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自分で蒔いた種

ここしばらく、本当に忙しい。毎年この時期が繁忙期の大学案件の取材は、今週だけで6件。来週は今のところ2件だが、再来週は一気に11件もやる可能性がある(汗)。書いても書いても終わらない、賽の河原状態。

Web連載の原稿も4月以降の分を書き進めなければならないし、ラオスの写真記事を雑誌に寄稿することになったのでその原稿もある。日曜の夜はタイ写真展の設営。木曜の朝はジュンク堂でのラダック写真展の設営。来週土曜はモンベル渋谷店でのトークイベント。5月下旬と6月にもそれぞれ別のトークイベントをやることになったので、それらの企画書の準備も。いやはや、まじでやばい。

でも、これも半分くらいは、自分で蒔いた種だ。こう書いてふと思ったのだが、「自分で蒔いた種」という言葉の感じそのものは、そんなに悪くはないな、と。自分自身で土を耕して蒔いた種が、春になって芽吹く。うん、悪くない。

とりあえず、うっかり限界を超えてしまわないように、気をつけます。

長生きする本を

午前中に打ち合わせを一件こなした後、八丁堀の出版社へ。用事のついでに、印刷所から届いたばかりの「ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]」の見本誌を受け取る。印刷の具合、なかなかいい感じ。今夜はこれから、パタゴニアのロングルートエールとワイルドピンクサーモンで一杯やろうと思う。自分で書いた本の、届きたての見本誌を眺めながら飲む酒ほど、この世で旨い酒はない(笑)。

僕はなぜ、本を作る仕事が好きなのだろう、と以前考えてみたことがある。それはたぶん、きちんと丁寧に作った本は、僕よりもちょっとだけ長生きしてくれるから。僕という人間はどうあがいても、あと2、30年後にはこの世からいなくなる。でもおそらく、僕の作った本たちは、どこかの家の本棚や、図書館の片隅や、あるいは誰かの記憶の中で、僕よりも少しだけ生き延びてくれる。今回作った本も、何十年も経ってしまえばさすがにガイドブックとしての機能は果たせなくなるだろうけど、それでも一冊の本として、長い時を経ても読むに耐えるものを作ったつもりだ。

まあ、そうはいっても本もしょせん印刷された紙の束でしかないから、いつかは朽ちて土に還るだろう。宇宙的なスケールで考えれば、一人の人間がその人生を通じて世界に残せる痕跡なんて、取るに足らない芥子粒みたいなものでしかない。それでもやっぱり、僕は本を作るのが好きだ。自分の作った一冊の本が、誰かの心をほんのちょっと動かしたり、誰かの背中をほんのちょっと押したりすることを、願っている。今までも、これからも。

近づく幕切れ

週末から今日にかけては、ほぼずっと、今作っている本の色校をチェックしていた。印刷会社さんが頑張ってくれたおかげで、現時点でも色の出方は、かなりいい。本紙で刷る時もこの調子で出せれば、初版よりずっとレベルアップした仕上がりになると思う。見本誌を手に取るのが今から楽しみだ。

……と同時に、ちょっと寂しくもある(苦笑)。本を作っている間は、やっぱり、とても楽しいから。自分の頭の中で思い描いているもの、伝えたいこと、それらをあらんかぎりの工夫を凝らして、紙の束の中に封じ込めていく作業。作っている間、自分の手の内には、無限に思えるほどの可能性の選択肢があるような気さえしてくる。

でも、まあ、幕切れは必ずやってくる。本ができあがった時、自分の選択が正しかったか、それとも単なる独りよがりだったか、答えはおのずとわかるはず。これだけ何冊も作ってきていても、いまだに自信は持てないけれど。

まあいいや。幕切れの時間まで、本づくりを精一杯、楽しもう。

隙間の時間

午後、赤羽で取材。諸事情で手こずった昨日に比べると、今日は相手の方にも助けられて、とてもスムーズに進められた。話が盛り上がりすぎて、収録後の撮影が押してしまいそうになる寸前で、さりげなくまとめることもできたし。誰もそのテクに気付いてないし、ほめてもくれないけど(笑)。

三鷹には夕方の早い時間に着いたので、すぐに家に帰って、パスタか何か適当に晩飯を作ってから昨日今日の原稿に取りかかるつもりでいたのだが、ふと思いとどまって、喫茶店に入る。マンデリンを1杯注文し、読みかけの文庫本を取り出して、1時間くらい、ゆっくりと読む。

何てことのない1時間だったのだが、緊張していた神経が、ゆるゆると解きほぐされた気がした。人間には、こういう隙間のような時間が必要だ。テトリスみたいにすべてを追い込んでいくと、たいてい、ろくなことにならない。

三寒四温と言われても

いきなり、時間が真冬に巻き戻ってしまったかのような寒さ。雨とも言えないほどの小さくて冷たい雫が、ぽたり、ぽたりと、ジャケットの表面で音を立てる。

午後、調布で大学案件の取材。割とすぐに終わるはずが、先方の都合などで思いのほか長引いた。終わった頃にはすっかり真っ暗。あいかわらず雨は冷たい。駅前で煮干しラーメンを食べ、ちょっとほっとしてから、出発間際の三鷹行きバスに飛び乗る。何だろう、今日はそんなにたいしたことないはずなのに、妙に疲れている。

明日の午後も大学案件の取材だ。今年もまたこの季節がやってきたなという感じ。自分の新刊の校了作業もこれからだし、うっかり体調を崩さないように、気を引き締めていこう。