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事実を知り、事実を伝える

以前、別のエントリーで言及した「TRANSIT」のチベット特集号の件で、早稲田大学の石濱裕美子先生が、ご自身のブログに書評を掲載されていた。

白雪姫と七人の小坊主達:「事実」の重みを知れ

読んでいただければよくわかると思うが、件の雑誌の矛盾と問題点を、完膚なきまでに論破。石濱先生、さすがというか、容赦ない(笑)。お見事です。

でも、その一方で、あれだけ内容に矛盾と問題点を抱えてる雑誌を、「写真きれーい」「カッコイイー」「チベット行きたーい」と、うすっぺらく賞賛してる人も世の中にはいるわけで。そういう人は、何が矛盾してるのか、何が問題なのかということがまず理解できていない。日本人のチベット問題に対する認知度というのは、未だその程度の浅いものなのだろう。

先入観に惑わされず、今、何が起こっているのか、事実を知り、それを伝える。自分も書籍というメディアに携わる身として、あらためて肝に銘じねばと思う。

今日もまた一人、チベット人が焼身抗議を図ったという報せが届いた。状況は、何一つ好転していない。どこかの誰かに「演歌にも似た哀愁が絵空事に感じる」と言われようと、僕は、チベットの人々の側につく。

会場の下見

来週から来月上旬にかけて、立て続けにラダック関連のトークイベントに出る。なので今日は、その会場の下見をしてくることにした。下見したからといって何がどうなるわけでもないけど、一度見ておくと、イメトレもしやすいし。

まずは、来月7日にイベントをやる、ゲートシティ大崎のパタゴニア大崎店へ。そしらぬ顔をしつつ(苦笑)、店内の構造をチェック。あそこにスライド投影用のロールスクリーンがあって、商品棚を移動して椅子を並べたら‥‥と、脳内シミュレートしてみる。‥‥やばい。でかい。びっしり人が座ったら、えらいことになりそうだ‥‥(汗)。とりあえず気を取り直して、ウールのセーターを購入。

大崎から恵比寿に移動し、ヴェルデのカウンター席で深煎りコーヒーを飲んで休憩。それから、来週木曜にイベントをやる代官山蔦屋書店へ。ここは何度か訪れたことがあるけど、実際に会場となるスペースをあらためて確認。旅行書コンシェルジュの森本さんにもご挨拶して、当日の段取りを軽く打ち合わせ。うまくやり遂げられるといいのだが。

‥‥下見したら、かえって緊張してきた(苦笑)。とにもかくにも、がんばります。

鶴の群れ

キャンプ・デナリに滞在していた時、一人のガイドと親しくなった。彼の名はフリッツ。スイス人である彼は、二十年前にこの地にやってきて、ガイドとして働くようになった。家族は、国立公園の入口でB&Bを経営している。とても気さくな人で、日本人で一人だけストレニアス・グループでのトレッキングに参加していた僕に、「いいぞ、タカ! どんどん歩け! ゴーゴー!」と声をかけて焚き付けたりしていた。

ある日、「ポトラッチ」キャビンでの夕食の時、向かいの席にいたフリッツが僕に訊いた。

「タカ、君は何の仕事をしているんだ?」
「写真を撮ったり、文章を書いたりして、それを本にする仕事をしてるんだよ」
「そうか、フォトグラファーか。僕も一人、日本のフォトグラファーを知ってる。ミチオだ。ミチオは素晴らしいフォトグラファーだった。デナリで撮影していた時、彼はよくこのキャンプ・デナリに遊びに来ていたんだよ」

その時、クァ、クァ、という鳴き声が、遠くから幾重にも重なり合うようにして聴こえてきた。何だろう? みんな席を立って、「ポトラッチ」の外に出る。灰色の空の彼方から、隊列を組んだ鳥のシルエットが近づいてくる。鶴だ。それも、十羽や二十羽どころではない。次から次へと隊列が集まってきて、キャンプ・デナリの真上で渦を巻くように、どんどん大きな群れになっていく。数百羽? いや、千羽以上はいたのではないだろうか。

「サンドヒル・クレーンだ。南の山脈が悪天候で越えられなくて、ねぐらを探してここに集まってきたんだろう。こんな大きな群れを見たのは、二十年ぶりだ‥‥」フリッツが呟いた。

ミチオ‥‥星野道夫さんも、原野で一人でキャンプを張っていた時、こんな鶴の群れを、じっと見上げたりしていたのだろうか。千羽を超える鶴たちは、クァ、クァ、と寂しげに鳴き交わしながら、やがて、北の稜線の彼方に消えた。

代官山蔦屋書店「トラベルコーヒートーク」出演のお知らせ

10月25日(木)午前10時から、代官山蔦屋書店の旅行書コーナーで開催される茶話会「トラベルコーヒートーク」第10弾に、ゲスト出演させていただくことになりました。少人数の集まりならではのフレンドリーな雰囲気で、ラダックのお話をざっくばらんにできればと思っています。

◎トラベルコーヒートーク第10弾 インドの中の小さなチベット~ラダックについて~

▼日時:10月25日(木)午前10時〜11時
▼場所:代官山蔦屋書店 2号館1階カフェスペース(地図
▼定員:約20名 ※席のご予約が必要となります
▼参加費:参加費は無料ですが、店内スターバックスにてドリンクを購入してご参加ください。
▼席のご予約方法:下記のいずれかの方法にてお申し込みいただけます。
・電話(03-3770-2525、営業時間:朝7時〜深夜2時)
・店頭(代官山蔦屋書店3号館1階レジカウンター)まで
「10月25日トラベルコーヒートークの席予約について」とお問い合わせくださいませ。
・Twitterにて「10月25日トラベルコーヒートーク参加します」と@DT_travelまでリプライをお送りください。
Facebookトラベルコーヒートークイベントページにて参加ボタンを押してください。
※定員を超えてしまった場合、立ち見になることをご了承ください。

チベット問題と日本のメディア

昨日の朝、自宅の郵便受けに、購読していないはずの毎日新聞が入っていた。勧誘のために投函されたものらしい。何気なく広げてみると、なんと一面に、ダライ・ラマ法王とロブサン・センゲ首相のツーショット写真が載っているではないか。一面だけでなく、四面にも全面記事が載っている。担当はニューデリー支局の杉尾直哉記者。1960年代から現在に至るまでのチベット解放運動と、センゲ首相を中心としたチベットのこれからについてのルポルタージュ。精力的な取材に基づくフェアな視点で書かれた、読み応えのある記事だった。

中国が最も恐れる男 チベットの若き指導者

この記事、Webへの掲載予定はないらしい。よりによってこの日の新聞がうちに投函されてたというのは、我ながら、ツイてる(笑)。

こういう力の入った記事に比べると、最近巷で物議を醸している「TRANSIT」のチベット特集号は、偏った先入観による取材で作られた、底の浅い雑誌だと思えてしまう。もちろん、すべての記事がダメというわけではない。だが、本土でチベット人の尼僧の少女にダライ・ラマ法王のアクセサリーをプレゼントしたことを編集長自らが記事に書き、その尼僧の写真まででかでかと載せてしまう思慮のなさには、さすがに呆れた。この写真を基に当局がその尼僧を逮捕・投獄する可能性は十分すぎるくらいあるのだ。なにせ、日本で大人気の旅雑誌なのだから。

「チベット」を本気でメディアで取り上げるには、相応の準備と覚悟がいる。上っ面のイメージだけでやっつけたこの雑誌で、チベットが再び取り上げられることは、たぶんもうないだろうな。この特集号に関わったチベット関係の識者の大半を怒らせてしまったみたいだから。