冒険家にはなれない

三年前に「ラダックの風息」を出して以来、「ヤマタカさんは、冒険家なんですね!」みたいな扱いをされることがよくある。間違いです。僕は、基本的にはヘタレなのだ。

重いカメラバッグを担いで、ラダックやザンスカールの山の中を歩き回ってはいるけれど、それはサポートしてくれる現地人の仲間がいてこそで、自分一人では、サバイバル能力のカケラもない。確かに、今まで何度か危ない目には遭ったが、それは想定外の悪天候などの要素も絡んでいるし、普段はできるだけリスクを冒さないように行動している。

うまく言えないが‥‥「一か八かの困難に挑戦して、それをクリアする」ことを「冒険」と呼ぶのなら、僕はそういう「冒険」を最終目標にする類の人間ではないのだと思う。僕がラダックやザンスカールの山々に分け入るのは、歩いてしか行くことができない場所にある風景や、動物や、人々に会いたいからだ。頂点に辿り着く達成感より、谷間を歩く愉しさを味わっていたいのだと思う。

なので、僕は冒険家にはなれない。

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