羊毛とおはな「LIVE IN CHURCH」

LRTCD-107_OLCDをトレイにセットし、再生ボタンを押す。イントロのピアノの音が聴こえた瞬間、何もかもすっかり思い出した。あの日のことを。

2014年2月11日、品川教会グローリア・チャペルで行われた、羊毛とおはなのライブ。僕もあの日、あの場所にいた。全身の肌が粟立つほどに圧倒された「Hyperballad」。ジャニス・ジョプリンをモデルにした映画の主題歌「The Rose」。本当に、奇跡のような時間だった。そしてそれが、彼らのライブに接した最後の機会になった。ほどなく、はなさんは療養生活に入り、約一年後の2015年4月に、永眠した。

それからしばらくの間、僕は、羊毛とおはなの曲を聴くことを避けてしまっていた。何というか、自分の中にあるもやもやしたやるせない思いを、うまく整理できないでいたのだ。いくらなんでもそれはないだろう、という、神様に対するささやかな反抗心だったのかもしれない。

でも、今こうして、あの日、あの場所で奏でられた音をこのライブ盤「LIVE IN CHURCH」で聴くことができて、胸の奥につっかえていたものが、ようやく融けていったように感じた。このライブ盤にも収録されている、彼らのレパートリーの中で僕が一番好きな曲「ただいま、おかえり」を聴いた時、目尻に涙が滲んだ。うまく言えないけど、はなさんにやっと「さよなら、またね」と言えるようになった気がした。

このライブ盤は、別れに手渡された、花束のようなものなのだと思う。

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