仕事でやさぐれてる人への処方箋

春だからというわけでもないが、こんな話をば。

仕事柄、いろんな人に会う。取材先の人はもちろん、仕事を依頼する側の人や、同じ業務に携わる人、行く先々でお世話になる人など。はつらつと勢いに乗っている人もいれば、壁にぶち当たって悩んでいる人もいる。仕事に対して、すっかりやさぐれてしまっている人もいる。

職場環境が不当かつ劣悪であったりするような場合を除くと、仕事に対してやさぐれてる人は、大きく二つのタイプに分かれる。一方は、「どうせ自分は、能力のない、ダメな人間だから」と、自分自身をあきらめてしまっている人。もう一方は、「こんなはずじゃなかった。自分はもっとやればできる人間なのに」と、自分の能力を過信してしまっている人。後者に関しては、僕も二十代の頃にかなりその兆候があったので、今もそういう人に遭遇すると、ひりひりした気分になって、いたたまれない(苦笑)。

前者も後者も、そういう人とうまく付き合うのは難しい。前者の人に何の根拠もなく「そんなことない。がんばればきっとうまくいきますよ」とは言いづらいし、後者のような人に「いや、今のあなたにはそこまでの能力はないですよ」とも指摘しづらい。良い影響力を持つ上司の方などがいれば話は別かもしれないが……。

で、ほとんどの場合、前者の人も後者の人も、その時点での仕事に対する姿勢は、かなりなげやりになってしまっている。一つひとつの作業は雑になり、一人ひとりに対する接し方も雑になる。周囲からの評価はますます下がる。それに嫌気がさして、ますますなげやりになる、の無限ループ。そういう人が職場を変えてみたとしても、悪循環から抜け出せる可能性はけっして高くはない。

仕事でやさぐれてる人への処方箋は、たぶん、一つしかないのだ。

あまり先のことばかり考えず、その時点で目の前にある作業に、一つひとつ、きちんと丁寧に取り組んでいくこと。仕事関係で会う人、一人ひとりに、きちんと丁寧に接していくこと。一つひとつ、一人ひとり、小さな結果をもう一度最初から丹念に積み上げていく。たとえそれが、その時は「つまらない」と思うことだったとしても。そうした積み上げがすぐに周囲からの評価を変えるわけではないけれど、けっして無駄にはならないし、その先に進んだ道で大きな変化があった時、きっと確かな下支えになる。僕自身も、フリーランスに転身した頃、それに近い経験をしたから。

積み上げることを怠って、やさぐれているだけの人には、たぶん、いつまでたっても、出口は見えてこない。

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