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大阪と京都へ

先週末は、大阪での「LADAKH LADAKH」刊行記念トークイベントだった。

金曜の朝に日野駅に集合し、レンタカーのハイエースに売り物の本を積み、東京組の関係者一同が同乗して、出発。途中、浜松のあたりのサービスエリアでおひるを食べ(桜海老のぶっかけうどんを食べたのだが、めっちゃうまかった)、夕方17時過ぎに大阪着。会場に本を搬入し、ホテルで他の関係者と合流。心斎橋からなんばまでぶらぶら歩き、そこから鶴橋に移動して、空という有名なホルモン焼肉屋さんで宴会。ホテルに戻ってからも遅い時間まで酒を飲みながら写真談義。大阪に来た本来の目的をうっかり忘れそうになるほど(笑)。

土曜は昼過ぎからトークイベント。おかげさまで大阪でも本当に大勢のお客さんにお越しいただいて、ありがたいかぎり。トーク自体もいい感じで盛り上げることができて、ほっとした。撤収完了後、関係者は現地解散。ハイエースですぐ東京に戻る組を見送り、僕は金曜と同じホテルで一人でもう一泊。金龍ラーメンでチャーシューメンを食べ、わなかでたこ焼きを買って、部屋でビールと一緒にいただいた。東京と大阪、どうにか無事に終えられたという、安堵感。

日曜は午前中に宿をチェックアウトして、京阪本線で京都へ。「LADAKH LADAKH」の取り扱いを打診しに何軒かの書店にご挨拶に伺い、その後はイノダコーヒー本店でビーフカツサンドのおひる。で、午後半ばの新幹線で東京に戻ってきた。

帰りの新幹線に乗ったあたりから、鼻がぐすぐすしはじめて、一晩明けてみると、のども何だか腫れぼったい。ひさしぶりに風邪をひいてしまったようだ。まあ、無理もないか。結構な強行軍だったし、土曜は司会役で3時間しゃべりっぱなしだったし。気合いで治して、仕事に復帰することにしよう。

エディトリアル・ライティング

最近は、自宅に籠って書き仕事をしていることが多い。先日、来年の出版が決まった自分の本の原稿ではなく、その前に片付けなくてはならない、インド関係の本の原稿。僕一人で書くわけではないので、著作と呼べる類の本ではないけれど。

この本の原稿には、写真やら地図やら、いろんなパーツが各ページに挿入されるので、1ページずつレイアウトラフを描いて、それぞれのパーツをどこに入れるのかを決め、それによって本文の文字数の上限がどのくらいになるのかを計算する。で、計算した文字数に合わせて文章を書く。編集と執筆の両方を同時進行で進めているような書き方。こういうのをエディトリアル・ライティングと呼ぶのだろうか。

こういう作業をしてると人に話すと、たいてい「よくそんな細かいことやりますねえ」みたいに呆れられるのだが、僕は地味で単調で細かい作業が好きなのだ(笑)。資料を突き合わせて情報を照合しながら、決めておいた文字数に合わせつつ、現地の事情をちゃんと理解している人間が情報を咀嚼して書いている、とわかってもらえるような文章に仕上げていく。読者には、制作の裏で僕が何を考えながら書いているか伝わらないとは思うけど、それでもやっぱり、書くのは、編集するのは、愉しい。本づくりを仕事に選んで、よかったなあと思う。

「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」

先週に引き続き、アップリンク吉祥寺で映画鑑賞。Webで情報を見て気になっていた「ビル・エヴァンス タイム・リメンバード」を。ジャズを聴く者なら誰一人知らぬ者のないピアニスト、ビル・エヴァンスの生涯をふりかえるドキュメンタリー。

全編にわたってエヴァンスの曲が流れ続ける、とても贅沢な映画。アップリンク吉祥寺の音響設備のよさとあいまって、どっぷりと彼の音の世界に浸らせてもらえる。当時の証言者として登場する人々も錚々たる顔ぶれで(映画の完成時には亡くなっていた方々も多かったそう)、徹底的に真摯に作られたドキュメンタリーだった。

エヴァンスの生涯について、僕はおおまかな出来事は知っていたものの、この映画を通じてあらためて俯瞰してみると、本当にしんどい出来事の連続だったのだな、と思う。どうしようもなかった出来事もあれば、文字通り自業自得だった出来事もあり。一緒に観に行った相方が「天才って本当に大変だねえ」と言っていたのだが、才能がありすぎて、感性が繊細すぎて、自分に正直すぎて、ああなっちゃったのかもな、と思ってしまった。

