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長生きする本を

午前中に打ち合わせを一件こなした後、八丁堀の出版社へ。用事のついでに、印刷所から届いたばかりの「ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]」の見本誌を受け取る。印刷の具合、なかなかいい感じ。今夜はこれから、パタゴニアのロングルートエールとワイルドピンクサーモンで一杯やろうと思う。自分で書いた本の、届きたての見本誌を眺めながら飲む酒ほど、この世で旨い酒はない(笑)。

僕はなぜ、本を作る仕事が好きなのだろう、と以前考えてみたことがある。それはたぶん、きちんと丁寧に作った本は、僕よりもちょっとだけ長生きしてくれるから。僕という人間はどうあがいても、あと2、30年後にはこの世からいなくなる。でもおそらく、僕の作った本たちは、どこかの家の本棚や、図書館の片隅や、あるいは誰かの記憶の中で、僕よりも少しだけ生き延びてくれる。今回作った本も、何十年も経ってしまえばさすがにガイドブックとしての機能は果たせなくなるだろうけど、それでも一冊の本として、長い時を経ても読むに耐えるものを作ったつもりだ。

まあ、そうはいっても本もしょせん印刷された紙の束でしかないから、いつかは朽ちて土に還るだろう。宇宙的なスケールで考えれば、一人の人間がその人生を通じて世界に残せる痕跡なんて、取るに足らない芥子粒みたいなものでしかない。それでもやっぱり、僕は本を作るのが好きだ。自分の作った一冊の本が、誰かの心をほんのちょっと動かしたり、誰かの背中をほんのちょっと押したりすることを、願っている。今までも、これからも。

遠出を終えて

一昨日と昨日は、1泊2日で長野に出張。上田市と長野市で、取材を計3件こなしてきた。

2日間ともいい天気だったのだが、まあ、明らかに寒かった(苦笑)。朝夕の気温は氷点下前後で、冷たい風がぴりぴりと頰を刺した。それでも地元の人たちは思いのほか薄着で、ちょっとびっくりした。ひよわな東京暮らしの僕とは、普段からの鍛えられ方が違うのかもしれない。

今回は、地元のうまい食事に首尾よくありつくことができた。初日の夜は戸隠そばの店で天ざるを食べて、2日目の昼はソースカツ丼。長野駅のすぐ近くに取った宿の朝ごはんもおいしかった。駅ビルのおみやげ屋の品揃えも充実していたし。

来年あたり、また依頼があったら取材に来るのも悪くないかもなー、とのん気に思っていたところ、この春のうちにまた取材で長野に行かされるかも、という情報が。まじっすか。さすがにそれは、しんどいなあ……(苦笑)。

忙殺の季節

新しい本の編集作業はほぼ終わったけれど、それと入れ替わるようにして、大学案件の繁忙期が始まりつつある。

二月も取材がちょこちょこ入ってはいたのだが、三月は、来週の一泊二日の長野出張(汗)を皮切りに、再来週は栃木へ日帰り。都内での取材もみっしり入ってきそうだ。毎年恒例のこととはいえ、しんどい季節である。

今年は本の発売に合わせて複数のイベントや展示が立て続けにあるし(まあそれは自分で決めたことだけど)、Web連載の記事の書き溜め作業もあるし、ラオス取材の成果もまとめなければならない。去年よりは確実に、体力的に厳しくなりそう。何とか乗り切らなければ……。

……とりあえず、来週、長野に行ったら、何かうまいもの食べて、憂さ晴らししてこよう(笑)。

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イザベラ・バードの「日本奥地紀行」読了。初めのうちは「ずいぶんあけすけな物言いのおばさんだなあ」みたいな印象だったのだが、読み進めるうちにだんだん面白くなってきて、特に北海道に上陸してアイヌの村を訪れた時の描写にはぐいぐい引き込まれた。今から140年前に日本でこういう旅をした外国人女性がいたというのは、すごいことだと思う。同時に、ほんの140年前まで、日本はこんなありさまだったのか……と、理屈ではわかっていても結構衝撃的だった。おすすめの一冊。

近づく幕切れ

週末から今日にかけては、ほぼずっと、今作っている本の色校をチェックしていた。印刷会社さんが頑張ってくれたおかげで、現時点でも色の出方は、かなりいい。本紙で刷る時もこの調子で出せれば、初版よりずっとレベルアップした仕上がりになると思う。見本誌を手に取るのが今から楽しみだ。

……と同時に、ちょっと寂しくもある(苦笑)。本を作っている間は、やっぱり、とても楽しいから。自分の頭の中で思い描いているもの、伝えたいこと、それらをあらんかぎりの工夫を凝らして、紙の束の中に封じ込めていく作業。作っている間、自分の手の内には、無限に思えるほどの可能性の選択肢があるような気さえしてくる。

でも、まあ、幕切れは必ずやってくる。本ができあがった時、自分の選択が正しかったか、それとも単なる独りよがりだったか、答えはおのずとわかるはず。これだけ何冊も作ってきていても、いまだに自信は持てないけれど。

まあいいや。幕切れの時間まで、本づくりを精一杯、楽しもう。

食うべき時に食わないと

午前中、本の色校一式が届く。午後は昨日取材した分の原稿を書き、夜から再校の赤字と色校の突き合わせ。夜中までかかって、とりあえず一通り目を通し終える。あと何回かは見直さなければならないけど。

二月は本当に忙しかった。現在進行中の新刊の編集作業はもちろん、大学案件の取材、来月のイベントや展示の準備、その他いろいろ……。確定申告の準備とかまで。何より、二月は、28日間しかない(苦笑)。実際、この短さのせいで、かなり追い込まれてしまっている。そしてたぶん、三月はさらに忙しくなる……。

こういう時の僕の悪い癖は、食事にまったく気が回らなくなることだ。うっかりすると、昼も夜もラーメンとか。人間、食うべき時にがっつり食っておかないと、力が出なくなるし、肝心な時に風邪とかひいてしまう。なので、今日はごはん鍋で米を炊き、豚バラ肉と根菜でカレーを作った。

熱くて辛くてうまいものを、はふはふ言いながら、たっぷり食べる。何だか、ふーっと、落ち着いた。普通に生き物なんだな、俺。