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「ムトゥ 踊るマハラジャ」デジタルリマスター版

「バーフバリ」効果で日本国内でのインド映画の需要が高まっているからなのか、なんと今、「ムトゥ 踊るマハラジャ」が再びスクリーンで公開されている。しかも、オリジナル・ネガからの4Kスキャンと修復、さらにオリジナル音源からの5.1chデジタルリミックスが施された、最新のデジタルリマスター版である。これは劇場で見届けておかねばと、新宿ピカデリーに観に行ってきた。

日本で初めて公開されてから、今年で20年。当時は、確か年末のテレビ放送か何かでちょこっと観たくらいだったと思う。4Kで現代に甦った映像はびっくりするほど鮮やかで、ミーナのまとうきらびやかな衣装は眩しいくらいに燦然と輝いていたし、ラジニ様のアクションシーンも土埃が感じられるほど生々しい。リミックスされた音響と相まって、まるでついこの間公開された映画を観ているかのようだった。

まあ、さすがにカメラワークやカットのつなぎなど、細かい部分に牧歌的な古さはあるのだが(それもまた良い味わいなのだが)、何十台もの馬車でのチェイスシーンなど、今の時代にCGで表現しても全然追いつけないような迫真のシーンも多い。物語の進行も、笑いどころ、泣きどころ、キメどころと、良い意味での「おやくそく」がまんべんなく詰め込まれている安心感がある。主人公のムトゥはシュッとしたイケメンではないし、筋骨隆々のマッチョマンでもないけれど、気がつけば、彼が全部持っていく。やっぱり、さすが、スッパルスター・ラジニカーントである。

写真展の設営

昨日は夕方から綱島ポイントウェザーへ。11月20日(火)から始まる写真展「Thailand 6:30 P.M.」の設営に行った。

今年の春に三鷹で開催した展示から、写真をさらに10枚ほど増やして再構成。当初はパネルを壁に細い釘を打って固定しようと思っていたのだが、釘打ち音をさせるとお店の2階の住人から苦情が来るらしく(苦笑)、ネジフック(ヨートとヒートン)でパネルを壁に吊るすことにした。

枚数が枚数なので、事前にFacebookで、近隣の知り合いで設営を手伝っていただけそうな方を募集したのだが、なんと、4人もの方々にお越しいただけることになった。しかも、大先輩の庄司康治さんや、松尾純さんのお兄様の松尾洋さん、以前ヌブラ取材の際にお世話になった岩井さんご夫妻と、こちらが申し訳なくなるような方々が。みなさん、設営作業をものすごくテキパキと進めてくださって、僕が周囲でアワアワしてるうちに、2時間もかからずに設営完了。終電間際までかかると思っていたので、本当に助かった。

重ね重ね、ありがとうございました。そんなこんなで写真展「Thailand 6:30 P.M.」、いよいよ始まります。12月2日(日)まで。

「バジュランギおじさんと、小さな迷子」

2015年に公開されて以来、インドだけでなく世界各国でも大ヒットを記録した映画「Bajrangi Bhaijaan」。僕もずっと観てみたいと思い続けていたのだが、サルマン・カーンの出演作はほぼ必ず用意されているエアインディアの機内上映でも、なぜかまったくかからない。知人の一人が、この作品を買い付けて日本で公開することを目指してインドで交渉に臨んだものの、価格が折り合わずに断念したという話も聞いていた。もう観ることのできる機会はないのかな……とあきらめかけていたところに、2019年1月から「バジュランギおじさんと、小さな迷子」という邦題で公開されることが決まったとの報せが。件の知人経由で試写会のお誘いをいただいたので、ひと足先に拝見してくることにした。

超がつくほど信心深くて正直者のヒンドゥー教徒、パワンは、とりわけハヌマーン神を熱心に崇めていることから「バジュランギ」(ハヌマーンの別称)と呼ばれている。学業でなかなか芽が出ずに苦労したが、今は亡父の友人ダヤーナンドの家に居候しながら、彼の娘ラスィカーとの結婚を認めてもらうべく、日々仕事に精を出している。そんな彼の前に、一人の迷子の少女が現れる。口をきくことのできないその少女、ムンニを、とりあえず預かることにしたパワン。ところが、ひょんなことから、ムンニがパキスタン人であることがわかってしまう。うろたえたパワンは、ムンニを故郷に送り届けるためにパキスタン大使館や怪しげな旅行会社と掛け合うが、ことごとくうまくいかない。とうとう彼は、パスポートもビザも持たないまま、自らムンニをパキスタンの故郷に送り届けることを決意する……。

