昨日は、千葉にあるイオンシネマ市川妙典まで遠征して、インド映画「フェラーリの運ぶ夢」を観た。日本でもヒットした「きっと、うまくいく」のスタッフががっつり関わっているこの作品、面白くないはずがないのだけれど、どういう大人の事情か、都内での上映館がないのである。公開初日だった昨日、館内はのんびりとした雰囲気だったが(苦笑)、観終わった後は「なんで? こんなにいい映画なのに!」と思わずにいられなかった。
交通局に勤めるルーシーは、バカがつくほど正直な男で、信号無視をしたのをわざわざ警官を見つけて自己申告するほど。早くに妻を亡くした彼は、気難しい父のベーラムと、一人息子のカヨと三人で、つつましく暮らしていた。クリケットで素晴らしい才能を持つカヨは、ロンドンで行われる強化合宿のセレクションを受けることになるが、その遠征には15万ルピーもの大金が必要だった。頭を抱えるルーシーのもとに、突拍子もない話が持ちかけられる。インドのクリケット界のスーパースター、サチン・テンドゥルカルのフェラーリを借りてきてくれたら、15万ルピーを払うというのだ‥‥。
この映画、話の展開だけを見ればかなりぶっ飛んでいるのだが、脚本がとにかくよくできていて、すんなりと楽しく観続けることができる。どうなるんだろう?と思っていた各登場人物の行動が最後にしゅるるっと収斂していって、細かい伏線まで見事に回収されていくのが気持ちいい。「きっと、うまくいく」でも好演したシャルマン・ジョシとボーマン・イラニも役にハマっていたし、カヨ役のリトウィク・サホレは、ショッピングモールで家族で食事していたところをスカウトされた、まったく普通の男の子だったそうなのだが、そうとはとても信じられない、みずみずしい演技をしていた。
笑って泣いて驚いての起伏を何度もくりかえして、観終わった後に感じる何とも言えない多幸感は、「きっと、うまくいく」の系譜に連なる作品ならではのもの。それにつけても思うのは、「なんで? こんなにいい映画なのに!」。良い映画は、みんなで映画館に足を運んで、スクリーンで観ることで応援してあげるしかないのかなと思う。