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「Dangal」

2016年末に公開されて以来、インドのみならず世界各国で大ヒットを記録した、アーミル・カーン主演の映画「Dangal」。日本国内でも今年の春先に公開されたのだが、配給元の宣伝手法に関して個人的に許せない点がいくつかあったので、抗議の意味も含めて、日本ではあえて観に行かなかった。で、夏にエアインディアに乗った時、機内でようやく全編に目を通した次第。

マハヴィールは才能に溢れたレスラーだったが、経済的な理由でレスリングの道をあきらめざるを得なくなる。「息子が生まれたら、その子をレスラーに育てて自分の夢を託そう」と思い立つが、生まれてくるのは女の子ばかり。ところがある日、長女ギータと次女バビータが近所の男の子たちをケンカで叩きのめすほど腕っぷしが強いことがわかり、マハヴィールは彼女たちをレスラーに育てようと決意する……。

実在の親子をモデルにした作品ということもあるが、(日本の配給会社がしゃにむにその方向で推そうとしていた)スポ根映画として見れば、物語はとてもシンプル。試合のシーンはリアルに作り込まれているが、話の展開自体は、ある程度先が読めてしまう。

ただ、この作品の本当の価値は、インドの、特に田舎における女性の社会的地位の低さと偏見についての指摘と、そうした女性たちも自らの意思で人生を選べるようになるべき、という提言にあるのではないだろうか。アーミル演じるマハヴィールは、自分の夢を娘たちに押し付けたというより、娘たちがレスリングを礎として自らの人生を切り開くための手助けをしたのではないか、と僕は感じた。

この映画は、「女性の自立」という視点で観るべきだと思う。

東京とデリーの暑さの違い

ひさしぶりに東京に戻ってきて驚いたのは、今年の夏の暑さ。今日は最高気温は37℃にまで達したらしい。同じ今の時期のデリーの最高気温より、3、4℃は高い。それでも今の時期の東京とデリー、どっちが過ごしやすいかと訊かれたら、やっぱり東京の方がましかも、と答えると思う。

暑さだけでなく、湿気の多さという点でも、東京とデリーはどっこいどっこいだと思う。ただ、東京が比較的単純な蒸し暑さなのに対して、デリーの蒸し暑さは、何というか……澱んでいる。ざらざらした土埃とか、まともに濾過されてない排気ガスとか、けたたましいクラクションとか、ぶつかりそうになりながら(そして時々ぶつかりながら)行き来する車やオートリクシャーとか。空はビニールハウスのように薄い雲の層でぴっちり覆われていて、ぎらつく日差しが容赦なく降り注ぐ。クーラーの効いてる店は数えるほどだし、停電は日常茶飯事。暑さから逃れられる場所は、とても少ない。

だから僕は、夏の東京とデリー、どっちかましかと訊かれたら、東京と答えると思う。どっちが面白いかと訊かれたら……まあ、わからないけど。

旅の中で読んだ本

昨日の午後、予定通りに帰国した。長い待ち時間と移動時間でほとほと疲れたが、一晩ぐっすり寝て、今日はすっかり回復。毎度のことながら、時差ボケに悩まされない体質に生まれてよかったなあと思う。

この夏の旅で経験した出来事については、気が向いたらそのうち書くとして、とりあえず、今回持って行った2冊の本についての簡単な感想を。

1冊は、ジュンパ・ラヒリの短編集「停電の夜に」。彼女の本で最初に読んだのは「低地」だったのだが、その繊細な描写力と緻密な構成、圧倒的な完成度に、ほとんど打ちのめされたといっていいほどの衝撃を受けた。「停電の夜に」は彼女のデビュー作なのだが、これでいきなりピューリッツァー賞を受賞している。今回の旅の途中、デリーからサンフランシスコに向かう機内には、米国で暮らしているらしいインド人が大勢乗っていたのだが、米国育ちのインド人である彼女の創作のルーツは、こういう人たちと共通する部分にあるのだろうな、と思った。

もう1冊は、ブルース・チャトウィンの「パタゴニア」。実は、彼の代表作「ソングライン」を僕はまだ読んでいないのだが(ハードカバーは分厚くて重いので、文庫化されたらそれを旅先に持って行こうとずっと思っていたのだが、なかなか文庫化されないまま、幾星霜……)、巻末の解説で池澤夏樹さんが書かれていた、「ソングライン」が優等生の弟なら、「パタゴニア」はわんぱくな兄という形容は、個人的にものすごくしっくりくる。パタゴニアにまつわる大小の逸話を無数にちりばめた、天衣無縫なスタイルの旅行記。こういうやり方もあるのか、と個人的にすごく参考になった。

どちらも、とても良い本だった。おすすめ。

そしてまた旅へ

明日からの旅に備えて、荷造りの仕上げ。撮影機材をカメラザックに詰め、携行品リストと突き合わせて最終確認。やっぱり尋常じゃない重さになってしまったが(苦笑)、まあ仕方ない。ラダックに着くまでの辛抱だ。

こうして旅に出る準備をするのも、もう思い出せないくらいの回数になるけども、いつまでたっても慣れないというか、大事なものをうっかり忘れてしまってないか、といつも思ってしまう。まあ、大事な仕事絡みの旅だし、万が一にもミスを犯してはならないから、このくらい心配性でいる方がいいのかもしれない。

次に東京に戻ってくるのは、8月23日。それまでこのブログの更新もお休みします。では。

のしかかる重荷

出発が来週明けに迫ってきたので、旅の荷造りをぼちぼち始める。

今回は7月から8月上旬までラダック、8月中旬から下旬にかけてアラスカという、我ながらよーやるわというレベルの長丁場の旅で、気候もかなり違う。アラスカは8月でも時に雪が積もるほど寒くなるし、目的地には北極圏も含まれるからだ。キャンプ道具は今回不要とはいえ、両方の土地に対応するための装備は、いつも以上に膨れ上がる。

手持ちのバッグの中で一番大きなグレゴリーのスタッシュダッフル95リットルでも、荷物を一通り詰めてみると、ほぼぎっしりになってしまった。今の日本で防寒着は身につけられないので全部バッグに詰めているからというのもあるが、それでもここまで膨れ上がるとは。しかも、異様に重い。担いでみると、今までの旅の荷物でも経験のないレベルの重さだ。これは……。

わかった。本だ。見本誌だ。

ラダックでの取材でお世話になった方々に配るための「ラダック ザンスカール スピティ[増補改訂版]」が、梱包された状態で、12冊。そりゃ重くなるわ(苦笑)。試しに本の包みを取り出してバッグを担ぎ直してみたら、割と普通に担げるレベル。ラダックに着いてこの本たちを配り終えれば、その後は何とかなりそうだ。

……ラダックに着くまでに、腰が抜けなきゃいいけど……なぜなら、このダッフル以外に、望遠レンズの詰まったカメラザックもあるので……(汗)。