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書いて、書いて、書きまくる

二十代の初め、出版の世界に飛び込んだばかりの頃の出来事。

ある雑誌の編集部で一緒に編集アシスタントのバイトをしていた女の子に、僕はある日、自分が書いた文章が周囲になかなか認めてもらえないと愚痴っていた。すると彼女はこんな風に、思いっきり大きな声で僕を怒鳴りつけた。

「‥‥あんた、何様のつもり? あんたなんて、まだ、ほんのちょっとしか文章書いてないじゃん! 誰かに認めてもらいたいなら、もっと書いて、書いて、書きまくってから、偉そうなこと言いなさいよ!」

あの日、彼女に言われた言葉は、今もよく憶えている。当時の僕には「自分にはいい文章が書ける」という根拠のない思い込みがあるだけで、経験に裏打ちされた自信も、それに対する周囲の信頼も、何もなかった。気が向いた時だけ好きなことを書いたりしている程度では、人の心はそう簡単には動かせないし、ましてやお金などもらえるはずがない。もちろん、数だけこなせばいいというわけでもない。一語々々にきちんと気持を込めながら、コツコツと、書いて、書いて、書きまくる。才能も何も持っていなかった僕は、そこから積み重ねていくしかなかった。

別にこれは、文章の書き手に限らず、何かを表現することで人の心を動かそうとしている人たちすべてに共通することではないかと思う。文章は、書かなければ読んでもらえない。写真は、撮らなければ見てもらえない。絵は描かなければ見てもらえないし、歌は歌わなければ聴いてもらえない。表現することをやめてしまったら、誰にも、何も伝わらない。自称ナントカという無意味な肩書が残るだけ。周囲に認めてもらえないと思い悩む前に、まずはとことんやり抜いてみること。そうしたがむしゃらな経験を通じて、自分に足りなかったものに、あらためて気づくこともあるのではないかと思う。

‥‥こんなことを書いていると、「そういうあんただって、まだその程度の文章しか書けてないじゃん!」とどやされそうな気がする(苦笑)。これからも、書いて、書いて、書きまくることにしよう。

肉を喰らう

昨日の夜は、吉祥寺の李朝園に焼肉を食べに行った。

李朝園を訪れたのは、かれこれ約一年ぶり。以前は、本を一冊書き上げるたびに自分的な打ち上げをしにこの店にやってきていたが、今年出した「広告マーケティング力」と「人が集まるブログの始め方」は、どちらも僕が日本を留守にしている間に発売されたので、打ち上げの機会を逸していたのだ。だから今回は、二冊分の打ち上げをまとめてやらかしてやろうと、裂帛の気合を込め、カンカンに熾った炭火の上で繰り広げられる戦場に臨んだ。

タン塩、レバー、カルビ、コブクロ、上ミノ、ギアラ、特上リブロース‥‥。金網の上でジュージューと肉汁があふれ出すのを、たれに浸して、ぱくっと頬張り、ビールをごきゅっ。牛肉ってうまいなあ、としみじみ思う。特に今回は、内臓系の部位をたくさん注文したせいか、身体がぽかぽかと温まって、指の先まで栄養が行き渡っていくような感じ。夏のラダックでぜい肉が削げ落ちた身体に、肉も脂も、もれなく吸収されていった。この調子なら、すぐに体重も元に戻りそうだ。

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先週、知人のデザイナーさんに依頼したラダック写真展のポストカードフライヤーが、もう刷り上がって、宅配便で届いた。渋くてなかなかいい仕上がり。今回はグラフィックという印刷会社に発注したのだが、他と比べても安いし、早いし、クオリティもいいしで、かなりおすすめ。

心意気

午後、外苑前で知人のデザイナーさんと打ち合わせ。来月中旬から開催するラダックのチャリティ写真展のために、ポストカードフライヤーを作ることにしたのだ。何のビジネスにも繋がらない仕事なのに、快く引き受けてくださったデザイナーさんの心意気に感謝。縁というのは、ありがたいものだなあと思う。

夕方、四ッ谷で途中下車して、ひさびさに洋食エリーゼに行く。オムライスかそれ以外のメニューにするか、さんざん迷ったあげく、ポークソテー定食を注文。豚肉は分厚いのに柔らかくて、脂身までちゃんとおいしい。それにかかっているデミグラスソースも、お皿をなめたくなるほどの味。やはりこの店は、都内最強の洋食屋さんだ。

夜、家に帰ってくると、数時間前に打ち合わせしたばかりのデザイナーさんから、もうポストカードフライヤーのレイアウトデザインがメールで届いていた。早っ! 本当に感謝。このポストカードフライヤー、来週のナマステインディアや再来週のグローバルフェスタに出展するNGOジュレーラダックのブースで配れると思うので、お楽しみに。

人に会う

雨が降るたびに、めっきり涼しくなっていく。夏ももう終わりだ。

昼、渋谷でラダック生まれのチベット人の友人と会い、チョグラムサルにある彼の実家から預かってきた荷物を渡す。彼は来週、槍ヶ岳を登りに行くのだという。僕も誘ってもらったが、その頃はいろいろバタバタしていそうだったので断念。たまには日本の山も歩いてみたいのだが。

午後、渋谷から原宿まで歩いて、とある編集の仕事の打ち合わせ。この案件、まだラダックにいる頃にメールで打診があったのだが、作業が本格化するのはもう少し先になりそう。先方の事務所は人手が足りなくてかなり忙しそうだったので、来月あたりに別の地方取材の案件をお手伝いすることになった。

夜は、鎌倉在住の文化人類学者の友人と、新宿の陶玄房で飲み会。さんまの天ぷらがうまい。この友人にも、ラダックから預かってきた荷物があったので、それを渡す。ラダックの人々とある程度関わると、こうして運び屋にさせられることが常態化するのだった(笑)。

それにしても、今日はたくさんの人に会った。何だか新鮮(笑)。