それでも彼の音楽は、今もなお、世界中の人々に愛されている。僕の手元にも、CDが5、6枚はあったかな。ひさしぶりにゆっくり聴いてみよう。

PayPalで不正利用トラブル

生まれて初めて、VISAデビットカードを不正利用されそうになった。正確には、僕が以前作ったPayPalのアカウントに、何者かが不正にアクセスして、勝手に買い物をしようとした、ということだが。

今日の夕方、PayPalから「○○へのお支払いは承認されました」という謎のメールが来て、その後VISAデビットカードの口座に1万5000円ほどの請求があったとの知らせ。どうやら、僕はフランスの化粧品メーカーからやたら高いクリームか何かを買って、それをドイツのハノーバーにいる誰かさんに送る手筈にしたらしい(苦笑)。

すぐにカード機能を一時停止にして、銀行の関連窓口に電話して相談し、カードを再発行してもらうことに決定。その後、PayPalのカスタマーセンターとも電話がつながり、すぐに不正アクセスによる事案と認定してもらえた。アカウントはPayPalの方でブロックしてもらって、一段落したらアカウント自体を削除する方向で調整。金銭的な実害はまったく出なかったので、ほっとした。自宅にいるタイミングですぐに対応できて、よかった。これがもし、海外取材中の出来事だったとしたら……想像するだに恐ろしい。

僕自身、PayPalのアカウントはまったく使っていなかった。今年初めにデリー空港のプラザプレミアムラウンジを予約する時、PayPalでの支払いが必要ということでアカウントを作ったのだが、それ以来アクセスもしていなかった。二段階認証の設定をちゃんとやっておけばよかった……油断していた。ちなみにデリー空港のプラザプレミアムラウンジ、操作画面がやたらまぎらわしいので気付かなかったのだが、よくよく見ると、PayPalのアカウントを作らなくても普通にカードで直接予約ができる仕様だったことが判明(苦笑)。何だったんだ、今回の苦労は……。

それにしても、PayPalのカスタマーセンターの担当者と電話で話した時、おそらく外国の人(会社のあるシンガポールの人かも)だと思うのだが、特有のイントネーションながらも完璧な日本語で、ものすごく丁寧かつフレンドリーに応対してくれたのが印象的だった。「同じようなご相談が、今日の午後だけで何件も来てます!」とか、そんなこと言っていいのかよ、とも思ったが(笑)。

「PayPal 不正」で検索したら、最近同じようなトラブルに遭遇している人のツイートが山ほど見つかった。中には、僕とまったく同じ「フランスの化粧品の高いクリームを買ってハノーバーに配送させられそうになった」人もいた(苦笑)。これだけやられまくってるってことは、たぶんPayPalのシステム自体の弱点を突かれてるのだろうと思う。カスタマーセンターに優秀な人材を置くことは大事だけど、その前にシステムのセキュリティをちゃんと改善してほしいものだ。まあ、僕のアカウントはまもなく削除するつもりだけど。

今現在、PayPalのアカウントを持っている方は、とりあえずログインして、変な痕跡がないかどうか確認した方がいい。二段階認証の設定をしていない人は、すぐに設定を。ほとんどPayPalを使っていないという人は、アカウント自体を削除しておいた方が無難だと思う。みなさんも、ハノーバーにバカっ高いクリームを送らされたりしないように(笑)、気をつけて。

「ROMA / ローマ」


GW中に、アップリンク吉祥寺で「ROMA / ローマ」を観た。アルフォンソ・キュアロン監督が製作・脚本・撮影・編集など、一人何役もこなして生まれた作品。ヴェネツィアやゴールデングローブ賞、アカデミー賞などでの数々の受賞歴についてはもちろん耳にしていたが、それ以前に、予告編や劇中のスチルを目にした時、「これは、見届けておかなければならない」という、言葉にはできないけれど、ただならぬ気配のようなものを感じていた。

タイトルの「ROMA / ローマ」は、メキシコシティにあるローマ地区のことを指しているらしい。同じくメキシコシティで生まれ育ったキュアロン監督自身の体験を基にした物語。主人公のクレオは、4人の子供を持つ医師夫妻の家で住み込みで働く家政婦。静かに、淡々と映し出されていく日常の中に、寄せては返す波のように、少しずつ変化が起きていく。驚くほど豊かな階調のモノクロームの映像。長回しを多用しながらも完璧にコントロールされた構図とタイミング。ほんのわずかな響きまで繊細に録音された環境音。これ以上ないほどシンプルに研ぎ澄まされた、奥深い作品だった。

映像に限らず、文章や写真など、何らかのものづくりに携わる人がこの作品を観たら、ある意味、くやしい気分になるのではないだろうか。僕自身、ちょっとくやしかった(苦笑)。よし、がんばろ。