それなりにそれっぽくまとめる能力

ライターの仕事にもいろいろあるけれど、クライアントから依頼されて、どこかで誰かに取材して、それを基に原稿を書く場合。

取材がいい感じに盛り上がって、話の内容も面白ければ、たいていのプロのライターなら面白い原稿が書ける。でも、何かの原因で取材がうまくいかなかったり、話が予期していたよりも薄い内容だったりすると、さてどうしよう、ということになる。事前の準備不足でそうなったなら同情の余地なしだが、ちゃんと準備していたのにあれやこれやで困ったことになるというケースは、ライターをしていると、実は結構よくある。

で、どうするか。この場合、ルポルタージュではなくクライアントワークなので、イマイチなことをイマイチと書くわけにはいかない。かといって、そこまで面白くもないものをすごく面白いと書いたり、話を盛り上げるために実情とは異なることを書いたりするわけにもいかない。微妙なところをほんのりオブラートにくるみつつ、嘘や誇大表現にならない範囲で文章の流れを整える。薄い内容の話を、それなりにそれっぽくまとめる能力。これ、ライターが身につけておくべき能力としては、かなり高度な部類に属するんじゃないかと、僕は勝手に思っている。

それなりにそれっぽくまとめる能力。確かに高度なスキルではある。でも、これを発動させても、当たり前だけどそれなりの原稿にしかならないので、誰も気付いてくれないし、誰もほめてくれない。書いてる本人も、モチベーションは上がらないし、満足感も得られない。残るのは、どうにか窮地を切り抜けたという安堵だけ。

ライター稼業なんて、まあ、そんなもんだ。

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