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目指せツアコン

来月上旬、資格取得のための講習と試験を受けることになった。目的は、「総合旅程管理主任者」という資格の取得。要するに、ツアーコンダクターである。

ガイドと違うのは、ツアコンは飛行機やホテルのチェックイン、食事や宿泊など、旅程に関わる要素を管理する仕事という点だ。僕自身はそうした添乗業務をメインで担っているわけではないのだが、それでもこの資格を取る必要に迫られている理由は……インド(やっぱり)。インドのビジネスビザをスムーズに取得するためには、この「総合旅程管理主任者」の資格が必要になってしまったのだ。

インドへの渡航回数の多さや滞在期間の長さ、微妙な場所にもちょこちょこ行くことを考えると、ここらで、今後長きにわたってスムーズかつ磐石にビジネスビザを取得し続けられる体制にしておきたい。そのための布石である。

講習は3日間。1日の講習の最後にはその履修範囲の試験がある。……落ちたらどうしよう(汗)。がんばらねば。

振れ戻った針

昨日深夜にバンコクを発ち、今朝、東京に戻ってきた。

毎年この時期に約4週間、取材でタイを回るのも、今年で4回目。これだけ回数を重ねてくると、どこの街も何度か訪れているので、少しは土地勘がついてくる。取材先を効率良く回る道順や、真っ当な宿や安い食堂がある場所も。それでも、乾季の入口の時期とはいえ、あのぎらぎらした陽射しと肌にまとわりつく湿気の中を、毎日歩いたり自転車をこいだりして街を回るのは、体力的にも気力的にも、かなりきつかった。歩き回るうちに汗すら出なくなった首筋や手足の肌には、ざらざらと塩の結晶が噴き出してくる。日に三度、英語の看板もないような簡素な食堂や屋台でありつくタイ料理と、夜、宿の部屋で飲むチャーンビールの500ml缶が、気持の支えだった。

ただ、今になってふと思うのは、8月から9月にかけて旅した南東アラスカの旅で、あまりにも自分の予想を上回って振り切れてしまっていた針が、汗と塩と埃にまみれてタイを旅して回っているうちに、少し振れ戻ってきたような気がする、ということだ。忘れたわけではないけれど、アラスカとは何もかも違いすぎる世界を旅したことで、自分の中での受け止め方に少し余裕が生じたというか。このあたり、うまく言えないのだが。

とりあえず、ぎらつく陽射しと湿気から解放されて、身体がほっとしているのは間違いない。少し身体を休めて、またがんばります。いろいろ。

再び旅へ

旅に出る前の日は、まずベッドシーツ類と残りの洗濯物を洗って、近所のコインランドリーで乾燥機にかけ、完全に乾かす。押入れやクローゼットの除湿剤を交換する。撮影機材を防湿庫から出し、パッキングリストを見ながら、すべての荷物を確認しつつバッグに詰めていく。いろいろ終わってひと息ついたら、夕方からはたいてい、リトスタに行って最後の晩餐。

というわけで、明日から4週間のタイ取材。今年で4年目だが、期間中は休みは一日もなく、どんなにカンカン照りでも、どんなにどしゃ降りでも、取材に撮影にと歩き回らなければならない。ハードな日々の始まりである。

帰国は10月29日(土)の予定です。では。

アイデアは無料ではない

今年の初め頃、人づてに、とあるWeb制作会社からライティングの仕事の依頼を受けた。ある航空会社が運営するサイト内で、全国各地の観光スポットを季節やテーマに応じて紹介していくコンテンツで、スポットの選定と写真素材の提供交渉(予算がないというので観光局などから無料で貸してもらうように交渉する)、そしてスポット紹介のテキストやリードコピーの執筆が僕に依頼された仕事だった。二回目からは季節に合わせたテーマ案とスポット候補の提案から参画させられた。

しかし、二回目のコンテンツが完成した後、三回目の制作は、他のWeb制作会社とのコンペになった(僕は知る由もないが、先方に航空会社のご機嫌を損ねる何事かがあったらしい)。僕は当初そのコンペにはいっさい関与していなかったが、インドから帰国した直後あたりに、先方の社内で配置換えさせられたばかりの女性プロデューサーから「こちらで提案した企画が差し戻されて、再提出の期限が迫っています。何かいいアイデアはありませんか?」という泣きのメールが送られてきた。そもそもコンペのこと自体、僕は詳細をまったく聞かされていなかったし、だったらなぜ最初から僕を企画会議に参加させなかったのかと訝ったが、前に継続案件になることを想定して温めていたテーマ案とスポット候補のリストをメールで送った。

それから一カ月間、そのWeb制作会社からはまったく何の連絡も届かなかった。三回目の制作のスケジュールを考えれば、とっくに時間切れだ。で、アラスカから戻ってきた後に、件の女性プロデューサーにメールで問い合わせると「ついさきほどクライアントから連絡があったのですが……」と(そんな遅すぎる上に同日というタイミングで連絡が来ることはありえないので、もちろん言い逃れのための嘘だ)彼らがコンペに負けたことを知らされた。その結果は僕には別にどうでもいい。だが、こちらから提供したテーマ案とスポット候補の企画の処遇について聞くと、それに対するコンペフィーは払えないという。その件で別の男性ディレクターが送ってきたメールには「そこに費用が発生するなどとは我々は想像もしていませんでした」と、しれっと書かれていた。

こういう場合にアイデアを出してほしいと依頼する時、コンペに負けたらコンペフィーが払えない事情があるなら、あらかじめそう伝えた上で「それでもよければご協力いただけませんでしょうか?」と頭を下げて依頼すべきだ。僕が依頼する側なら必ずそうするし、それが常識だと思う。アイデアは無料ではない。なぜなら、それは人が知恵と労力を費やしてゼロから生み出したものだからだ。でも、最近の世の中には、人の頭の中にあるアイデアはタダで拝借できると勘違いしている輩が多いようだ。個人だけでなく、企業のレベルでも。あきれてものが言えない。

件のWeb制作会社とは、完全に縁を切った。ああいうしょうもない会社がどういう運命を辿るのかは、自ずとわかる。

現世にて

午後、原宿で取材。竹沢うるまさんへのインタビュー。今回も面白いお話を聞くことができた。写真家としての意思の強さとしなやかさ。素晴らしいなあと思う。

終わった後、代々木八幡までてくてく歩いて、かくたみほさんの写真展。フィンランドの沈まない真夜中の太陽。光が本当に綺麗。その一方で、逆に極夜ってどんななんだろう、と興味を持っている自分もいる。

夕方まで時間をつぶし、関さんと合流して、モンベル渋谷店さんの担当者さんにイベントの件でご挨拶。今回もいいイベントにしなければ、と思う。

帰国早々、ばたばたした一日だった。渋谷の喧騒の中に巻き込まれて、現世に戻ってきたのかな……いや、まだ何かを置き去りにしたままだな。まだ、そんな風に感じている。