けつつ、現地に赴いたニュートンは、同僚や現地の協力者とともにどうにか投票を実施させようとするが……。

インドの、それも辺境中の辺境での選挙という、かなり特殊なテーマの作品。ミニマルな世界ゆえに、インドの政治や社会の実態(主にダメな部分)がよ〜く表れていたように思う。頑ななまでに杓子定規な主人公ニュートンのふるまいは、時に滑稽ですらあるのだが、それがかえって現実の異様さ、滑稽さ、そしてむなしさを際立たせている。

いつ、どこからゲリラが出没するかわからない、というチリチリした緊迫感をはらみつつ、物語は小さな笑いを交えながら淡々と進んでいく。このまますーっと終わるのかな……というところで、思いがけない展開が、どん、さらにどん、と。何とも言えない後味の残る、不思議な映画だった。

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