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夏葉社「本屋図鑑」

夏葉社「本屋図鑑」ここ最近、スタイリッシュで個性的な書店を特集した雑誌や書籍がいくつか出ていたけれど、夏葉社の「本屋図鑑」はそれらとは明らかに違う毛色の一冊だ。この本で紹介されているのは、全国津々浦々、すべての都道府県から選ばれた、普通の街の「本屋さん」。二十坪ほどの小さな店もあれば、郊外の大型店もあり、日本最北端と最南端の店や、三百年も前に創業した店もある。でも、すべての店に共通しているのは、地元の人々の日々の生活に溶け込み、親しまれている「本屋さん」だという点だ。

この本の取材を手がけたのは、夏葉社の島田さんと、編集者の空犬太郎さん。それぞれの本屋さんの成り立ちや、棚作りのこだわり、書店員さんのコメントなどが、淡々と穏やかに、温かみのある文章で紹介されている。得地直美さんが描いたそれぞれの本屋さんのイラストも、その本屋さんの醸し出す雰囲気をじんわりと伝えてくれる。本と本屋さんをこよなく愛する、島田さんらしい一冊だなと思う。

僕自身、小さい頃から本屋さんに行くのは大好きだったし、本好き雑誌好きがこじれて今の仕事を選んだわけだが(苦笑)、本当の意味で街の本屋さんの仕事にリスペクトを抱くようになったのは、単著で自分名義の本を出すようになってからだと思う。雑誌の編集者やライターだった頃は、発売日の頃に店頭で自分が関わった雑誌を見かけても、正直、それほどあれこれ考えたりはしなかった。でも、自分名義の本となると、取り扱ってくれない店ももちろんあるし、入荷していても棚での扱われ方はさまざまだったりする。そうして本屋さんの棚の様子を前よりじっくり観察するようになり、それぞれの本屋さんがどんな意図で棚作りをしているのかを、いろいろ考えるようになった。

洗練された内装や什器を備えた立派な店でなくても、きちんと手入れが行き届いた棚作りをしている本屋さんは、すぐにそれとわかる。そうした本屋さんでは、店内をぶらつきながら背表紙を眺めているだけで、すごく楽しい。そんな書店員さんの日々の仕事の積み重ねがあるからこそ、自分たちが作った本は読者の元にまで届けてもらえるのだということを、忘れてはならないと思っている。

2000年の時点で日本全国に2万店以上あった本屋さんは、今では1万4000店程度にまで減少しているという。本が売れない時代と言われ続けて久しいけれど、僕らはもう一度、家の近所に本屋さんがあることのありがたさを見直してみるべきじゃないかと思う。

本を読まねば

終日、部屋で仕事。昨日取材した分の原稿に取り組む。

執筆や編集の仕事をしていると、日頃の読書量もさぞ多かろうと思われがちなのだが、僕はたぶん、ほかの同業者よりも読書量は少ない。ここ数年は、仕事にかまけてさらに減ってるかもしれない。本棚には、読むのを楽しみに買ったのに、まだ読んでいないハードカバーの本が何冊も並んでいる。我ながら由々しき事態だ。

仕事で原稿を書いてる間は、あまりほかの人の文章を読むのに脳のパワーを使いたくないというのもあるのだが、結局休みの日もズルズル、ダラダラ過ごしてしまってるので、それも言い訳にしかならない。ちゃんと読んであげなきゃ、本も可哀想だ。

明日、雑誌記事のゲラチェックが終わったら、まずは一冊、読破しよう。

トホホな日

今日はひさしぶりに取材の仕事。一件だけなのだが、取材場所が遠い。なんと、山梨県の甲府。三鷹から中央線で立川まで移動し、そこから特急に乗り替えて甲府まで行くことになる。

切符は昨日のうちに買っておいたので、割と余裕を持って駅まで行ったら、中央線が軒並みストップしている。少し前に荻窪で人身事故があったらしい。三鷹まで来ていた下り列車が動くとのことで、とりあえず立川まで移動。乗る予定だった特急をそのまま待ち続けると間違いなく取材に遅刻するので、その時点で一番早く来そうな甲府方面行きの特急に切符を振り替えてもらうことにする。みどりの窓口の長い行列に並んで待ち続け、ようやく切符の変更に成功。その頃には徐々に中央線の運行も復旧し、振り替えてもらった特急(それでも一時間遅れ)に無事に乗れた。

そんなこんなのバッタバタな状態で、予定時刻ギリギリに現場に到着。で、取材自体もいろいろあってバタバタしてしまい、すっかり疲れ果てて甲府駅に戻る。せめて少しでも旅らしい気分を味わおうと、地元の名物らしき駅弁を買い、帰りの列車の車内で食べる。‥‥が、味、ボリュームとも、残念ながら期待はずれ。何だよまったく。

何から何まで、トホホな感じだった一日。やれやれ。

細かい性格

終日、部屋で仕事。スピティとラダックについての雑誌記事は、原稿素材一式をまとめてチェックに回した。今日は九月下旬からのタイ取材の下準備に着手。

この取材では、四週間のうちに、結構びっくりするくらいたくさんの場所を調べて回る。下準備では、まずは旅程全体を通じて、街から街へとどうやって移動して、どこに泊まって、どんな風に取材を進めるかを、できるだけ細かく確認していく。特に、大きな街では、調べなければならない宿や店舗の数が膨大なので、地図を見て場所を確認しながら、どういう順番で回っていけば無駄なく効率よく回れるかをシミュレートする。

いやー、細かいなあ。なんて細かい性格。我ながらちょっと嫌になる(苦笑)。出たとこ勝負でがつーんと行けばいいじゃん、と正直思わなくもないのだが、何しろ取材項目が本当に途方もない数なので、少しでも効率化を図ってリスクを減らすしかないのだ。準備不足でくだらないミスをしたら、それこそ依頼元に申し訳ないし。

そんなわけで、これからしばらくの間、ちまちまと細かい作業を続ける。

大事なものは面倒くさい

今日もずいぶん涼しくて、過ごしやすい。終日、部屋で原稿を書く。

今回の原稿も、全体の形はだいぶ整ってきた。とはいえ、細かい部分の煮詰め具合はまだまだ。耳ざわりのいいきれいな言葉より、シンプルで端的な描写。文字数の制約もあるのでなかなか難しいけれど、それでも少し間を空けては見直して、修正をくりかえしていく。

夜、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の宮崎駿監督特集を見る。絵コンテで壁にぶち当たって苦しむ監督が、「大事なものは、たいてい面倒くさい」と呟いていたのが、心に刺さる。そう、面倒くさいのだ。ものづくりにしろ、他の仕事にしろ、面倒くさい部分を避けていたら、何の意味もないし、もちろんいい結果も出ない。

今の自分も、思うようにならずに苦しんでいるうちは、まだ恵まれているのかもしれないな。