キャッチボール

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

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年末年始の数日間は、岡山の実家で過ごした。近くに住む妹一家が泊まりに来たりしていたので、なかなか一人でくつろがせてはもらえなかったが(苦笑)。

大晦日の朝、母が僕に「ケン(上の甥っ子)とキャッチボールをしてきたら? あそこの公園で」と言った。その前の日、甥っ子は彼のパパに新しい子供用グローブとボールを買ってもらっていたのだ。

「いや、でも俺が使えるグローブないし」
「あるよ、外の物置に。お父さんのが」

そのグローブは、他界した父が少なくとも四十年前から使っていたものだった。元の色がわからないくらいに色褪せ、革ひもが切れてしまった部分は父が別の適当なひもで繕ってあった。へにゃへにゃで心許ないが、子供が相手なら使えなくはない。僕はそのグローブを手に、生まれて初めてのキャッチボールに舞い上がる甥っ子と、近くの公園へ歩いていった。

甥っ子くらいの年の子供を相手にキャッチボールをするのは、僕にとっても初めての経験だった。甥っ子が投げるボールはしょっちゅうとんでもない方向に飛んでいくし、こっちがゆるく投げ返しても怖がって逸らせてしまうしで、なかなかテンポよくとはいかなかった。それでも時々、スパン、とボールがグローブに収まる乾いた音を聞くと、僕は不思議な気分にならずにはいられなかった。

子供の頃、僕は父と、家の前の道路でキャッチボールをしていた。僕はそんなに運動神経がいい方ではないし、野球もあまり好きではなかったのだが、父とキャッチボールをするのは楽しかった。ピュッ、と投げたボールが、スパン、とグローブに収まる。ただそのくりかえし。でも、その時の感触は、今も記憶の深いところに残っている気がする。

あの時、子供の僕が投げたへなちょこボールを受け止めていた父のグローブを、今は僕が手にはめて、甥っ子のボールを受け止めている。ピュッ、スパン。ピュッ、スパン。甥っ子の心の中にも、このキャッチボールの感触は残っていくのだろうか。

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