「君の名は。」

予想以上の大ヒットで映画館がずっと混雑していたのと、ここしばらくのせわしなさで、なかなか見られないでいた新海誠監督の「君の名は。」を、ようやく観に行くことができた。

千年ぶりに現れた彗星が近づきつつある日本。とある山奥の田舎町に住む高校生、三葉は、不思議な夢を見るようになった。東京にいる見知らぬ少年となって、彼の生活をまるで現実のことのように体験する夢。一方、東京で暮らしている高校生、瀧も、山奥の町にいる見知らぬ少女になってしまう夢を見るようになった。やがて二人は、実際に互いが入れ替わる現象がくりかえされていると気付く。まだ出会ったことのない、出会うはずもなかった二人が、不思議な形で結びつけられた意味は……。

新海監督はもともと独自の世界観と個性的な作風を持っていた方で、これまでの作品は必ずしも万人受けするものとは言い切れないところがあった。SF寄りの作品でも、現実世界寄りの作品でも、大切にしていたのに失ってしまったものを取り戻せない切なさ、やりきれなさのような後味を残す作品が多かった。でも、この「君の名は。」は、そこから立ち上がって、運命に抗ってさえ、大切なものを取り戻すためになりふり構わず駆け出していくような、そんな作品になっていたと思う。

作中には、これまでの新海監督の作品(CMも含めて)のセルフオマージュとも言える要素が数多く盛り込まれている。逆に言えば、過去のそうした蓄積がリブートされてエンターテインメント作品として最適なバランスで昇華されたのが「君の名は。」と言えるのかもしれない。

とりあえず、このピュアで王道なストーリーを素直に楽しめるくらいには、自分に人並みにノーマルな感情が残っていることにほっとしている(笑)。観客は圧倒的に10代、20代が多いのだそうだ。ティーンエイジャーのうちにこういう映画を観ることのできる人は、幸せだと思う。まだの人は、ぜひ映画館へ。

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