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100人中、何人?

僕は基本的にアマノジャクなので、世の中で100人中100人が「いい!」と言ってるものには、怪しんで近寄ろうとしないところがある。百万部のベストセラーの本とか、大ヒット街道爆進中の映画とか、ヘビロテされまくりの歌とか、長い行列のできるパンケーキ屋とか。それは感覚的にひねくれてるところがあるからだろうな、と自覚している。

文章なり写真なりで本を作る側の立場からすると、ビジネスの視点だけで考えれば、100人中100人が「いい!」と喜んで買ってくれるような本づくりを目指すべきなのかもしれない。でも、そうしたアプローチはほぼ間違いなく、うまくいかない。何を伝えたいのかがぼやけて、結局、面白くも何ともないものになってしまう。少なくとも、ひねくれ者の僕は、そういう本を面白いとは思わない。

少なくとも本づくりに関しては、作り手自身が面白いと思えるものをぶれずに目指すのが一番いいと思う。それが、100人中1人にしか届かなかったとしても、その1人の心をほんの少しでも動かすことができたなら、その本には、この世界に存在すべき価値がある。

記憶と言葉

昨日は池袋に出かけて打ち合わせ。夏に発売される予定のムック本に、ザンスカールのチャダルについての写真と文章を寄稿することになった。考えてみると、ラダックやザンスカールについての写真と文章を媒体で発表するのは、結構ひさしぶりだ。ここ最近はスピティが多かったし。

で、昨日今日で写真をセレクトし、レイアウトラフを作り、原稿を書きはじめてみたのだが‥‥いやあ、書けるね。いくらでも書ける(笑)。ずいぶん前の出来事だけど、自分の中で圧倒的に鮮烈に焼きついている記憶があるから、それを必要に応じて言葉に置き換えていけばいい。「ラダックの風息」を作った時も、この時期のことを書くのは本当に愉しかった。

やっぱり、書かれるべき出来事には、しぜんと記憶と言葉が宿っていくのだと思う。

丑三つ時の妄想

新しいアイデアというのは、ふとしたはずみで出てくるものだが、僕の場合、どうもそのタイミングが丑三つ時に集中している。

そろそろ寝るかとパソコンを閉じ、歯を磨いて、布団をめくって中に潜り込み、スヤァ‥‥となりかけたとたん、文字通り、ぽん、と音を立てるようにしてアイデアが浮かんでくるのだ。それは、本や雑誌記事のテーマだったり、タイトルやキャッチコピーの具体的な文言だったり、その時々によっていろいろなのだが。

薄れゆく意識の中で浮かんできたこのアイデア、翌朝もまあ覚えてるだろうとそのまま寝入ってしまうと、僕はまず間違いなく忘れてしまう(苦笑)。なので、睡魔に抗うようにしてむくりと起き上がり、暗闇の中を居間のデスクまで歩いていって、ブロックメモにそのアイデアを殴り書き。それで安心して寝床に戻る。

で、翌朝、あらためてそのメモを見返してみると、なんでこんなのが珠玉のアイデアに思えたんだろう、という場合がほとんど(苦笑)。でも、昨日の丑三つ時に思いついたアイデアは、今朝になって見返しても、そんなに悪くない。うまく形にできるといいな。こんな風にして僕は本を作っている。

アブー・ロード

少し前に、夏に着るためのTシャツを買った。こんな感じのやつ

もともと僕は、こういう世の中ちょっとナメてる絵柄のTシャツやスウェットが好きで、実際何着かそういう服を持っている。このTシャツも、ひと目見てすぐ気に入って買ってしまった。だって、アブー・ロードだし。

しかし実際に着ようとすると、たとえば打ち合わせとかに着て行ったら「やる気ないなー、こいつ」と思われること必定だし、明日出演するトークイベントの本番でこれ着てたら、どんな真面目な話をしても説得力がない。何言ってもアブー・ロードだし(苦笑)。意外と出番が限られる。

でも僕は、やる気のないTシャツが好きなのだ。「まあ、ヤマタカだから、アブー・ロードでも仕方ないか」みたいな感じで(苦笑)、何とかじわじわ浸透させていこう。

再起動

急な打ち合わせが入り、夕方、赤坂へ。3時間近くみっちり話し合いをして、目下最大の懸案事項が、ようやく動き出した。

思い返せば、3月中旬からGW前半まで、平日はほぼすべて取材で埋まり、休みの日もひたすら原稿書きに追われるというきつい日々だったのだが、GWが明けてからは、嘘のようにぱったりと無風状態になった。前々から仕込まれている仕事はいくつもあったのだが、そのどれもが揃って一時停止に陥って、いきなりヒマになってしまったのだ。こういう激しい波があるから、フリーランスはつらい。

まあでも、そんな無風状態も終わり。今日打ち合わせた案件以外にも、いろいろ動き出しそうだし。ようやく再起動がかかった今、夏から秋に向けて、がんばらねば。