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五年、そして今思うこと

午前中、市ヶ谷で取材。終わった後、午後は荻窪の雷鳥社へ。新刊「ラダックの風息[新装版]」の見本誌をチェックして、自分用に数冊受け取る。ようやくこの瞬間が来た。本を作る時、この瞬間は毎回感無量だけど、この本は、準備段階から費やした時間も労力も、注ぎ込んだ思いも桁違いだから、その分、喜びもひとしおだ。いい本に仕上がったと思う。

五年前の3月11日、あの震災が起こって、あまりにも非現実的で理不尽にも思える惨事が報じられ続けた日々。お金を寄付してみたりもしたけれど、本当の意味で何をすべきなのかと考えた僕は、「自分が世の中に対してできることを精一杯やる」という選択に行き着いた。僕の場合、それは本を作ることだった。その年の夏、僕は取材費用を自腹で立て替えてラダックに飛び、「ラダック ザンスカール トラベルガイド」を作るための取材に取り組んだ。

それから五年の間に、僕は「撮り・旅!」を含めて、自分の企画の本を3冊作ったことになる。編集者としては多いとは言えない。まして、その3冊が世の中で何かの役に立つともあまり思えない。存在しなければしないで、誰も何も気にしない程度の本でしかないのかもしれない。

でも、今の世の中で、みんながそれぞれの場所で自分にできることに精一杯取り組めば、たとえ一つひとつはささやかなものでしかなくても、何かが少しずつ良い方向に向くのでは、とも思うのだ。そうして精一杯生きることが、五年前に理不尽な形で立ち去っていかざるを得なかった人々に対しての敬意のようなものなのかもしれない、と僕は思う。

忘れないこと。ささやかでも、精一杯生きること。これからも続けていければと思う。

燃え尽きる前のやつ

今日は何日かぶりに、丸一日、家にいられる。たまりにたまってる原稿も書き進められる。そう思っていたら、甘かった。

朝からものすごい数の、メール、メール、またメール。東京から、地方から、海外から。取引先、取材先、それから……ほんと、5分10分刻みで次から次に届いて、しかもどれも結構急を要するので、息つくヒマもない。夜の8時くらいまで、メールの返信以外、何もできなかった。たぶんメールは数千字分書いてると思うが、原稿は1文字も書けず。

仕方ないとあきらめるわけにいかないので、シャワーを浴びて缶コーヒーをあおった後、原稿に取りかかる。ヘトヘトに疲れてるはずだが、思いのほかはかどる。これはいったい……あれか、ロウソクが燃え尽きる前にボウッとゆらめくやつか。何か一言で言い表せたらいいのに。

最低限のノルマ分を書き終えた後、前頭葉がジンジンして、もう無理、と思った。最近、ほんとに毎日こてんぱんだな。

遠路はるばる

朝起きたら、下唇にヘルペスができていた。僕の場合、これが出てくると、相当疲れてるという状態だ。

午前中に家を出て、横浜方面へ。電車で横浜まで行き、そこからバスに乗り換え、降りてから歩く。片道2時間くらいかかった。冷たい雨が降る中、どうにか待ち合わせ時間に間に合ったが、肝心の相手の方が、事情で40分くらい遅れて到着。それからみっちり取材し、終わった後、再びバスと電車を乗り継いで帰路につく。家に着いたのは、すっかり日が暮れた頃だった。

我ながら、割に合わない商売だなと思う。移動時間と取材時間と、それから執筆にかかる時間によっては、ファストフードやコンビニでバイトした方が全然割がいいくらいだし。ライティングのスキルなんざ、あってもまるでプラスにならない。

それでもこの因果な商売を続けている。ため息をつきながら、キーボードを叩き続けている。

寝て、食べる

昨日の夜は、10時間以上寝た。とにかく疲れてて、眠くて、身体が睡眠を要求している感じだった。

午後、渋谷方面に取材へ。空気がぬるんでて、濡れた綿のように、じっとり湿気を含んでいる。近所の木蓮はもう満開で、盛りを過ぎつつある。あと数日でぼたぼたと散ってしまうだろう。ということは、桜が咲きはじめるのは来週末くらいか。

今日の取材は割とスムーズに進められて、首尾よく終えることができた。渋谷から吉祥寺まで戻り、ハモニカ横丁にあるものすごく小さなカレー屋さんで、エビとチキンの2色カレーを大盛りで。ガツガツ食らって、おなかいっぱいになった。

しっかり寝て、しっかり食べて、また明日からの戦いに備えねば。こんなところで、へこたれるわけにはいかない。

傘がない

ぬるい雨が、朝から降り続いている。今日は鷹の台へ。午前から夕方までかけて、合計3件の大学案件取材。

午前中に1件終えた後、おひるごはんに、この駅に来るといつも行く洋食屋さんに行って、ドミグラスソースたっぷりのハンバーグ定食を食べたのが、唯一の息抜きだったか。あとはひたすら、取材、待機、また取材。相手の方の専門も話の内容もまちまちで、それによってこちらからのアプローチも変えなければならなかったので、ほとほと疲れた。

夕方、どうにかすべて終わって帰ろうと思ったら、傘立てに置いてあったはずの僕のビニール傘がなくなっていた。学生なのか誰なのか知らないが、明らかに来客が傘を固めて置いてある場所から、僕のだけ抜いていくとは。取材バッグの中に小さい折り畳み傘がたまたま入ってて、助かったけど。

こんな日は、ビール飲んで、さっさと寝ちまうに限る。