近所の木蓮もすっかり散ってしまって、今は桜が満開らしいのだが、今年はまだ桜の花を見かけてすらいない。それまで手こずっていた原稿が夕方までにどうにか形になったので、GR DIGITAL IVをひょいとカバンに入れ、吉祥寺まで歩いて、井の頭公園の桜を見に行った。
吉祥寺の街の中は、閑散と言っていいくらい人が少なかったのだが、駅の南口から公園にかけては、人の波が潮のごとく行き来していた。当然ながら公園の中は、酒とビールの匂いが漂う中、みんな飲めや歌えやの大騒ぎ。それでも、かいぼりの終わった池の周囲をゆっくり歩いてみると、闇の中に薄紅色の霧が漂うように桜が咲いていて、思わず見とれてしまう。
忙しいから、時間がないから、と自分に言い訳して、残りの人生であと何回見られるかもわからない桜を見逃すのは、何だかちょっと寂しいなと思う。時間を見つけて見に行って、よかった。