「世界の果ての通学路」

On the way to school

子供の頃、小学校や中学校への通学路は、それぞれ田んぼの中を横切る道を2キロほど歩く道程だった。高校からは自転車通学。億劫な時もあったけど、通うのが大変だったという記憶はない。

でも世界には、学校に行くのも一苦労どころではない子供たちがいる。「世界の果ての通学路」は、そんな四組の子供たちの姿を追ったドキュメンタリーだ。野生のゾウが闊歩するケニアのサバンナを、濁った水を入れたポリタンクと薪にするための枝を手に駆け抜ける兄妹。モロッコのアトラス山脈の奥深くにある村から、険しい山越えの道を歩いていく少女たち。荒涼としたパタゴニアの荒野を、妹を後ろに乗せたまま馬を駆っていく少年。南インドの漁村で、足に障害を抱える兄が坐る車いすを押しながら、えっちらおっちら登校する兄弟たち。美しくも厳しい自然、時に苛酷な現実の中で、子供たちは学校を目指す。それぞれが、思い描く未来を掴み取ろうとして。

最近のフランスのドキュメンタリーらしい鮮烈で美しい映像と、ハラハラさせられるドラマチックな展開。細かいことを言えば、撮影や編集の妙によってそういう面が綺麗にできすぎていて、ドキュメンタリーと呼ぶにはリアリティに欠けるきらいはある。ただ、それによって子供たちの逞しさやけなげさが損なわれているわけではない。観て感じ取るべきことは、確かに伝わってくる。

この子たちのように教育を受ける環境に恵まれていない子供のサポートに目を向けることは、もちろん大切。でもそれ以上に、何から何まで恵まれた環境にいるがゆえに、学ぶことの意味と価値を見失いかけている子供たちにも、この作品を見てもらいたいな、と思う。

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