ド直球な映画である。構成はとてもシンプルで、時間軸が前後するのはパワンが自らの生い立ちを語る場面くらい。観る者の予想を大きく覆すような展開もなく、たぶんこうなるのかな、という結末に向かって、物語はまっすぐに進んでいく。……なのにどうして、こんなにも、胸にぐっとくるのだろう。観終わった後、体温が2℃くらい上がったのではと思うほど、身体が火照っているのを感じた。こんな風に感じられる映画、なかなかない。

この作品は、「壁」を越えていく物語なのだと思う。国と国との間にある壁。異なる宗教を信じる者との間にある壁。パワンはムンニの手を携えながら、愚直すぎるほど真正面から、一つひとつの壁を越えていく。それは、時に頑ななまでに自らの信仰に囚われていた彼自身が、見知らぬ世界を旅することで解き放たれていく物語でもあった。そんな「バジュランギ兄貴」の旅は、人が人としてまっとうに生きるために本当に大切なことは何なのかを、インドとパキスタン双方の人々の心に呼び覚ましていく。

そう、原題「Bajrangi Bhaijaan」の「バイジャーン」は、「兄貴」という意味なのだそうだ。だから「バジュランギおじさん」よりも「バジュランギ兄貴」とした方が、原題のニュアンスに近い。劇中で「バイジャーン」と聞こえたら、脳内で「兄貴」と変換しながら観るといいと思う。そうしたら、たぶん、ひと味違う感動を味わえるはずだ。特に、あの場面で。

写真展「Thailand 6:30 P.M.」


今年の春先に三鷹のリトルスターレストランで開催した写真展「Thailand 6 P.M.」の拡大バージョンを、綱島のポイントウェザーで開催させていただくことになりました。今回のタイトルは「Thailand 6:30 P.M.」。これまで未公開の写真や今年のタイ取材の際に撮りおろした写真など、約10枚を追加して、展示内容を再構成します。会期は、11月20日(火)から12月2日(日)まで。ご興味をお持ちの方は、ぜひご来場いただけると嬉しいです。

以下、写真展のご案内です。

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山本高樹 写真展「Thailand 6:30 P.M.」

太陽が西に傾き、昼間のうだるような暑さが消えて、暮れ色の空に夜のとばりが下りてくる頃。タイの街は、その素顔を僕たちに見せてくれる。ささやかな電球の灯りの下で交わされる笑顔と、にぎわいと、ちょっぴりの寂しさと。2018年春の東京・三鷹での展示内容に、未公開&撮り下ろし作品を大幅に追加して再構成した写真展。

会期:2018年11月20日(火)〜12月2日(日)
会場:Point Weather
神奈川県横浜市港北区綱島西1-14-18
http://www.pointweather.net/
時間:火曜〜日曜11:30〜21:00 月曜休
料金:無料(会場が飲食店なので、オーダーをお願い致します)

「Newton」

タイ取材のために羽田を飛び立って、台風24号の暴風の余波に揺れる機内で観たのは、インド映画「Newton」。「クイーン」などで独特のトボけた味の演技を見せている個性派俳優、ラージクマール・ラーオの主演作。海外の映画祭などでも話題になっていた作品だったので、観てみることにした。

舞台はインド中部チャッティースガル州のジャングル地帯。毛沢東派の武装勢力が支配するこの一帯には、わずかながら先住民が暮らす村々がある。公務員で生真面目な性格のニュートンは、このジャングル地帯で実施される選挙管理員に自ら志願する。何かにつけて非協力的なインド軍の護衛を受けつつ、現地に赴いたニュートンは、同僚や現地の協力者とともにどうにか投票を実施させようとするが……。

インドの、それも辺境中の辺境での選挙という、かなり特殊なテーマの作品。ミニマルな世界ゆえに、インドの政治や社会の実態(主にダメな部分)がよ〜く表れていたように思う。頑ななまでに杓子定規な主人公ニュートンのふるまいは、時に滑稽ですらあるのだが、それがかえって現実の異様さ、滑稽さ、そしてむなしさを際立たせている。

いつ、どこからゲリラが出没するかわからない、というチリチリした緊迫感をはらみつつ、物語は小さな笑いを交えながら淡々と進んでいく。このまますーっと終わるのかな……というところで、思いがけない展開が、どん、さらにどん、と。何とも言えない後味の残る、不思議な映画だった。