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「ROMA / ローマ」


GW中に、アップリンク吉祥寺で「ROMA / ローマ」を観た。アルフォンソ・キュアロン監督が製作・脚本・撮影・編集など、一人何役もこなして生まれた作品。ヴェネツィアやゴールデングローブ賞、アカデミー賞などでの数々の受賞歴についてはもちろん耳にしていたが、それ以前に、予告編や劇中のスチルを目にした時、「これは、見届けておかなければならない」という、言葉にはできないけれど、ただならぬ気配のようなものを感じていた。

タイトルの「ROMA / ローマ」は、メキシコシティにあるローマ地区のことを指しているらしい。同じくメキシコシティで生まれ育ったキュアロン監督自身の体験を基にした物語。主人公のクレオは、4人の子供を持つ医師夫妻の家で住み込みで働く家政婦。静かに、淡々と映し出されていく日常の中に、寄せては返す波のように、少しずつ変化が起きていく。驚くほど豊かな階調のモノクロームの映像。長回しを多用しながらも完璧にコントロールされた構図とタイミング。ほんのわずかな響きまで繊細に録音された環境音。これ以上ないほどシンプルに研ぎ澄まされた、奥深い作品だった。

映像に限らず、文章や写真など、何らかのものづくりに携わる人がこの作品を観たら、ある意味、くやしい気分になるのではないだろうか。僕自身、ちょっとくやしかった(苦笑)。よし、がんばろ。

一山越えて

先週土曜は、モンベル御徒町店での「LADAKH LADAKH」刊行記念トークイベント。司会進行役を務めさせてもらったのだが、はたしてうまくいったのだろうか……その判断はお客さんに委ねるしかないけれど。個人的には、イベントの最後におまけで流させてもらった、自分の写真のスライド動画(この間、冬のラダックで撮ってきた写真)の時が、一番緊張した。最後の最後で、場がしらけてしまわないかと心配で心配で(苦笑)。

終了後、神田の居酒屋で関係者だけでの打ち上げ。そこでIPAビールをしこたま飲み、二次会は角田明子さんのスタジオで、朝までコース(苦笑)。ひさびさにやらかしてしまった……二日酔いにならなかったのが奇跡なくらい。まあでも、愉しかったなあ。出演者と関係者の方々にも喜んでもらえて、よかったと思う。

……と、いつもの年なら、ここでめでたしめでたしというところなのだが、今年は違う。5月は中旬に大阪でまたイベントがあるし、その後は吉祥寺で写真展もある。一山、越えはしたけれど、まだまだ先がある。がんばらねば。

持ち時間

昨日は昼の間に散髪に行ったり、いくつか用事を片付けたりして、夕方から下北沢のシェアオフィスで、今年から関わっている企画の打ち合わせ。

この間のインドでの取材の(国際情勢に振り回されまくった)後半戦は、主にこの企画に関わるものだった。諸事情でなかなか実作業に取りかかれずにいたのだが、昨日の打ち合わせでいろいろクリアになって、ようやく着手できそうな段階にまで漕ぎ着けられた気がする。それを受けて、今日は家で写真のRAWデータの現像作業の続きをしていたのだが、あらためて冷静になって考えてみると、自分の持ち時間、全然ないな、と気づく。

インドのこの企画の他に、僕個人がこれから書こうとしている本の企画もあるし、5月中旬は大阪でイベント、6月上旬は吉祥寺で写真展(僕自身は出展しないけど)。6月下旬から8月初旬までは、主にガイドの仕事でまたインド。10月はまるまるタイ。その合間に国内での仕事が差し込まれたら、時間、ない。全然ない。

目の前にあるものを一つずつ、かたっぱしから、やっつけていくしかないか。まずは、明日のモンベル御徒町店でのイベントだ。

本づくりの縁

一昨日、昨日と、「LADAKH LADAKH」の色校戻し作業。昨年夏のラダック取材から始まったこの本の制作も、どうにか校了にまで漕ぎ着けた。肩の荷が下りてほっとしたのと同時に、僕自身にとって一番の愉しみである本づくりの作業が終わってしまったので、ちょっと寂しくもある。

今回の本づくりでは、いつにも増して、大勢の方々に協力していただいた。以前別の仕事を通じてご縁のあった方もいれば、まったく別のきっかけで今回新たにご縁のできた方もいる。一冊の本を作る過程で、こんなにもたくさんの縁が繋がり合うというのは、考えてみると不思議なことだ。

僕という人間は基本的にまったく社交的ではなくて、人付き合いもどちらかというと苦手なのだけれど、本づくりを通じて繋がっていく縁で、いつも大勢の人々に支えてもらっているのだと、あらためて気付く。少しでも良い本を、一冊でも多く作って、そうした縁に報いていかなければ、と思う。

脇腹が寒い

インドに2カ月行っている間に、体重が約4キロ減った。

今回の旅、特に前半は極寒の冬のラダックでの滞在だし、体力的にかなりきついことをくりかえす日々が続くのも以前からわかっていた。なので、2年くらい前から時間をかけて、いったん体重を減らしてから自重筋トレで筋肉の増量を図るという身体づくりをしてきた。そのトレーニング自体は、割とうまくいったと思う。現地でも重い撮影機材を背負いながら深い雪の中を歩き続けることができたし、長時間歩き続けても体幹がへばってきつくなったりせず、以前傷めたことのある両膝もまったく大丈夫だった。

ただ、いかんせん、冬のラダックは寒い。1日の最高気温は氷点下、最低気温はマイナス15〜20℃という世界。外界とを結ぶ陸路が雪で塞がっているので、日々の食べ物の選択肢も限られる。食事では、肉や野菜、そして寒さをしのいで身体の筋肉も維持するだけのカロリー自体が足りなかった。きつい取材を毎日くりかえすうち、内臓脂肪も皮下脂肪もすっかり落ち、両方のあばら骨の下はごそっとえぐれてしまった。寒い場所に行くと、両脇腹がぞくぞく冷えて、落ち着かない。やせると脇腹が寒くなるのだということを僕は学んだ(苦笑)。

日本に戻ってきてからは、朝昼晩と規則正しく、そして意識的に多めに食事を摂るようにしている。まずはカロリー。そしてタンパク質。自宅での自重筋トレも再開しているが、自分でも笑ってしまうくらい、筋力が落ちている。身体の各関節はしっかり動かせるものの、筋肉が細まってしまっていて、去年までのようなパワーや持久力が出せない。また、じっくり、じわじわ、怪我をしないように身体を作り直していくしかないのだろうな、と思う。