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本にできること

昼、渋谷で打ち合わせ。ネパール料理屋でダルバートをいただきながらのランチミーティング。

「僕、大学生の時に、ヤマモトさんの本を読んでたんですよ。登戸の本屋さんに並んでたのを見つけて、普通に買って読ませていただいてました」と言われ、びっくりするやら、恐縮するやら。それと同時に、もうそんなに歳月が過ぎたのか、とも思う。「ラダックの風息」の初版を出してから、気がつくと7年の歳月が過ぎていた。

僕の知らないところで、誰かの家の本棚に、どこかの図書館の片隅に、僕の作った本がある。誰かの人生に、本当にほんのちょっとだけかもしれないけど、何かを残す。そうなっていたとしたら、とても嬉しいことだ。それは、本だからこそ、できることなのだとも思う。

「旅の本を作るという仕事」について、来年の早い時期に、人前で話をさせていただくことになりそう。本決まりになったら、よろしくお願いします。

旅の日々と日常の日々

今年もまあ、それなりにいろんな場所に旅をした。沖縄、ブータン、ラダック、アラスカ、タイ。さっき電卓で計算してみたら、旅に出ていた日数は合計で80日。2カ月半ちょいといったところか。夏から秋にかけては行ったり来たりのくりかえしだったので、日数以上にせわしなかった印象はあるけれど。

まだ完全に確定してはいないのだが、来年は、インドにたぶん丸2カ月。毎年恒例となってきたタイにも約4週間、行くことになると思う。この時点ですでに今年より不在期間が多いという(苦笑)。それ以外にも、短期ではあるけど、個人的な取材ではアラスカとか、仕事の取材としても1、2カ所、別の場所に行くかもしれない。先が思いやられる展開である。

旅の日々と、日常の日々。僕はどちらの時間も好きだ。カメラを手に、たった一人で異国の空気に身を浸している時間も好きだし、東京の自分の部屋でコーヒーを飲んだり、気のおけない人たちと酒を酌み交わしたりする時間も好きだ。ただ、旅に出れば、どこかで何かしら、自分から人に伝える価値のあることをインプットさせてもらえる。ある意味それが今の自分の仕事というか、役割になっている。だから僕は旅に出るのかなとも思う。

自分が旅というものを仕事の主戦場にするようになるなんて、10年前には想像すらしていなかった。コストパフォーマンスを考えると、あまり賢い選択だったとは思えないけど(苦笑)、とりあえず、力が尽き果ててどうにもならなくなるまでは、やり続けてみようと思っている。

試写室で

昼、東銀座にある松竹本社の試写室へ。写真家の石川梵さんが作ったドキュメンタリー映画「世界でいちばん美しい村」の試写を拝見する。

2015年にネパールを襲った大震災で壊滅的な打撃を受けた山間部の村、ラプラック。その村の人々を、足掛け1年以上の歳月を費やして撮影された映像には、悲しみと、美しさと、微笑と、目には見えない何かの力がみなぎっているように感じられた。撮影が進むにつれ、撮り手である石川さんの気持が村の人たちに近づいていくのが、映像を見ていてもわかる。感情移入とかではないのだけれど、目の前の人や風景に、そっと寄り添うような。だから、映画を観る人の気持も、しぜんとそこに近づいていく。

自分も一人の書き手として、そして撮り手として、読者にそう感じてもらえるような本を作りたい。まだまだだけど。良い勉強になった。

孤独の意味

「誰もいない原野の真っ只中で、たった一人でいることが、嬉しくて、嬉しくて、仕方なかった」

20年以上前、ある人が、ある人と、ある人について話した言葉。当時、それを耳にした僕は、その意味がまったく理解できなかった。でも、今はたぶん、ほんの少しだけ、その真の意味が理解できるような気がしている。

危険をかえりみずに冒険をしたことを後で人に自慢しようとか、そんな薄っぺらい気持では断じてない。他の人間と関わるのが嫌で一人になりたかったというのとも違う。たった一人で、誰もいない原野にいる。でも、つらくはないし、寂しくもない。完全な孤独の中に身を置くからこそ、理解できる感覚。世界のすべての存在の中で、自分はそのほんの一部分に過ぎないということ。

あの感覚を、人に説明するのは、とても難しい。

研修修了

総合旅程管理研修、最終日の3日目。昨日までは旅行業法や約款、国内添乗実務(バスツアーとか)についての講習だったが、今日は海外添乗実務と英語。昨日までよりは(実体験に基づく)知識のある分野だったので、個人的には3日間の中で一番やりやすかった。

夕方に講習が終わった後、最後の試験にも無事合格。まあ、今日受講した人は全員合格するくらいユルい難易度の試験なのだが(笑)。これで万一落っこちたら赤っ恥だぞ、と逆に変なプレッシャーがかかったほどだった。基本的に、3日間居眠りせずに講習を受けていれば、普通に合格できると思う。

ともあれ、これにて総合旅程管理研修を無事修了し、総合旅程管理主任者、つまり国内外のツアーで主任添乗員になるための資格を得ることができた。添乗員とガイドの仕事は別物なので、資格がなくてもラダックでガイドを務めるのに不都合はないのだが、より万全な体制で(インドビザも含めて)取り組めるようになったとは思う。なので、来年から、新たな気持ちでがんばります。